(目的)
第一条 この法律は、すべての人が人としての尊厳を保持し、相互にその権利を尊重し合うことにより、差別のない自由かつ平等な社会の形成を図るとともに、将来世代を含むすべての人々が基本的人権を享有し得る社会の実現を目的とする。
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(目的)
第一条 この法律は、すべての人が人としての尊厳を保持し、相互にその権利を尊重し合うことにより、差別のない自由かつ平等な社会の形成を図るとともに、将来世代を含むすべての人々が基本的人権を享有し得る社会の実現を目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「人権」とは、日本国憲法その他の法令により保障される個人の尊厳、自由及び平等に関する権利をいう。
2 この法律において「差別」とは、性別、年齢、障害、民族、出身、信条、性的指向、性自認その他の属性を理由として、正当な理由なく個人又は集団を排除し、又は不利益な取扱いをすることをいう。
3 この法律において「合理的配慮」とは、個人の特性に応じて、過度の負担とならない範囲で社会的障壁を除去するために必要かつ適切な調整又は変更をいう。
(基本理念)
第三条 人権の尊重は、個人の尊厳を基礎とし、すべての人が相互にその権利を尊重し合い、差別又は排除のない共生社会を実現することを基本理念とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、人権の尊重を基本とする施策を策定し、これを総合的かつ計画的に推進するとともに、国際人権条約その他の国際的約束の履行に努めなければならない。
(人権施策推進機構)
第五条 国及び地方公共団体は、人権施策を総合的に推進するため、関係行政機関及び民間団体との連携を図り、必要に応じて人権施策推進会議その他の組織を設けることができる。
(差別の禁止)
第六条 すべての人は、性別、年齢、障害、疾病、出身、民族、信条、性的指向、性自認その他の事由により、差別的取扱いを受けない。
2 前項にいう差別には、直接差別、間接差別及びハラスメントを含むものとする。
3 国及び地方公共団体は、差別の防止及び被害の救済のために必要な措置を講じなければならない。
(合理的配慮の提供)
第七条 国及び地方公共団体、事業者及び教育機関は、障害その他の特性を有する者が他の者と平等に社会生活を営むことができるよう、過度の負担とならない範囲で合理的配慮を行わなければならない。
2 前項の規定による合理的配慮には、当該者の申出に基づく措置のほか、社会的障壁を除去するために必要な事前整備を含む。
(情報及び意思疎通の保障)
第八条 国及び地方公共団体は、障害の有無その他の事情にかかわらず、すべての人が情報を取得し、意思疎通を行うことができるよう、手話、点字、字幕、要約筆記、音声認識その他の手段の普及及び支援体制の整備を図らなければならない。
(ヘイトスピーチ及び差別的言動の禁止)
第九条 何人も、人種、民族、出身、国籍その他の属性を理由として、公然と他人に対し生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知し、又は著しく侮辱し、若しくは社会からの排除を扇動してはならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の行為の防止及び被害の回復のために、教育、啓発その他必要な施策を講じなければならない。
(部落差別の解消)
第十条 国及び地方公共団体は、社会的身分又は出身に基づく差別(いわゆる部落差別を含む。)の解消を推進するため、教育、啓発及び相談体制の整備その他の必要な施策を講じなければならない。
(性的指向及び性自認に関する理解の増進)
第十一条 すべての人は、性的指向及び性自認の多様性を尊重し、相互理解を深めるよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、性的指向及び性自認に関する教育、啓発及び相談支援体制を整備するものとする。
(基本理念)
第十二条 男女は、社会の対等な構成員として、あらゆる分野における活動に参画する機会を等しく保障され、性別による差別又は固定的な役割分担に基づく不利益取扱いを受けることなく、その能力を十分に発揮できる社会の形成を基本理念とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第十三条 国及び地方公共団体は、男女共同参画社会の形成を促進するため、基本的かつ総合的な施策を策定し、これを実施する責務を有する。
(施策の基本方針)
第十四条 国は、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的かつ総合的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 地方公共団体は、前項の基本計画を勘案して、地域の実情に応じた男女共同参画推進計画を定めるよう努めなければならない。
(政治分野における男女共同参画)
第十五条 国及び地方公共団体は、政治分野における男女共同参画を推進するため、候補者の男女均等を確保するための目標及び計画を定め、その実施状況を公表しなければならない。
2 政党その他の政治分野に関係する者は、前項の目標の趣旨にのっとり、候補者の男女均等を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、立候補の機会を保障し、あわせて多様な人材の政治参画を促進するため、立候補受理期間の設定に当たって、従来よりも十分な期間を確保するよう努めなければならない。
4 国及び地方公共団体は、前項の受理期間において、政治分野における男女共同参画に関する広報、教育及び啓発の活動を推進し、社会全体の理解を深めるよう努めなければならない。
5 公共職員が立候補しようとする場合において、当該職員が復職可能な範囲で休職又は勤務軽減の措置を講ずることができるよう、国及び地方公共団体は必要な配慮をしなければならない。
6 前各項に規定する「男女均等」とは、いずれか一方の性が著しく過少である状態を解消し、均衡した比率に至るまでの間において、現状の比率の逆転を一定期間許容するものをいう。
(雇用及び職場における平等の確保)
第十六条 事業主は、募集、採用、配置、昇進、教育訓練その他の雇用管理について、男女の均等待遇を図るよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、男女の雇用平等を確保するため、必要な助成、指導及び啓発を行うものとする。
(育児・介護と参画機会の両立支援)
第十七条 国及び地方公共団体は、男女が家庭生活における責任を分かち合い、育児、介護その他の家庭責務を担いながら社会のあらゆる分野に参画できるよう、就業環境の整備、保育・介護支援及び地域活動の支援等の施策を講じなければならない。
(目的)
第十八条 この編は、暴力、搾取及び人身取引から個人を保護し、その尊厳を回復するとともに、被害者が安全かつ自立した生活を営むことができるよう支援することを目的とする。
(定義)
第十九条 この編において「暴力」とは、身体的、心理的又は経済的な強制その他の行為をいう。
2 「搾取」とは、性的、労働的その他あらゆる形態において、人を支配し、又はその自由を奪って利用する行為をいう。
3 「人身取引」とは、搾取を目的として、暴力、脅迫、詐欺、権限の乱用その他の手段により人を募集し、輸送し、移送し、引渡し、又は収受する行為をいう。
(被害者の保護)
第二十条 国及び地方公共団体は、暴力又は搾取の被害者に対し、安全確保、居住支援、医療、心理的支援及び自立支援を行うとともに、関係機関との連携体制を整備しなければならない。
(民事保護命令)
第二十一条 暴力の被害者は、家庭裁判所に対し、加害者に対し接近の禁止、住居への侵入禁止、又はその他必要な保護命令の申立てをすることができる。
2 裁判所は、申立てが相当と認めるときは、被害者の安全を確保するため必要な命令を発することができる。
(被害者支援施設)
第二十二条 国及び地方公共団体は、暴力又は搾取の被害者を保護し、その居住及び自立を支援するため、被害者支援施設を設け、又はこれに準ずる民間施設の整備及び運営を支援しなければならない。
(教育及び啓発)
第二十三条 国及び地方公共団体は、暴力及び搾取の根絶を図るため、学校教育、職場教育及び地域活動を通じて教育及び啓発を推進し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。
(国際協力)
第二十四条 国は、人身取引及び搾取の根絶並びに被害者の保護のため、関係国際機関及び諸外国の政府その他の団体と連携し、情報交換、人材育成及び技術協力を推進しなければならない。
(目的)
第二十五条 この編は、先住民族その他の文化的多様性を有する人々が、固有の文化及び言語を保持し、発展させる権利を保障するとともに、これらの文化の尊重及び継承を通じて、多様な文化が共生する社会の形成を図ることを目的とする。
(定義)
第二十六条 この編において「先住民族」とは、その地域において歴史的に生活し、独自の言語、宗教及び文化を継承している民族又はその子孫をいう。
2 この編において「文化的権利」とは、個人又は集団がその文化的帰属、言語、芸術、生活様式その他の文化的表現を保持し、発展させる権利をいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第二十七条 国及び地方公共団体は、先住民族の権利及び文化的多様性を尊重し、その保存、振興及び普及に関し必要な施策を講じるとともに、文化的権利の保障及び教育・学術・国際交流の推進に努めなければならない。
(言語及び文化の継承)
第二十八条 国及び地方公共団体は、先住民族その他の文化的集団が有する言語、芸能、儀礼、生活文化、伝統的知識及び技術の継承を支援し、教育、観光、地域振興その他の施策においてその活用を図らなければならない。
(ユニバーサル社会の推進)
第二十九条 国及び地方公共団体は、年齢、障害、文化的背景その他の事情にかかわらず、すべての人が社会生活に参加しやすい環境を整備し、交通、建築物、情報通信及び公共施設のユニバーサルデザイン化を推進しなければならない。
(国際交流及び協力)
第三十条 国は、文化的多様性の保護及び促進のため、国際的な文化交流及び協力を推進し、他国の先住民族及び文化的集団との相互理解を深める施策を講じなければならない。
(目的)
第三十一条 この編は、すべての人が人権を尊重し合う社会を実現するため、人権教育及び人権啓発の推進に関する基本的事項を定め、人権尊重の理念の普及及び確立を図ることを目的とする。
(定義)
第三十二条 この編において「人権教育」とは、人権の尊重に関する理解を深め、その実現に向けて必要な知識及び態度を養うために行われる教育をいう。
2 この編において「人権啓発」とは、すべての人が人権の重要性を自覚し、相互に尊重し合う意識を高めるために行われる広報、講演、研修その他の活動をいう。
(基本理念)
第三十三条 人権教育及び人権啓発は、すべての人の人権が相互に尊重される社会の実現を目的とし、教育、家庭、職場及び地域社会が相互に連携して行われなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第三十四条 国及び地方公共団体は、人権教育及び人権啓発の推進に関し、基本計画の策定、関係機関の連携及び必要な施策を講じなければならない。
(学校教育及び社会教育との連携)
第三十五条 国及び地方公共団体は、学校教育及び社会教育の各分野において、人権教育を体系的に実施するため、教職員の研修、教材の開発及び教育課程の整備を推進するとともに、生涯学習としての人権教育の機会を確保しなければならない。
(事業者及び労働関係団体の責務)
第三十六条 事業者及び労働関係団体は、職場における人権尊重を推進するため、差別の防止、ハラスメントの根絶及び多様な人材の活躍を支援する教育・研修を行うよう努めなければならない。
(民間団体の役割)
第三十七条 民間団体、教育機関及び報道機関は、人権教育及び啓発に関し、国及び地方公共団体と協働し、その自主的かつ創意的な活動を推進するよう努めなければならない。
(広報及び情報発信)
第三十八条 国及び地方公共団体は、人権に関する正確かつ多様な情報の提供及び広報活動を行い、特にインターネットその他の情報通信媒体を通じて、偏見、差別及び誹謗中傷の防止に資する啓発を推進しなければならない。
(目的)
第三十九条 この編は、人権の侵害から迅速かつ公正に救済を図り、もって個人の尊厳の回復及び社会の正義の実現を目的とする。
(基本原則)
第四十条 人権救済は、被害者の意思を尊重し、その人格と名誉を保護し、秘密を保持するとともに、迅速かつ公平に行われなければならない。
(人権擁護委員)
第四十一条 市町村に人権擁護委員を置き、人権に関する相談、調査及びあっせんその他の業務を行わせる。
2 人権擁護委員は、人格高潔で人権擁護に理解と熱意を有する者のうちから、市町村長が推薦し、法務大臣が委嘱する。
3 国及び地方公共団体は、人権擁護委員の活動が円滑に行われるよう、必要な経費及び研修の支援を行わなければならない。
(人権救済手続)
第四十二条 人権の侵害を受けた者又はその代理人は、国又は地方公共団体の人権救済機関に対し、その救済を求める申立てをすることができる。
2 申立ては、書面又は電磁的方法により行うことができる。
3 人権救済機関は、申立てを受けたときは、必要な調査を行い、調停、勧告又は関係機関への通知等、適当な措置をとらなければならない。
(勧告及び公表)
第四十三条 人権救済機関は、調査の結果、人権侵害があると認めるときは、関係機関又は関係者に対し、改善その他必要な措置を求める勧告を行うことができる。
2 前項の勧告を受けた機関又は関係者は、勧告に基づく措置の結果を人権救済機関に報告しなければならない。
3 人権救済機関は、勧告の内容及び結果を公表することができる。ただし、個人のプライバシーを侵害するおそれがある場合は、この限りでない。
(国際人権条約の履行)
第四十四条 国は、国際人権条約及びその他の国際人権文書に基づく義務を誠実に履行し、国内の法令及び施策を通じてその実現を図るとともに、国際機関への報告及び勧告の履行状況を公表しなければならない。
(司法救済との関係)
第四十五条 この編の規定に基づく人権救済の申立て又は勧告は、司法上の救済を妨げず、また裁判所における手続の結果に拘束されない。
(目的)
第四十六条 この編は、特定の人権侵害又は社会的課題に対し、国及び地方公共団体が国際的連携及び国内的支援を通じて被害の回復及び再発防止を図り、もって人権保障の実効を確保することを目的とする。
(政府の責務)
第四十七条 国は、拉致その他の国家的規模の人権侵害に対し、真相解明及び被害者の救出、帰国又は再統合を最優先の課題として取り組まなければならない。
(被害者及び家族への支援)
第四十八条 国は、拉致その他の国家的被害の被害者及びその家族に対し、生活、教育、医療及び就労に関する支援その他社会復帰に必要な措置を講じなければならない。
(調査及び国際協力)
第四十九条 国は、拉致その他の国際的な人権侵害に関し、関係国及び国際機関と連携して調査、情報交換及び被害者保護に関する国際協力を行わなければならない。
(支援の基本理念)
第五十条 国及び地方公共団体は、孤立又は困難な状況にある者が、その尊厳を保ち、自立した生活を営むことができるよう、生活支援、相談支援及び就労支援等の施策を総合的に推進しなければならない。
(地域支援体制の整備)
第五十一条 地方公共団体は、地域における孤立又は困難な状況にある者の支援の拠点を整備し、行政機関、社会福祉法人及び民間団体との連携体制を構築しなければならない。
(支援員及び相談員)
第五十二条 国及び地方公共団体は、孤立又は困難な状況にある者に対する支援を適切に行うため、支援員又は相談員を配置し、福祉、法務、医療及び教育その他関係分野との連携の下に専門的な相談及び支援を行わなければならない。
(国際連携)
第五十三条 国は、国際的な人権課題の解決に資するため、関係国、国際機関及び非政府組織との連携を強化し、人道支援、開発協力及び難民保護に関する施策を推進しなければならない。
(国際協力人材の育成)
第五十四条 国は、人権分野における国際協力及び人道支援の推進に必要な人材の育成を図るため、大学、研究機関及び国際機関と連携し、教育、研修及び派遣の制度を整備しなければならない。
(国際報告及び情報公開)
第五十五条 国は、国際人権条約に基づき国際機関に提出した報告及びその勧告の履行状況を定期的に公表し、国民の理解及び国際社会の信頼を深めるよう努めなければならない。
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
2 政府は、前項の施行までの間に、この法律の施行に必要な政令及び関係省令を整備しなければならない。
(経過措置)
第二条 この法律の施行の際、現に効力を有する次に掲げる法律(以下「旧法」という。)に基づく委員、審議会、又は指定法人は、施行日以降、当該法に対応する本法の規定に基づく機関又は法人とみなす。
一 人権擁護委員法(昭和二十四年法律第百三十九号)
二 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十七号)
三 男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)
四 男女共同参画機構法(平成十四年法律第百五号)
五 障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)
六 障害者差別解消法(平成二十五年法律第六十五号)
七 手話言語法(平成二十八年法律第百九号)
八 ヘイトスピーチ解消法(平成二十八年法律第六十八号)
九 部落差別解消推進法(平成二十八年法律第百九号)
十 SOGI理解増進法(令和五年法律第八十一号)
十一 DV防止法(平成十三年法律第三十一号)
十二 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)のうち被害者保護に関する規定
十三 困難女性支援法(令和四年法律第百四号)
十四 アイヌ施策推進法(平成三十一年法律第十六号)
十五 拉致問題対処法(平成十四年法律第百九十六号)
2 旧法に基づき発する命令、規則又は告示は、この法律において対応する部分に抵触しない限り、なおその効力を有する。
3 本法の施行前に旧法の規定により行われた処分、命令、認定その他の行為は、本法の相当規定により行われたものとみなす。
4 旧法に基づく施策の実施中にある事業又は交付金については、本法施行後も当分の間、経過措置として引き続き実施することができる。
(関係法令の整理)
第三条 政府は、この法律の施行に伴い、関係法令中の「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」「男女共同参画社会基本法」「障害者基本法」等の引用を本法の題名及び条項に改めるものとする。
(人権政策推進会議の設置)
第四条 政府は、この法律の施行に際し、内閣に「人権政策推進会議」(以下「会議」という。)を設置し、本法の実施及び関係施策の総合調整を行わせる。
2 会議は、内閣総理大臣を議長とし、関係閣僚、学識経験者及び人権擁護委員の代表をもって組織する。
3 会議は、本法に基づく基本計画の策定、実施及び評価を担う。
(報告及び検証)
第五条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況を検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じなければならない。