(天皇の地位及び象徴)
第一条 天皇は、日本国及び日本国民統合の象徴として、国民の文化的及び精神的連続性を体現し、政治的中立を保持する。
2 天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づき、これを永続的に承継する。
3 天皇の身位は、国民の敬愛のもとに、歴史及び伝統に根ざして尊重される。
原稿から機械抽出した私案の条文です。表・別表・書式は含みません。正本は原稿ファイルです。
(天皇の地位及び象徴)
第一条 天皇は、日本国及び日本国民統合の象徴として、国民の文化的及び精神的連続性を体現し、政治的中立を保持する。
2 天皇の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づき、これを永続的に承継する。
3 天皇の身位は、国民の敬愛のもとに、歴史及び伝統に根ざして尊重される。
(日本国憲法との関係)
第二条 天皇は、この法律の定める国事に関する行為を行い、国政に関する権能を有しない。
2 天皇の行う文化的又は精神的行為は、政治的意思の表明とみなされない。
3 天皇の行為のうち、宗教的又は伝統的儀式に係るものは、国民の文化的継承としてこれを尊重する。
(用語の定義)
第三条 この法律において使用する用語の意義は、次に掲げるところによる。
一 「国事行為」とは、憲法及びこの法律の定めに基づき、内閣の助言と承認を得て天皇が行う行為をいう。
二 「公的行為」とは、国民統合の象徴としての地位に基づき、国民の福祉、文化又は国際親善のために行う行為をいう。
三 「私的行為」とは、天皇個人又は皇族としての私生活に関する行為をいう。
四 「儀式」とは、国家又は皇室の伝統に基づき、宗教的又は文化的意義を有する行為をいう。
(皇位の地位)
第四条 皇位は、日本国における国家的公職であって、天皇の地位を世襲により承継するものとする。
2 皇位は、皇統に属する者が、これを継承する。
3 皇位の継承に関する事項は、憲法及びこの法律の定めるところによる。
(国会の関与及び法律の留保)
第五条 皇室に関する制度は、この法律の定めるところのほか、国会の議決に基づく法律により定める。
2 皇室の地位及び活動に関する基本的事項は、国民の代表機関たる国会の関与を経るものとする。
3 皇室の内部の儀礼、祭祀その他の私的事項は、法律の留保を要しないものとする。ただし、公費の支出を伴うときは、この限りでない。
4 皇室に関する予算その他の財政措置は、憲法第八十八条の定めるところにより、国会の議決を経てこれを行う。
(皇室会議の位置付け)
第六条 皇室会議は、天皇、皇位継承、摂政、皇族及び皇室経済に関する重要事項を審議し、これに関し意見を述べ、又は議決を行う合議機関とする。
2 皇室会議は、国民の代表たる国会議員及び国務大臣を構成員に含めるほか、最高裁判所長官が指名する裁判官及び学識経験者を加えて組織する。
3 皇室会議の議決は、公開を原則とし、国民に対する説明責任を果たすため、議事概要を公示するものとする。
4 皇室会議の運営に関する事項は、政令で定める。
(皇位の継承)
第七条 皇位は、日本国における国家的公職として、皇統に属する者がこれを継承する。
2 皇位の継承は、国会の議決したこの法律の定めるところによる。
3 皇位の継承は、性別により差別されることがない。
4 皇位の継承は、歴史及び伝統を尊重しつつ、国民統合の象徴としての地位を維持することを旨とする。
(継承資格)
第八条 皇位を継承する資格を有する者は、皇統に属し、日本国籍を有する者とする。
2 前項の者のうち、成年に達した者をもって皇位の継承者とする。ただし、皇室会議の議により特に必要があると認めるときは、この限りでない。
3 前二項の規定にかかわらず、皇統に属しない者であっても、皇族に養子又は配偶者として入り、皇室会議の議により承認されたときは、皇位を継承する資格を得ることができる。
4 皇位継承に関し必要な事項は、皇室会議の議により定める。
(継承順位)
第九条 皇位の継承順位は、直系の親族関係を基本とし、これを長幼の順に定める。
2 前項に掲げる者がないとき、又は皇位継承に著しい支障があるときは、皇室会議の議により、他の皇統に属する者の中から皇位継承者を定めることができる。
3 皇位の継承順位は、皇室会議の議により適時に確認し、これを公示するものとする。
4 皇嗣は、皇位継承者のうち、最も順位の高い者をいう。
(皇嗣)
第十条 皇嗣は、皇位継承資格を有する者のうち、その順位が第一位にある者をいう。
2 皇嗣は、即位準備に関する行事を主宰し、天皇の公務の一部を補佐することができる。
3 皇嗣の称号及び地位に関する事項は、皇室会議の議を経て、これを定める。
4 皇嗣の称号は、男女の別によらず「皇嗣殿下」と称する。
(皇統譜)
第十一条 皇統譜は、皇族の系統及び身分に関する事項を記載した国家的公文書とする。
2 皇統譜は、宮内庁長官がこれを管理し、その写しを内閣に備える。
3 皇統譜の一部は、国民の知る権利に資するため、公示することができる。
4 皇統譜の作成及び保存は、電子的記録媒体を用いることができる。
(方針決定及び公示)
第十二条 皇位の継承及び即位に関する方針は、皇室会議の議を経て決定し、内閣の承認を得てこれを公示する。
2 前項の公示は、官報及び宮内庁公報に掲載するほか、国民に広く周知される方法により行う。
3 皇位継承又は即位に関する記録は、これを永久に保存する。
(即位の礼等の儀式)
第十三条 天皇の即位に際して行う儀式は、国事行為として行うもの及び文化的儀礼として行うものに区分する。
2 国事行為としての即位の礼は、国民及び国際社会に対し、天皇の地位を明らかにするため、公開を原則として行う。
3 文化的儀礼は、国民の伝統及び信仰の自由を尊重し、皇室の独立経費によりこれを行う。
4 儀式の実施に関する細目は、内閣と皇室会議の協議により定める。
(成年及び摂位の要件)
第十四条 皇位の継承者は、十八歳に達したときに成年に達する。
2 天皇が成年に達しないとき、又は心身の故障その他の理由により、その職務を行うことができないときは、摂政を置く。
3 前項の事由が一時的であるときは、摂政を置かず、皇嗣が国事行為を臨時に代行することができる。
4 摂政を置くか否かの判定は、医師及び法曹を含む専門委員の意見を聴き、皇室会議の議により決定する。
(継承の停止)
第十五条 皇位継承資格を有する者について、次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、皇室会議の議により、その継承を一時停止することができる。
一 心身の故障その他の理由により、象徴としての職務を遂行することが著しく困難であるとき。
二 皇室の威信を著しく損なう行為をしたとき。
三 国民の信頼を著しく失ったとき。
四 その他、皇室の秩序を維持するため特に必要があるとき。
2 前項の停止は、期間を定めて行うものとし、その期間を延長又は短縮するには、再び皇室会議の議を経なければならない。
3 停止の決定及び解除は、官報に公示する。
(継承資格の喪失)
第十六条 次の各号のいずれかに該当するときは、皇位継承の資格を失う。
一 日本国籍を喪失したとき。
二 皇籍を離脱したとき。
三 刑事事件により禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わらないとき。
四 皇室の名誉を著しく汚す行為をし、皇室会議の議によりその資格を失うことが決定されたとき。
五 本人の申し出により、皇位継承の資格を辞退し、皇室会議の承認を得たとき。
2 前項の規定による資格喪失は、官報及び宮内庁公報に公示する。
3 皇位継承資格を喪失した者は、再びこれを回復することができない。ただし、皇室会議の議により特に必要があると認めるときは、この限りでない。
(皇位継承に伴う称号等)
第十七条 皇位の継承に伴い、前天皇は「上皇」と称し、その配偶者は「上皇后」と称する。
2 皇嗣の配偶者は「皇嗣妃」と称し、皇嗣と同等の敬称を用いる。
3 皇族の称号及び敬称は、皇室会議の議を経てこれを定める。
4 称号及び敬称の使用は、国際儀礼における慣行を尊重するものとする。
(妃及び皇族の地位)
第十八条 皇族は、婚姻により皇族の身分を離れるものとする。ただし、皇室会議の議により、当該者の意思を尊重して皇族の身分を保持することができる。
2 前項の規定は、皇族の性別を問わず適用する。
3 皇族の配偶者は、皇室会議の議を経て皇族の地位を得ることができる。
4 皇族の身分を有する者は、その地位を利用して営利活動又は政治活動を行ってはならない。
(天皇の成年・摂政要否の判定)
第十九条 天皇が成年に達したときは、摂政を置かない。
2 天皇の心身の状態により、その職務遂行が困難であると認められるときは、皇室会議は、専門医及び法律専門家の意見を聴いて、摂政を置くか否かを決定する。
3 前項の決定に基づき、摂政を置いたときは、その事由が消滅したときに、皇室会議の議によりこれを廃する。
4 摂政設置及び廃止の決定は、官報及び宮内庁公報に公示する。
(皇室会議の関与)
第二十条 次に掲げる事項は、皇室会議の議を経なければならない。
一 皇位継承順位の変更又は確認。
二 退位及び譲位に関する決定。
三 摂政の設置又は廃止。
四 皇族の婚姻、離脱又は地位の承認。
五 皇室経済に関する重要事項。
六 前各号に準ずる皇室の組織及び構成に関する重要事項。
2 皇室会議の議決は、出席構成員の三分の二以上の多数によるものとする。
3 皇室会議は、前項の議決に際しては、必要に応じて専門家又は国会議員の意見を聴くことができる。
(国務大臣の副署)
第二十一条 天皇の行う国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を要し、当該国務大臣がこれに副署しなければ、その効力を生じない。
2 前項の副署は、当該行為に関する助言及び承認の責任を示すものであり、内閣はこれについて国会に対し連帯して責任を負う。
3 副署を行った国務大臣の氏名、所属官庁及び日付は、官報に公示しなければならない。
4 副署の記録は、内閣府及び宮内庁において永久に保存する。
(その他の手続)
第二十二条 皇位の継承、即位、退位その他皇室の重要事項に関する手続は、この法律及び政令の定めるところによる。
2 前項の政令は、法律の趣旨に反して新たな義務を課し、又は権限を拡大してはならない。
3 皇位継承及び即位に関する記録、書類及び映像その他の資料は、宮内庁が整理し、内閣総理大臣を経由して国立公文書館に移管する。
4 前項の記録のうち、歴史的・学術的価値を有するものは、国民の閲覧に供することができる。
(摂政の設置)
第二十三条 天皇が次の各号のいずれかに該当するときは、皇室会議の議を経て摂政を置く。
一 成年に達しないとき。
二 心身の故障その他の事由により、その職務を行うことができないとき。
三 一時的に在位しながら長期間国外に滞在するとき。
2 前項の決定に基づき、内閣総理大臣は政令をもって摂政を任命する。
3 摂政設置の効力は、政令の公布の日から生ずる。
(摂政就任の要件)
第二十四条 摂政は、皇位継承資格を有する成年の皇族のうちから、皇室会議の議により定める。
2 前項の規定にかかわらず、特に必要があるときは、皇嗣以外の皇族又は前上皇を摂政とすることができる。
3 摂政に就任した者は、就任の日からその職務に専念し、他の公的職務を兼ねることができない。
(摂政の権限)
第二十五条 摂政は、天皇の名において次の各号に掲げる行為を行う。
一 憲法第七条に定める国事に関する行為。
二 皇室儀式その他の象徴としての公的行為。
三 皇室財産及び経済に関する管理上の行為で、政令で定めるもの。
2 摂政の行為には、当該国務大臣の副署を要する。
3 摂政は、自己の判断により政治的意見を表明し、又は政策に関与してはならない。
(摂政の代行し得ない行為)
第二十六条 摂政は、次の各号に掲げる行為を代行することができない。
一 憲法の改正の公布。
二 国会の召集又は衆議院の解散に関する行為。
三 恩赦の認証。
四 天皇の退位又は譲位の決定。
五 皇位継承順位の変更に関する決定。
六 その他、政令で定める天皇固有の行為。
(摂政の任命及び報告)
第二十七条 摂政の任命は、皇室会議の議を経て内閣総理大臣が政令をもって行い、その旨を国会に報告しなければならない。
2 摂政の任命及び退任は、官報及び宮内庁公報に掲載して公示する。
3 内閣は、摂政の職務の執行状況について、少なくとも年一回、国会に報告するものとする。
(摂政の退任)
第二十八条 摂政は、次の各号のいずれかに該当するときは退任する。
一 天皇の成年又は職務遂行能力の回復が確認されたとき。
二 摂政自身が辞任を申し出て、皇室会議の承認を得たとき。
三 摂政が死亡したとき。
2 退任の効力は、皇室会議の決定及び内閣の承認を経て、政令の公布の日から生ずる。
(補助機関)
第二十九条 摂政の職務を補助するため、宮内庁に摂政補佐官及び事務局を置く。
2 摂政補佐官は、内閣総理大臣の同意を得て宮内庁長官が任命する。
3 摂政補佐官は、摂政の行為に関し助言し、又は文書の作成、記録の保存その他必要な事務を行う。
(記録及び公示)
第三十条 摂政が行った行為については、その内容、日付及び副署した国務大臣の氏名を記録し、宮内庁がこれを保存する。
2 前項の記録のうち、国民の知る権利に資するものは、皇室会議の議を経て公示することができる。
3 摂政の職務に関する記録は、国立公文書館に移管し、歴史資料として永久に保存する。
(皇族の地位と人権)
第三十一条 皇族は、国民としての基本的人権を有する。
2 ただし、その地位及び公務の性質に照らし、政治的中立及び象徴としての品位を保持するために必要な限度で、法律又は皇室会議の議により、その権利の行使を制限することができる。
3 制限は、明確な理由及び期間を定めて行わなければならない。
(婚姻の自由)
第三十二条 皇族の婚姻は、憲法第二十四条の趣旨に従い、当事者の自由な意思に基づき行う。
2 婚姻をした皇族は、本人の意思により皇族の身分を保持し、又は離脱することができる。
3 皇室会議は、皇族の婚姻に関し、象徴としての品位保持の観点から意見を述べることができるが、これを拒否する権限を有しない。
(皇籍離脱)
第三十三条 皇族は、本人の自由な意思により皇籍を離脱することができる。
2 皇室会議は、離脱の意思が真意に基づくかを確認し、承認しなければならない。
3 天災、疾病その他やむを得ない事由により皇族としての公務遂行が著しく困難な場合には、本人の意思を尊重しつつ、皇室会議の議により離脱を決定することができる。
4 皇籍を離脱した者は、国民としての身分を有し、憲法及び法律の下に平等とする。
(養子の禁止及び例外)
第三十四条 皇族は、皇位継承を目的とする養子縁組をすることができない。
2 ただし、家庭上の事情その他やむを得ない事由があるときは、皇室会議の承認を得て養子をすることができる。
(成年)
第三十五条 皇族の成年は、十八歳に達したときとする。
(称号及び敬称)
第三十六条 皇族の称号及び敬称は、皇室会議の議を経てこれを定める。
2 称号及び敬称は、男女の別によらず統一的に用いるものとする。
(皇族の行為の制限)
第三十七条 皇族は、政治的行為及び政党その他政治団体への参加をしてはならない。
2 皇族は、営利を目的とする事業に従事してはならない。ただし、文化・学術・福祉その他公益を目的とする活動は、この限りでない。
3 皇族が行う発言及び表現は、象徴としての中立を損なわない範囲で保障される。
(皇族費の総則)
第三十八条 皇族の生活及び公務の遂行に要する経費は、皇族費として国庫から支出する。
2 皇族費の額及び配分は、国会の議決に基づき内閣が定める。
3 皇族費の支出状況は、毎年度公表しなければならない。
(儀礼及び服制)
第三十九条 皇族の儀礼及び服制は、文化的伝統に基づき、政教分離の原則に反しない範囲で定める。
(公務の分担)
第四十条 皇族は、天皇の公務を補助し、文化・福祉・国際親善その他国民生活の向上に寄与する公的活動を分担して行う。
2 公務の範囲及び分担は、皇室会議の議を経て、宮内庁が調整する。
(記録及び公示)
第四十一条 皇族の公務及び儀礼に関する記録は、宮内庁が整理し、国民の知る権利に資する範囲で公示する。
(雑則)
第四十二条 皇族に関し、この章に定めるもののほか必要な事項は、政令で定める。
(設置)
第四十三条 皇室会議は、天皇及び皇族に関する重要事項を審議し、法律の定めるところにより議決するために、憲法及びこの法律に基づき設置する。
2 皇室会議は、独立してその職権を行う。
(組織)
第四十四条 皇室会議は、次に掲げる者をもって組織する。
一 衆議院議長及び参議院議長
二 内閣総理大臣及び最高裁判所長官
三 衆議院及び参議院の議員各一名
四 宮内庁長官
五 天皇の指定する皇族二名
六 学識経験者二名(男女各一名)
2 会議の構成は、性別及び世代の均衡を考慮してこれを定める。
(議長及び議事)
第四十五条 皇室会議の議長は、衆議院議長及び参議院議長のうちから交互に選出する。
2 議長は、会議を代表し、その議事を整理する。
(付議事項)
第四十六条 皇室会議に付議すべき事項は、次のとおりとする。
一 皇位の継承及び継承順位の決定
二 皇族の婚姻及び離脱
三 摂政の設置及び退任
四 皇室経済及び財産に関する重要事項
五 皇室に関する儀式の区分及び経費区分
六 その他法律に定める事項
(定足数及び議決)
第四十七条 皇室会議は、総員の三分の二以上の出席をもって開会し、出席者の過半数で議決する。
2 皇位の継承、退位、皇籍離脱その他重要事項については、出席者の三分の二以上の多数で議決しなければならない。
(関係者の出席)
第四十八条 会議は、必要があるときは、関係する皇族、国務大臣、又は宮内庁職員を出席させ、意見を聴取することができる。
(記録及び公示)
第四十九条 皇室会議の議事録は、機密に属する部分を除き、公示しなければならない。
2 議事録及び関連文書は、国立公文書館に移管して永久保存する。
(守秘義務)
第五十条 皇室会議の構成員及び出席者は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
2 退任後も、同様とする。
(運営細目の委任)
第五十一条 皇室会議の運営に関する細目は、議長が会議の議を経てこれを定める。
(雑則)
第五十二条 皇室会議に関し、この章に定めるもののほか必要な事項は、政令で定める。
(臨時代行の指定)
第五十三条 天皇が一時に国事行為を行うことができない場合に備え、あらかじめ臨時に国事行為を代行する者を、政令で指定することができる。
2 前項の政令に基づき、天皇が臨時代行者を指定することができる。
3 臨時代行者の指定が行われていないときは、内閣がこれを指定する。
(臨時代行の発動要件)
第五十四条 臨時代行は、次の各号に掲げる場合に発動する。
一 疾病、事故その他の事由により、短期間に国事行為を行うことが困難なとき。
二 国外滞在、通信途絶その他の事由により、意思表示が著しく遅延するおそれがあるとき。
三 天皇が臨時に代行を要すると認め、内閣にその旨を申し出たとき。
2 内閣は、前項各号の事由が生じたときは、直ちに臨時代行を発動する旨を閣議決定し、国会に報告しなければならない。
(臨時代行の範囲)
第五十五条 臨時代行者は、憲法に定める国事行為のうち、形式的又は儀礼的性質を有する行為を代行することができる。
2 臨時代行者は、憲法又は法律により天皇の専属行為とされる事項については、これを代行することができない。
(臨時代行の終了)
第五十六条 臨時代行は、天皇が再び国事行為を行うことができるに至ったとき、又は代行の目的が終了したときは、直ちにその効力を失う。
2 内閣は、臨時代行の終了を確認したときは、これを公示しなければならない。
(副署及び助言・承認)
第五十七条 臨時代行者が行う国事行為には、内閣の助言及び承認を要し、これに対し内閣が責任を負う。
2 臨時代行者の署名は、天皇の名において行い、その文書には内閣総理大臣その他国務大臣の副署を要する。
(重複・競合の調整)
第五十八条 摂政が置かれているときは、臨時代行はこれを行うことができない。
2 皇位継承手続中に臨時代行が発動されたときは、その完了後直ちに停止する。
3 同一事案について複数の代行指定が競合する場合には、内閣が調整する。
(記録及び公示)
第五十九条 臨時代行に関する決定、発動、終了その他の事項は、官報により公示する。
2 その記録は、宮内庁及び内閣において保存し、後日公表するものとする。
(政令への委任)
第六十条 この章に定めるもののほか、臨時代行の発動手続、文書形式その他必要な事項は、政令で定める。
(皇室経済の原則)
第六十一条 皇室の経済は、憲法第八十八条の定めるところにより、国庫の負担においてこれを維持する。
2 皇室の経済に関する支出は、国会の議決を経て、予算に計上しなければならない。
3 皇室は、予算執行において自主性を尊重されるものとする。
(内廷費)
第六十二条 天皇及び皇后の生活並びに象徴としての公的活動に要する経費は、内廷費として国庫から支出する。
2 内廷費の額は、毎年度予算で定める。
3 内廷費の支出に関する明細は、国民の知る権利を損なわない範囲で公表する。
(宮廷費)
第六十三条 儀式、行事その他国事行為に伴う経費及び皇居その他宮廷施設の維持に要する経費は、宮廷費として国庫から支出する。
2 宮廷費に係る支出は、政教分離の原則に反しないよう、文化的行事及び宗教的儀式を区分して予算に計上する。
(皇族費)
第六十四条 皇族の生活及び公務の遂行に要する経費は、皇族費として国庫から支出する。
2 皇族費の額は、皇族の人数及び職務の性質を考慮して、法律で定める基準により算定する。
3 皇族費の支出及び執行状況は、毎年度公表しなければならない。
(予算及び決算)
第六十五条 皇室に関する歳入歳出は、一般会計に計上し、国会の議決を経なければならない。
2 皇室に関する決算は、会計検査院の検査を受ける。
(会計及び出納)
第六十六条 皇室の会計及び出納は、内閣が管理し、宮内庁が執行する。
2 宮内庁は、会計年度ごとに出納報告書を作成し、会計検査院に提出しなければならない。
(皇室用財産)
第六十七条 皇室の用に供する財産は、皇室用財産とし、国有財産に属する。
2 皇室用財産は、皇室の公務及び儀式のために使用するものとする。
(皇室財産の管理)
第六十八条 皇室用財産の管理は、内閣の監督の下に、宮内庁が行う。
2 宮内庁は、毎年度、皇室財産目録を作成し、内閣に提出する。
(皇室財産の処分の制限)
第六十九条 皇室用財産は、法律に定める場合を除いて、譲渡、交換、貸付、又は担保に供してはならない。
2 やむを得ない事由により処分を必要とするときは、内閣の承認を得てこれを行う。
(寄附及び贈与)
第七十条 皇室は、国又は公共の利益のために寄附又は贈与を行うことができる。
2 皇室が受ける寄附又は贈与は、内閣の承認を要する。
(国庫との関係)
第七十一条 皇室の財政に関する会計は、国庫会計と区分して整理する。ただし、国会の監督を受ける。
(財産目録の作成・公示)
第七十二条 宮内庁は、皇室財産の状況を記載した財産目録を毎年度作成し、内閣を経由して公示しなければならない。
(監査及び報告)
第七十三条 皇室経済に関する会計は、会計検査院の監査を受けるほか、国会の議決により設置される独立監査委員会の検査を受けることができる。
2 監査の結果は、内閣を通じて国会に報告し、公表しなければならない。
(従業者及び職員の位置付け)
第七十四条 皇室に奉仕する従業者及び職員は、国家公務員法の定めるところにより、特別職国家公務員とする。
2 その服務及び身分に関しては、政令で定める。
(政令への委任)
第七十五条 この章に定めるもののほか、皇室経済の会計、出納及び監査に関し必要な事項は、政令で定める。
(雑則)
第七十六条 この章に関し、必要な準則その他の技術的細目は、宮内庁が制定する規則で定める。
(退位の原則)
第七十七条 天皇は、心身の衰えその他の事由により、国事行為を行うことが著しく困難となったときは、皇室会議の議により、退位することができる。
2 退位は、天皇の自由な意思を尊重して行うものとする。
(退位の決定)
第七十八条 退位の決定は、皇室会議の議を経て、国会の承認を得て行う。
2 国会の承認は、両議院の議決をもってこれに代えることができる。
(退位の手続)
第七十九条 退位の手続は、次の順序による。
一 天皇の退位の意思の表明
二 皇室会議の審議及び議決
三 国会の承認
四 内閣の閣議決定及び退位日指定
五 退位の礼及びその公示
(上皇の地位)
第八十条 退位した天皇は、上皇と称し、国の安寧及び国民の幸福を祈念することを本分とする。
2 上皇は、政治的行為を行うことができず、国事行為を代行することはできない。
3 上皇及び上皇后の身分、待遇及び経費は、別に法律で定める。
(上皇の待遇及び経費)
第八十一条 上皇及び上皇后の生活並びにその活動に要する経費は、上皇費として国庫から支出する。
2 上皇費の額及び内容は、国会の議決に基づき定める。
(皇嗣の地位)
第八十二条 天皇が退位したときは、皇嗣が直ちに皇位を継承する。
2 皇嗣は、即位の日から天皇の地位を有するものとする。
(儀式等)
第八十三条 退位及び即位に関する儀式は、国の儀式として行う。
2 前項の儀式に宗教的要素を含む場合には、文化的伝統に基づく行為として取り扱うものとする。
3 儀式の経費は、政教分離の原則に反しない範囲で、国庫から支出する。
(記録及び公示)
第八十四条 退位及び即位に関するすべての行為は、記録し、官報により公示しなければならない。
2 当該記録は、国立公文書館において永久に保存する。
(経過措置)
第八十五条 この章の規定による退位又は即位に関し、必要な経過措置は、政令で定める。
(設置)
第八十六条 宮内庁は、内閣の外局として置かれ、天皇及び皇室に関する事務をつかさどる。
2 宮内庁は、この法律及び内閣府設置法の定めるところにより、その職務を行う。
(所掌事務)
第八十七条 宮内庁は、次に掲げる事務を所掌する。
一 天皇及び皇族の公務及び儀式に関する事務
二 皇室財産及び皇室経済に関する事務
三 皇位継承及び退位等に関する記録、文書及び公示に関する事務
四 国際儀礼及び国際親善に関する事務
五 皇室に関する文化、歴史及び資料の保存、調査及び公開に関する事務
六 その他この法律又は政令により所掌させる事務
(組織)
第八十八条 宮内庁に、長官官房及び必要な部局を置く。
2 部局の設置及び権限は、政令で定める。
(長官及び次長)
第八十九条 宮内庁に長官及び次長を置く。
2 長官は、内閣の助言と承認に基づき、天皇の名において任命される。
3 長官は、天皇及び皇族に関する事務を統括し、庁務を掌理する。
4 長官は、国務大臣に準ずる地位を有し、その職務の執行について内閣に責任を負う。
(内部部局)
第九十条 宮内庁に、式部職、書陵部、侍従職その他の必要な内部部局を置く。
2 各部局の所掌事務及び組織は、政令で定める。
(職員)
第九十一条 宮内庁の職員は、特別職国家公務員とする。
2 職員の服務、任用及び懲戒に関しては、国家公務員法の定めるところによる。
(儀式・典礼の支援)
第九十二条 宮内庁は、天皇及び皇族の行う儀式及び典礼のうち、国家儀式に属するものについて、その準備及び執行を支援する。
2 宗教的儀式に関しては、文化的伝統の範囲内において支援するにとどめる。
(国事行為に係る事務補助)
第九十三条 宮内庁は、天皇の国事行為に関し、内閣の指揮の下に文書作成その他必要な事務を補助する。
2 印璽及び国璽の保管並びに管理は、宮内庁の責任において行う。
(皇室財産の管理補助)
第九十四条 宮内庁は、皇室財産の管理及び出納に関し、内閣の監督の下にこれを補助する。
(文書・陵墓の管理)
第九十五条 宮内庁は、皇室に関する文書、記録及び陵墓その他の文化的施設を管理する。
2 前項の施設及び記録は、文化財として保存し、国民に公開することを原則とする。ただし、安全及び秩序の維持のため必要な制限を設けることができる。
(他機関との連携)
第九十六条 宮内庁は、外務省その他の行政機関と連携して、国際儀礼及び国際親善に関する事務を遂行する。
2 宮内庁は、必要があるときは、地方公共団体及び学術機関と協力して、皇室に関する文化・学術事業を実施することができる。
(規則の制定)
第九十七条 宮内庁は、この法律及び政令の定めるところにより、庁の事務に関し必要な規則を制定することができる。
(雑則)
第九十八条 この章に定めるもののほか、宮内庁の運営に関し必要な事項は、内閣府設置法その他の法令で定める。
(罰則等の基本方針)
第九十九条 この法律に定める義務に違反し、又は皇室の名誉を著しく損なう行為をした者に対しては、政令で定めるところにより、懲戒又は過料を科することができる。
2 刑事罰を科す場合は、別に法律で定める。
(準用)
第百条 この法律の規定の実施に関して必要な手続その他の事項については、他の法令に特別の定めがない限り、国家公務員法、行政手続法、公文書管理法その他の関係法令を準用する。
(委任)
第百一条 この法律に定めるもののほか、その施行に関し必要な事項は、政令で定める。
2 前項の政令は、この法律の趣旨に反して、国会の承認を要する事項又は皇室の本質に関する事項を定めてはならない。
(公示の方法)
第百二条 この法律に基づく公示は、官報のほか、内閣府及び宮内庁の公式電子媒体により行うことができる。
2 前項の電子公示は、映像、音声その他の媒体により行うことができる。
3 公示の記録は、適切な技術的手段により保存し、永久に保全しなければならない。
(解釈の統一)
第百三条 この法律の解釈に疑義が生じたときは、日本国憲法の趣旨に従い、内閣法制局及び最高裁判所の協議を経て、統一的な解釈を定めるものとする。
2 前項の解釈は、国会に報告し、官報に公示しなければならない。