35

農業法 条文全文Lex50 · 35/50 · 私案条文

原稿あり· 168 か条(枝条・附則含む)

原稿から機械抽出した私案の条文です。表・別表・書式は含みません。正本は原稿ファイルです。

第一編 総則

(目的)

第一条 この法律は、農業が、国民に対する安全で良質かつ栄養状態に配慮した食料の将来にわたる安定的な供給を担うとともに、農業者及び農村に居住する者の公正で安定した生活の基礎となる重要な産業であることにかんがみ、次に掲げる目的を達成するため、食料の安定供給、農業経営の安定及び農村社会の持続的発展に関する施策を推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展並びに地域の均衡ある発展に寄与することを目的とする。

一 国民に対し、適正な価格で、安全かつ健康に資する食料を安定的に供給すること。

二 農業者の所得及び生活水準の向上並びに農業経営の継続性の確保を図るとともに、そのために必要な経営安定対策及び農業安定対策の仕組みを整備すること。

三 農業生産の効率化及び高度化並びに技術革新の促進を通じて、農業及び関連産業の競争力及び持続可能性の強化を図ること。

四 農地及び農業が有する多面的機能を十分に発揮させるとともに、環境の保全、気候変動への適応及び生物多様性の保全に資する農業の推進を図ること。

五 農村における雇用及び生業の機会の確保、生活環境の整備その他の施策を通じて、農村社会及び地域経済の持続的な発展を図ること。

六 国内外の需給及び市場動向を踏まえつつ、農産物及び食品の需給及び価格の安定を図ること。

七 食料の生産、加工及び流通を経て販売及び消費に至る一連の事業活動が円滑に実施されるよう、その実施の確保を図ること。

八 平時及び災害その他の緊急時における食料の確保及び供給体制の強化を図り、内外の食料安全保障に寄与すること。

九 前各号に掲げる目的を達成するために必要な施策の整備及び運用の基本となる事項を定めること。

・趣旨産業としての農業の重要性と、食料の安定供給を達成するには住民を含む農業者と農村社会の持続的な発展が必要不可欠であるという趣旨から、生活の安定、経済の発展に加え地域の均衡という概念を用いている。都市と農村、第一次産業とその他の産業との不均衡な生活及び労働条件を是正するという考えは、戦前から戦後の農業法制に一貫して取り入れられてきた考え方であり、個別の目的を以下に列挙しつつも大きな目的として第一項に示している。

本条は、本法の目的規定として、農業が国民に対する安全で良質かつ栄養状態に配慮した食料を将来にわたり安定的に供給する基盤であること、並びに農業者及び農村に居住する者の生活の公正及び安定が、その達成に不可欠であることを明らかにするものである。すなわち、食料の安定供給は、生産のみならず、担い手及び農村社会が継続し得る条件整備を前提とするため、本条は、食料の安定供給、農業経営の安定及び農村社会の持続的発展に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上、国民経済の健全な発展並びに地域の均衡ある発展に寄与することを、本法の大目的として掲げている。

また、「地域の均衡ある発展」を掲げる趣旨は、都市と農村、第一次産業とその他の産業との間に生じ得る生活条件及び労働条件の格差が、農業の担い手確保及び農村社会の維持に影響し、ひいては食料の安定供給にも波及し得ることを踏まえ、これを是正する方向で施策を組み立てるべきことを示す点にある。このような観点は、農業の保護及び育成を国政の重要課題として位置付け、農業と他産業・都市と農村の関係調整を図ろうとする戦前・戦後を通じた法制・政策上の蓄積にも整合する。よって本条は、各号に列挙する個別目的を包含しつつ、第一項本文において本法の目的の骨格を示す構成としている。

(施策の総合的かつ計画的推進)

第二条 国は、前条に規定する目的を達成するため、食料の安定供給、農業経営の安定及び農村社会の持続的発展に関する施策を、相互の関連に配慮しつつ、総合的かつ計画的に推進するものとする。

 地方公共団体は、国との適切な役割分担の下に、当該地域の実情に応じ、前項の施策の推進に協力し、及び必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

・趣旨国と地方公共団体の役割分担を踏まえながら、食料の安定供給をはじめとする各種の政策目標について、総合的かつ計画的に施策として推進されるよう明記するものである。

(関係法令との調和等)

第三条 国及び地方公共団体は、この法律に基づく施策を講ずるに当たり、農地、農業経営、流通及び加工、環境、財政その他農業に関する制度及び施策について、関係法令との調和を図りつつ、施策の重複及び矛盾を避け、必要な制度の一体的な整備及び運用に努めるものとする。

 国は、前項の趣旨に照らし、関係行政機関相互の連携及び調整を図るために必要な措置を講ずるものとする。

・趣旨

(国際約束との整合)

第四条 国及び地方公共団体は、この法律に基づく施策を講ずるに当たり、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定及びこれに附属する協定その他の国際約束(以下「国際約束」という。)の下で我が国が負う義務に照らし、当該施策が国際約束と整合するよう努めるものとする。

 国は、前項の趣旨に照らし、この法律に基づき政令、省令、告示その他の命令又は指針等を定め、又は改廃しようとするときは、必要に応じ、国際約束との整合性に関する検討を行い、その概要を明らかにするものとする。

(衛生植物検疫措置等の科学的根拠)

第五条 国は、食品の安全の確保並びに動物及び植物の生命又は健康の保護を目的として衛生植物検疫措置その他これに類する措置を講ずるに当たっては、当該措置を必要な限度においてのみ適用し、科学的原則に基づき、及び適切なリスク評価に照らして定めるよう努めるものとする。

 国は、前項の措置について、必要に応じ、国際的に合意された基準、指針又は勧告との関係を整理し、及び透明性の確保に資する情報提供を行うものとする。

(技術的規制等の必要性及び透明性)

第六条 国は、表示、規格、認証その他技術的規制又は適合性評価手続に関する施策を講ずるに当たっては、正当な目的を達成するために必要な限度を超えて国際貿易の不必要な障害を生じさせないよう配慮し、かつ、国際規格その他国際的に整合した基準の活用に努めるものとする。

 国は、前項の施策の立案及び実施に当たり、利害関係者の意見を聴取する機会の確保その他の透明性の向上に資する措置を講ずるものとする。

(施策の記録及び説明責任)

第七条 国は、この法律に基づく施策のうち国際約束との関係上重要なものについて、その目的、内容、根拠及び実施状況を整理し、必要に応じ公表するよう努めるものとする。

(定義)

第八条 この法律において使用する用語の意義は、次の各号に掲げるところによる。

一 「食料」とは、人の生命及び健康の維持に必要な農林水産物並びにこれらを主たる原材料として製造される食品をいう。

二 「農業」とは、主として土地の利用に基づき、作物の栽培、家畜の飼養その他これらに類する行為により農産物を生産する事業をいう。

三 「農産物」とは、農業により生産される物(家畜及びその産品を含む。)であって、食料、飼料又は原材料として利用されるものをいう。

三の二 「水産物」とは、漁業(養殖業を含む。)により生産される水産動植物及びその産品であって、食料、飼料又は原材料として利用されるものをいう。

三の三 「林産物」とは、林業により生産される産品であって、食料、飼料又は原材料として利用されるものをいう。

三の四 「農林水産物」とは、農産物、水産物及び林産物をいう。

四 「農業者」とは、自らの判断と責任において農業を営む個人又は法人その他の団体をいう。

五 「農業経営」とは、農業者が、農地、労働力、資本その他の経営資源を組み合わせて継続的に行う農業及びこれに関連する事業の経営をいう。

六 「農村」とは、主として農業又は林業の用に供される土地が集団的に存在し、農業者その他の住民が生活する地域をいう。

七 「食料供給連鎖」とは、食料の生産、集荷、加工、流通、販売及び消費並びにこれらに付随する活動の一連の過程をいう。

八 「経営安定対策」とは、農業経営に係る収入又は費用の変動その他の影響により農業者の経営が不安定となることを防止し、又はその影響を緩和するために講ずる保険、共済、交付金その他の措置をいう。この場合において、経営安定対策は、その目的及び性質に照らし、特定の品目の生産又は取引を不当に誘導し、その他農業生産又は貿易を過度にゆがめることのないよう配慮して設計され、及び運用されるものとする。

九 「農業安定対策」とは、農業及び食料供給連鎖の安定を確保するため、需給の逼迫又は過剰、価格の急激な変動、災害、病害虫その他の生産障害、物流の途絶、輸入事情の急変、資材供給の制約その他の事由により農業の持続的な生産及び供給に支障が生ずることを防止し、又はその影響を緩和し、並びに回復を促進するために講ずる施策をいう。この場合において、農業安定対策は、当該事由の性質及び程度に応じ、必要な限度において、かつ、公正性及び透明性に配慮して講ぜられるものとする。ただし、特定の農業者の収入又は費用の変動を直接に補塡することを主たる目的とする措置は、経営安定対策として整理するものとする。また、農業安定対策のうち衛生植物検疫措置その他これに類する措置並びに技術的規制又は適合性評価手続に関するものについては、それぞれ第五条及び第六条の規定の趣旨に従うものとする。

十 「スマート農業」とは、情報通信技術、ロボット技術その他の先端技術を活用して行う農業であって、生産性の向上、労働負担の軽減及び品質の安定向上に資するものをいう。

十一 「環境保全型農業」とは、化学肥料及び農薬の使用の低減その他の方法により、環境への負荷の低減及び生物多様性の保全に配慮しつつ行われる農業であって、農地の多面的機能の発揮に資するものをいう。

十二 「統合公共施設」とは、公共施設法の規定による統合公共施設をいう。

十三 「関係機関」とは、国及び地方公共団体の機関、農業協同組合その他の農業者団体、金融機関、研究開発機関その他農業に関係する公私の機関をいう。

 前項各号の用語は、この法律の目的に照らし本法の体系の下で用いられるものであり、国際約束その他の国際的な取決めにおいて使用される同一又は類似の用語の意義と必ずしも一致するものではない。ただし、国が国際約束との整合性を確保するために必要があるときは、当該国際約束における用語の意義を参照して、施策の設計及び運用を行うものとする。

(基本理念)

第九条 農業に関する施策は、将来の世代に対する責務にかんがみ、国民の安定した生活及び経済社会の持続的な発展に資することを旨とし、次に掲げる理念に基づいて行われるものとする。

一 国民に対し、安全で、質が高く、かつ多様な食料を、内外の需給及び貿易の動向を踏まえつつ、長期にわたり安定して供給すること。

二 農地及び農業用水の適正な保全及び利用並びに国土の保全、自然環境の保護、良好な景観の形成その他農業の有する多面的機能が十分に発揮されるようにすること。

三 農業の生産性及び付加価値の向上並びに経営の安定を図るとともに、データ及びデジタル技術その他の新たな知見を活用して、気候変動その他の環境変化に対応し得る強靱な農業構造を形成すること。

四 農村社会における雇用及び所得の機会を確保しつつ、青年、女性、高齢者、障害のある者その他多様な人々が、その能力を発揮して農業及び農村に参画できるようにし、もって地域社会の持続的な維持及び発展に資すること。

五 農業及び食料に係る施策を、環境、土地利用、教育、保健、福祉その他の関連する分野の施策と総合的かつ一体的に推進し、地域における公共施設その他の地域資源との連携を通じて、国民の生活の質の向上に資すること。

六 国際的な責務及び協調に留意しつつ、国際的なルールに基づく公正な貿易体制の下で、国内の食料安全保障の確保と世界全体の食料問題の改善とが両立するようにすること。

(食料安全保障)

第四条 国は、国民に対し、安全で質が高く、かつ多様な食料を、現在及び将来の世代にわたり、安定して供給することが確保されるよう、内外の食料の需給及び貿易の動向、人口及び所得の動向並びに自然的・社会的条件の変化を総合的に勘案しつつ、食料安全保障の確保に必要な施策を総合的かつ計画的に講ずるものとする。この場合において、当該施策は、経営安定対策及び農業安定対策の体系により整理され、実施されなければならない。

 国は、前項の趣旨にのっとり、次に掲げる事項に特に配慮して食料安全保障に関する施策を推進するものとする。

一 主要な食料について、中長期的な需要の見通しに即して国内における生産基盤を維持し、及び強化するとともに、自給力を継続的に向上させること。

二 気象災害、感染症のまん延、国際情勢の変化その他の事態が生じた場合においても、必要な食料が国民生活に著しい支障を生ずることのないよう、備蓄その他の供給の安定に資する措置を講ずること。

三 食料の輸入について、その過度の依存を回避しつつ、産地及び輸送経路の多様化その他の方法により、国際的な供給途絶又は価格の急激な変動による影響を緩和すること。

四 生産、集荷、加工、保管、輸送、販売その他の各段階における施設及び体制を整備し、並びにデータ及びデジタル技術の活用による需給動向の常時の把握及び予測を行うことにより、食料供給連鎖の全体としての強靱性を高めること。

五 災害その他の緊急時における食料の供給に関し、要配慮者その他の者への優先的な供給、地域における公共施設法に基づく統合公共施設その他の拠点を通じた配分その他の措置を含む計画をあらかじめ策定し、及び必要に応じて見直すこと。

六 世界全体の食料需給の状況に配慮しつつ、国際的なルールに基づく貿易、国際機関その他の枠組みを通じた連携及び協力並びに食料援助その他の国際貢献を適切に行うこと。

 地方公共団体は、第一項及び前項に定める趣旨に留意しつつ、地域の実情に応じ、当該地域における食料の安定供給の確保に関し、国の施策と相まって必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

(農業の多面的機能)

第五条 農業は、食料の安定的な供給の機能を有するのみならず、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、気候変動の緩和及び適応、良好な景観の形成並びに地域社会の維持その他の、国民の生活及び経済活動の基盤となる多面的な機能(以下「農業の多面的機能」という。)を有するものであり、その発揮が将来の世代にわたって確保されるように行われなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業の多面的機能が、森林、河川その他の自然的環境及び農村における生活、文化、祭礼その他の地域の伝統的な営みと相まって発揮されるものであることにかんがみ、その維持及び増進に資する施策を総合的かつ一体的に講ずるものとする。

 国及び地方公共団体は、農業の多面的機能の発揮に重要な役割を担う共同活動その他の取組が、地域の実情に応じて持続的に実施されるよう、当該活動に係る費用の一部の支援、技術的助言その他必要な措置を講ずるものとする。

 国は、前各項の趣旨にのっとり、農業の多面的機能が適切に評価され、その維持及び増進に係る費用負担が社会全体として公正かつ合理的に分かち合われるよう、指標の整備、調査研究及び情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。

(環境との調和及び持続可能性)

第六条 農業は、土壌、水、大気その他の環境に過度の負荷を与えることなく行われるとともに、自然の物質循環を尊重しつつ、その営みが将来の世代にわたり継続されるように行われなければならない。この場合において、農業の生産性の向上及び経営の効率化並びに国民に対する食料の安定的かつ適正な価格による供給並びに国際競争力の強化に資するよう配慮されなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の趣旨にのっとり、農業に係る施策を講ずるについては、環境の保全、気候変動の緩和及び適応、生物の多様性の保全並びに自然災害の防止及び軽減に関する施策と総合的かつ一体的に実施されるようにするとともに、農業経営の多様な形態及び規模がその特性に応じて持続的に発展し得るよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業における土壌の質の維持向上、水利用の効率化、農薬及び肥料の適正な使用並びに再生可能エネルギーその他の環境負荷の低い資源の利用が推進されるよう、必要な施策を講ずるものとする。この場合において、農業者の創意工夫及び技術革新が十分に発揮されるよう、過度の負担を課することのないよう留意しなければならない。

 国は、前各項の実効性を確保するため、農業に伴う温室効果ガスの排出及び吸収、生物多様性及び物質循環に係る指標その他環境への影響に関する指標の整備、当該指標に基づく評価及び公表並びにこれらに関する調査研究の推進その他必要な措置を講ずるものとする。

(農村社会及び地域振興)

第七条 農村は、国民に対する食料の安定的な供給の基盤であるとともに、農地及び農業用水の有する多面的機能の発揮、国土及び自然環境の保全並びに歴史、文化及び共同体意識の継承の場として重要な役割を有するものであり、その健全な維持及び発展が図られなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の趣旨にのっとり、農村における農業及びこれと関連する産業の持続的な発展並びに当該産業に係る安定した雇用機会の確保を図るとともに、教育、医療、福祉、子育て、交通、情報通信その他の日常生活に必要な機能が総合的かつ計画的に整備され、当該地域において適切に提供されるよう、施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の施策を通じて、農村において居住し、働き、学び及び子育てを行うことを希望する者が、その意思に応じて将来にわたり安定して生活することができるよう、居住及び就業の機会並びに生活環境の確保に関し必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、第一項から前項までに規定する施策を講ずるに当たっては、地域ごとの実情を十分に踏まえつつ、地域住民、農業者及び事業者その他の関係者の知見が適切に活用されるよう配意しなければならない。

(国の責務)

第八条 国は、我が国の長期にわたる食料の安定供給及び農業並びに農村の健全な発展を図るため、前条までに定める基本理念に則り、農業に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。

 国は、前項の責務を果たすため、国内外の食料需給及び貿易の動向並びに人口、経済その他の社会の構造的変化を勘案しつつ、次に掲げる事項について必要な施策を講ずるものとする。

一 食料の自給力の維持向上及び食料安全保障の確保に関すること。

二 農業の経営安定及び構造の改善並びに農業生産力の高度化に関すること。

三 農地の適正な保全及び利用並びに農業の有する多面的機能の発揮に関すること。

四 農業と環境との調和及び持続可能な農業生産体系の確立に関すること。

五 農村における生活環境の整備及び地域振興の推進に関すること。

六 農業及び関連産業の振興並びに食料供給連鎖全体の機能強化に関すること。

七 前各号に掲げる施策に必要な財政上、税制上及び金融上の措置その他の制度の整備に関すること。

八 農業に関する他の法律に基づく施策との調和及びこの法律に基づく計画との整合性の確保に関すること。

 国は、前二項に定める責務を適切に遂行するため、地方公共団体その他の関係機関との緊密な連携及び役割分担に配慮するとともに、調査及び統計の整備並びに情報の提供を行うよう努めなければならない。

(地方公共団体の責務)

第九条 地方公共団体は、その区域における農業及び農村の特性に応じ、前条までに定める基本理念並びに国の施策との調和を図りつつ、農業に関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。

 都道府県は、前項の責務を果たすため、この法律に基づく都道府県農業計画その他の関係計画に即して、次に掲げる事項について必要な施策を講ずるものとする。

一 区域内の農業及び農村の将来像を示し、農業構造の改革及び担い手の育成・確保に関する広域的な方針を定めること。

二 農地の保全及び利用、農業生産基盤整備並びに環境と調和した農業生産の推進に関すること。

三 流通、加工及び輸出入その他の食料供給連鎖に係る施策について、国及び市町村との役割分担を踏まえた広域調整を行うこと。

四 区域内市町村に対する技術的助言、情報提供その他の支援を行うとともに、農業に関する人材育成及び専門的支援体制の整備を図ること。

五 前各号に掲げるもののほか、この法律に基づく施策の広域的実施に必要な事項。

 市町村は、第一項の責務を果たすため、この法律に基づく市町村農業計画その他の地域の計画に即して、次に掲げる事項について必要な施策を講ずるものとする。

一 地域の実情に応じた農業の振興及び農村の生活環境の整備に関すること。

二 農地の適正な利用及び保全、遊休農地等への対策並びに農地と他の土地利用との調整に関すること。

三 地域における担い手の確保及び育成並びに農業経営の安定に資する支援に関すること。

四 農業と環境との調和、多面的機能の発揮及び地域資源を活用した産業振興に関すること。

五 農業者その他の関係者との対話及び合意形成の場を確保し、必要な情報提供及び相談体制の整備を図ること。

六 前各号に掲げるもののほか、この法律に基づく施策の地域における実施に必要な事項。

 地方公共団体は、前各項に定める責務を遂行するに当たり、国その他の地方公共団体及び関係機関との連携に努めるとともに、農業に関する調査及び統計並びにデータの整備及び活用を図るものとする。

(農業者等の役割)

第十条 農業に従事する個人、農業法人その他農業を営む事業体(以下「農業者等」という。)は、前条までに定める基本理念に則り、その営む農業を通じて、国民に対する農産物及びその加工品の安全かつ安定的な供給を確保するとともに、農地及び農村が有する多面的機能の発揮に寄与するよう努めなければならない。

 農業者等は、前項の責務を果たすため、その経営の改善及び高度化を図りつつ、次に掲げる事項に留意し、その役割を主体的に担うものとする。

一 需要構造及び国際的な需給・貿易動向を踏まえ、需要に即した生産及び販売を行うこと。

二 農産物及びその加工品の品質及び安全性の確保並びに向上に努めること。

三 環境との調和に配慮し、土壌及び水資源の保全その他温室効果ガスの排出削減及び気候変動への適応に資する生産方式を採用するよう努めること。

四 農地の適正な利用及び保全に資するとともに、地域における景観及び生物多様性の保全に配意すること。

五 農村社会における生活及び次世代への継承に配慮し、地域における雇用の創出及び人材育成に努めること。

 農業者等は、その経営の特性に応じて、農業協同組合、農事組合法人、農業者の組織するその他の団体、商工業者、金融機関、研究機関及び消費者その他の関係者と連携し、共同利用、共同販売その他の共同取組を通じて、生産性の向上及び付加価値の増大を図るよう努めなければならない。

 農業者等は、この法律に基づく農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画その他の施策の策定及び実施に当たり、国、都道府県及び市町村が行う調査及び統計作成並びに意見聴取等に協力し、その結果を自らの経営の改善に活用するよう努めなければならない。

 農業者等は、農業に関する法令及びこれに基づく命令並びに農産物の安全性及び衛生の確保に関する基準その他のルールを遵守するとともに、これらの遵守状況に関する記録の作成及び保存に努めなければならない。

 農業者等は、必要に応じ、農業者の後継者及び新たに農業に参入する者に対し、技術、経営ノウハウその他の知見の継承及び提供に努めるとともに、当該参入が認定農業者(新規就農区分)としての経営確立に円滑につながるよう、共通試験法その他の人材育成に係る制度と連携して、農業に関する知識及び技能の開発に協力するよう努めなければならない。

(消費者の役割)

第十一条 消費者は、農業が国民の生活及び経済活動の基盤であること並びに食料の安全かつ安定的な供給及び農地並びに農村の有する多面的機能の発揮がその恩恵を受けるすべての者の行動と選択に支えられるものであることにかんがみ、日常の食生活における食品の選択、利用及び廃棄その他の行動を通じて、これらの確保に資するよう努めなければならない。

 消費者は、食品の安全性及び品質並びにその生産方法、原産地、環境への影響その他の情報に関心を持ち、食品表示その他の提供される情報を適切に活用して、科学的知見に基づき、合理的かつ公正な判断の下に食品を選択するよう努めるものとする。

 消費者は、食品ロスの削減の推進に関する法律その他の関係法令の趣旨に留意し、購入、保存、調理及び提供の各段階において、必要な量に配慮した購入、適切な保存、余剰食品の有効活用その他の工夫を行うことにより、食品の廃棄の抑制及び資源の有効利用に努めなければならない。

 消費者は、地域の農業者等が生産する農産物及びその加工品の利用その他の方法により、地域の農業及び農村の振興に寄与するよう努めるとともに、災害その他の事由により影響を受けた農業及び農産物に関し、科学的知見に基づかない風評に左右されることなく、正確な情報に基づき行動するよう努めなければならない。

 消費者は、食生活の改善及び健康の保持増進に資するよう、栄養バランス等に配慮した食習慣の形成に努めるとともに、学校、地域その他における食育の取組及び農業に関する学習の機会を活用するよう努めるものとする。

 消費者は、国、都道府県及び市町村がこの法律に基づき行う農業及び食料に関する施策の企画及び実施に際し、意見の提出、審議会その他の場への参加、調査及び統計に対する協力その他の方法により、積極的に関与するよう努めるものとする。

(その他の関係者の役割)

第十二条 農産物の加工、流通、販売、外食その他の事業を営む者(以下「実需者等」という。)は、農業が国民生活及び国民経済の基盤であることにかんがみ、国産農産物の安定的な取引関係の構築、適正な取引条件の形成及び品質・安全性の確保に資するよう努めるとともに、農業者その他の農業の担い手との間における長期的かつ協調的な関係の維持及び発展に努めなければならない。

 実需者等は、需給及び価格に関する情報、品質・規格に関する情報その他の事業活動により得られた情報のうち、農業の生産振興及び経営の安定に資すると認められるものについて、農業者その他の関係者に対し、個人情報の保護その他の関係法令に留意しつつ、適切な方法により提供するよう努めなければならない。

 金融機関、保険会社その他の資金及びリスクに関するサービスを提供する者は、農業の特性及び地域の実情を踏まえつつ、農業経営及び農業関連事業に対する資金供給及び信用保証の円滑化並びに保険その他のリスク分散手段の提供に努めるとともに、これらを通じて農業の持続的な発展及び経営の安定に資するよう努めなければならない。

 大学その他の教育研究機関並びに試験研究機関は、農業及び農村に関する基礎的又は応用的な研究及び技術開発を推進し、その成果を農業現場において活用し得る形で提供するよう努めるとともに、農業に関する専門的人材の養成及び資質の向上に資する教育・研修の充実に努めなければならない。

 報道機関、情報通信サービスを提供する者その他農業及び食料に関する情報の発信を行う者は、農業及び農産物に関する事実を、科学的知見及び信頼し得る資料に基づき、公正かつ正確に伝達するよう努めるとともに、風評被害その他不当な不利益を生ずることのないよう配慮しなければならない。

 前各項に規定する者その他の関係者は、国、都道府県、市町村及び農業者等がこの法律に基づき講ずる施策について、その企画及び実施に際し、意見の提出、協議の場への参加、情報及び知見の提供その他の方法により協力するよう努めるものとする。

(農政の総合性及び一体性)

第十三条 国は、農業に関する施策(以下「農政」という。)を講ずるに当たっては、この法律に基づく施策を基軸として、生産、流通、加工、消費、環境保全、農村社会の維持及び国土の保全その他相互に関連する分野に係る施策が、相互に矛盾することなく、総合的かつ一体的に推進されるようにしなければならない。

 国は、農政に関し、土地利用、環境保全、労働、社会保障、教育、経済財政、貿易その他の関係分野に係る施策との有機的な連携及び調和を図り、これらの施策が農業及び農村の特性並びに地域の実情を踏まえた一体的な制度体系として構成されるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業に関する計画、認定その他名称のいかんを問わず実質的に農政の枠組みを構成する制度を設け、又は改廃するに当たっては、この法律に基づく農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画との関係を整理し、その重複及び過度の細分化を避けつつ、一の地域について一の体系的な法制及び計画の下で運用されるよう配慮しなければならない。

 農政を所掌する行政機関は、他の行政機関及び関係機関と緊密に連携し、前各項に掲げる総合性及び一体性を確保するために必要な調整その他の措置を講ずるものとする。

(農業基本計画)

第十四条 国は、この法律の目的及び基本理念に基づき、農政を総合的かつ計画的に推進するため、農業に関する中長期的な施策の基本的方向その他重要な事項を定める計画(以下「農業基本計画」という。)を定めなければならない。

 農業基本計画には、次に掲げる事項を盛り込むものとする。

一 食料の安定的な供給及び食料安全保障に関する目標並びにこれを達成するための基本的施策

二 農業の構造の改革及び担い手の育成・確保に関する目標並びにこれを達成するための基本的施策

三 農地の確保及びその計画的な利用、保全並びに農業インフラの整備に関する目標及び基本的施策

四 環境との調和及び多面的機能の発揮に関する目標並びに気候変動への適応その他環境負荷の低減に関する基本的施策

五 生産、流通、加工、輸出入その他食料供給連鎖全体の高度化及び需給の安定に関する目標並びに基本的施策

六 農村社会の維持及び生活環境の整備、人材育成並びに教育・福祉・労働その他関係分野との連携に関する目標並びに基本的施策

七 前各号に掲げるもののほか、農業及び農村に関する施策の総合的かつ一体的な推進に必要な事項

 農業基本計画は、名称のいかんを問わず農業に関する国の総合的な計画として位置付けられるものとし、この法律その他の法律において農業に関する国の計画又は指針として定めることができる事項は、別段の定めがある場合を除き、農業基本計画の一部として附則で定めるところにより段階的に定めるものとする。

 国は、農業基本計画を定め、又は変更するに当たっては、関係行政機関、地方公共団体及び関係者の意見を聴くとともに、国内外の経済情勢、国際的な約束その他農業を取り巻く情勢の変化を十分に勘案しなければならない。

(国際比較及び制度ベンチマーク)

第十四条の二 国は、農業基本計画を定め、又は変更するに当たっては、主要な農業政策及び農業財政の国際的動向を踏まえ、我が国の制度の実効性及び国民負担の水準について、国際比較により検証し、その結果を公表するものとする。

 前項の検証には、少なくとも次に掲げる事項を含めるものとする。

一 価格、所得又は収入の変動に対するセーフティネットの体系及び加入・利用の実績

二 災害、疾病その他のリスクに対する保険及び再保険の仕組み並びにカバー率

三 市場観測、統計及び情報公開の仕組み並びに危機時措置の発動基準

四 施策の事務負担及び不正防止の統制の実効性

 国は、前二項の検証結果を踏まえ、必要に応じて経営安定対策その他の主要施策の見直しを行うものとする。

(都道府県農業計画)

第十五条 都道府県は、この法律の目的及び基本理念並びに農業基本計画に即し、その区域における農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、当該区域を一体として対象とする農業に関する計画(以下「都道府県農業計画」という。)を定めなければならない。

 都道府県農業計画には、次に掲げる事項を盛り込むものとする。

一 当該都道府県の農業及び農村の現状の把握並びにその課題に関する事項

二 農業の構造の改革及び担い手の育成・確保に関する目標並びにこれを達成するための基本的施策に関する事項

三 農地の確保及びその計画的な利用、保全並びに農業インフラの整備に関する事項

四 環境との調和、多面的機能の発揮及び気候変動への適応に関する事項

五 生産、流通、加工、輸出入その他食料供給連鎖全体の高度化及び需給の安定に関する事項

六 農村社会の維持、生活環境の整備、人材育成並びに教育・福祉・労働その他関係分野との連携に関する事項

七 市町村その他の関係主体との役割分担及び連携の在り方に関する事項

八 前各号に掲げるもののほか、当該都道府県の区域における農業及び農村に関する施策の総合的かつ一体的な推進に必要な事項

 都道府県農業計画は、名称のいかんを問わず、当該都道府県の区域における農業に関する総合的な計画として位置付けられるものとし、都道府県は、その区域について、農業に関する計画をみだりに重複して定めてはならない。

 都道府県は、他の法律の規定により農業に関する計画を策定する場合においては、その内容が農業基本計画及び都道府県農業計画と整合するようにするとともに、当該計画の全部又は一部をもって都道府県農業計画の一部とすることにより、農業に関する計画の一体的な整理及び統合に努めなければならない。

 都道府県は、都道府県農業計画を定め、又は変更するに当たっては、市町村その他の関係機関及び関係者の意見を聴き、並びに市町村農業計画との整合及び相互の役割分担の明確化を図らなければならない。

(市町村農業計画)

第十六条 市町村は、この法律の目的及び基本理念並びに農業基本計画及び都道府県農業計画に即し、その区域における農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、当該区域を一体として対象とする農業に関する計画(以下「市町村農業計画」という。)を定めなければならない。

 市町村農業計画には、次に掲げる事項を盛り込むものとする。

一 当該市町村の農業及び農村の現状の把握並びにその課題に関する事項

二 農業の構造の改革及び担い手の育成・確保並びに集落営農その他の地域ぐるみの取組に関する目標及びこれを達成するための基本的施策に関する事項

三 農地の確保及びその計画的な利用、保全並びに都市農業を含む土地利用との調整に関する事項

四 生産、加工、流通、地産地消、学校給食その他の公共調達を通じた国産農産物の利用促進及び地域産業との連携に関する事項

五 環境との調和、多面的機能の発揮、景観の保全及び防災・減災に関する事項

六 農村における生活環境の整備(医療、教育、福祉、交通その他の生活サービスを含む。)及び人材育成に関する事項

七 農業委員会、農業者及びその組織する団体、消費者その他の関係者の参画及び協働の在り方に関する事項

八 前各号に掲げるもののほか、当該市町村の区域における農業及び農村に関する施策の総合的かつ一体的な推進に必要な事項

 市町村農業計画は、名称のいかんを問わず、当該市町村の区域における農業に関する総合的な計画として位置付けられるものとし、市町村は、その区域について、農業に関する計画をみだりに重複して定めてはならない。

 市町村は、他の法律の規定により農業に関する計画又は農業と密接に関連する土地利用、環境、地域振興その他の計画を策定する場合においては、その内容が農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画と整合するようにするとともに、当該計画の全部又は一部をもって市町村農業計画の一部とすることにより、農業に関する計画の一体的な整理及び統合に努めなければならない。

 市町村は、市町村農業計画を定め、又は変更するに当たっては、都道府県農業計画との整合を図るとともに、都道府県の定める基準及び技術的助言を尊重し、都道府県その他の関係行政機関並びに農業委員会、農業者及びその組織する団体その他の関係者と密接に連携してこれを行わなければならない。

(計画の策定手続)

第十七条 国及び地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画(以下この条において「農業計画」という。)を定め、又は変更しようとするときは、この法律の目的及び基本理念に照らし、統計その他の客観的な資料に基づき、当該区域における農業及び農村の現状及び見通し並びに関係施策との連関を総合的に勘案して、その案を作成しなければならない。

 国は、農業基本計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関相互の協議を行うとともに、公共組織法その他の法律の規定により置かれる農業及び関連産業に関する審議会その他の合議制の機関に諮問してその意見を聴かなければならない。

 都道府県は、都道府県農業計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、市町村その他の関係地方公共団体との協議を行うとともに、農業委員会、農業者及びその組織する団体、実需者その他の関係者の意見を聴くために必要な説明会その他の場を設けなければならない。

 市町村は、市町村農業計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、都道府県の定める基準及び技術的助言を尊重しつつ、都道府県及び農業委員会との協議を行い、並びに農業者、地域住民及び実需者その他の関係者の意見を聴くために必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業計画の案を作成したときは、その要旨を公表し、相当の期間を定めて、当該案に対する意見の提出の機会を国民又は住民に与えなければならない。この場合において、電磁的記録を用いる方法その他の適切な方法により行うものとし、その具体的な方法その他必要な事項は、政令又は条例で定めるところによる。

 国及び地方公共団体は、農業計画の策定に当たり、他の法律の規定に基づき定める農業に関する計画又はこれと密接に関連する土地利用、環境、地域振興その他の計画に係る手続との一体的な実施に努めるとともに、同一の区域及び期間を対象とする農業に関する計画がみだりに重複することのないよう、手続及び時期の調整その他必要な措置を講じなければならない。

(計画の変更及び見直し)

第十八条 国は、農業基本計画について、おおむね五年ごとに、その実施の状況、国内外の食料及び農産物の需給の動向並びに農業及び農村を取り巻く経済的、社会的その他の事情を勘案して検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

 地方公共団体は、前項の趣旨に即し、都道府県農業計画及び市町村農業計画について、おおむね五年ごとに、その実施の状況その他の事情を勘案して検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

 国及び地方公共団体は、著しい自然災害、国際的な需給及び貿易の動向の急激な変化その他農業及び農村を取り巻く環境に重大な変動が生じ、又は生ずるおそれがあると認めるときは、前二項に定める期間を待つことなく、農業計画の見直し及び変更を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業計画を変更しようとするときは、第十七条の規定に準じて、その案の作成、関係者との協議、審議会その他の合議制の機関の意見聴取並びに公表及び意見募集その他必要な手続を行わなければならない。

 農業に関する他の法律の規定により国又は地方公共団体が定めることとされる計画であって、その対象とする区域及び期間が農業基本計画、都道府県農業計画又は市町村農業計画と同一又はこれに包含されるものについては、特に必要がある場合を除き、その変更及び見直しは、当該農業計画の変更及び見直しとして行うものとし、みだりにこれと重複する別個の計画を存続させてはならない。

(計画の公表等)

第十九条 国は、農業基本計画並びに第十八条第一項の規定によりこれを変更したときは、遅滞なく、その全文及び要約を公表しなければならない。

 地方公共団体は、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに第十八条第二項の規定によりこれらを変更したときは、遅滞なく、その全文及び要約を公表しなければならない。

 前二項の公表は、インターネットその他の電磁的方法により行うものとし、国及び地方公共団体は、当該農業計画の内容に係る統計その他の基礎情報を、個人情報の保護に配慮しつつ、機械判読に適した形式で提供するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前二項に規定する農業計画の公表に当たっては、公共施設法に基づく統合公共施設その他の公共施設において、当該農業計画の写しを備え付け、住民が容易に閲覧し得るようにするとともに、高齢者、障害のある者その他の者の利用に配慮した方法によりその周知を図らなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業計画の公表に際し、その趣旨、位置付け及び他の法律に基づく農業に関する計画との関係について、一般の者にも分かりやすい説明資料を作成し、公表するよう努めなければならない。

(他の法令との関係)

第二十条 農業に関する施策は、この法律の目的及び基本理念並びに農業基本計画その他この法律に基づく農業計画に即して行われなければならない。

 農地法、農業経営基盤強化促進法、農業保険法、土地改良法、六次産業化・地産地消法、農林水産物・食品の輸出促進に関する法律その他農業に関する主要な法律は、この法律の趣旨に反しない範囲において効力を有し、その解釈及び運用に当たっては、この法律の目的及び基本理念が最大限尊重されなければならない。

 前項に掲げる法律その他農業に関する法律とこの法律との関係を整理し、制度及び計画の統合又は簡素化を図るために必要な法制上の措置は、この法律の附則の定めるところにより行うものとする。

 行政組織、人事及び職務、財政運営並びに公共施設の整備その他農業に関する施策の実施体制に係る事項については、公共組織法、公共職員法、公共財政法及び公共施設法その他の公共に関する基本的な法律の定めるところにより、この法律と一体として運用されなければならない。

(農業構造改革の基本方針)

第二十一条 農業の構造の改革(以下「農業構造改革」という。)は、第一条から第三条までに定める目的及び基本理念並びに農業基本計画に即し、農業生産の持続的な発展と農業に従事する者の所得の安定及び向上を図ることを基本として行われなければならない。

 農業構造改革は、農地、労働力、資本及び技術その他の経営資源が、地域の実情に応じ、効率的かつ安定的な農業経営を営むことができる経営体に計画的に集積されるとともに、多様な規模及び形態の農業経営が共存し、その特性に応じて役割を分担する仕組みの形成を旨として行われなければならない。

 農業構造改革は、次に掲げる事項に配慮して行われなければならない。

一 世代を超えた農業経営の継承及び新たに農業に従事しようとする者の円滑な参入が確保されること。

二 地域における雇用の機会の創出及び良好な就業環境の確保を通じて、農村社会の持続的な維持及び発展に資すること。

三 環境への負荷の低減並びに農地及び農村の有する多面的機能の発揮に資すること。

四 農業と食品産業その他の関連産業との連携の強化並びに付加価値の高い農業・農産物の創出に資すること。

 国及び地方公共団体は、前各項に定める基本方針に基づき、担い手の育成及び確保、農地の集積及び集約化、農業経営の多角化並びに地域における合意形成その他農業構造改革に関する施策を、農業基本計画その他この法律に基づく農業計画との整合性を保ちつつ、総合的かつ計画的に推進しなければならない。

(農業従事者並びに農業の担い手の定義)

第二十二条 この法律において「農業従事者」とは、農作物の栽培、家畜の飼養その他の農業に係る作業に継続して従事する者をいう。

 この法律において「農業の担い手」とは、農業者のうち、次に掲げる者であって、自己の名義において農業を営み、その経営に係る利益及び損失について最終的な責任を負うものをいう。

一 自己の名義において農業を営み、その経営に係る利益及び損失について最終的な責任を負う個人(以下「自営農業者」という。)

二 会社法その他の法律の規定により設立された法人であって、自己の名義において農業を営み、その経営に係る利益及び損失について最終的な責任を負うもの(以下「農業法人」という。)

三 自営農業者又は農業法人が構成員となり、共同して農業経営を行い、又はこれに準ずる形態により地域の農業を一体として担うものとして、この法律の定めるところにより認められた団体(以下「地域農業経営体」という。)

四 主として他の事業を営む法人であって、その事業の一部として自己の名義において農業を営み、その経営に係る利益及び損失について最終的な責任を負うもの(以下「企業的農業経営体」という。)

 この法律において「認定農業者」とは、前項に規定する農業の担い手のうち、この法律の定めるところにより農業経営の改善その他に関する計画(以下「経営改善計画」という。)の認定を受けた者をいう。

 認定農業者は、既に農業を営む者に係る区分及び新たに農業を営もうとする者に係る区分(以下「新規就農区分」という。)に区分されるものとする。

 この法律において「担い手支援主体」とは、農業協同組合その他の農業者団体、金融機関、研究開発機関その他農業の振興に関係する者であって、前各項に規定する農業の担い手の経営及び生活を支えることを主たる役割とするものをいう。

 農業に従事する労働者及び外国人材は、第一項に規定する農業従事者として、前各項に規定する農業の担い手と一体となって農業を支える重要な労働力であることにかんがみ、その雇用の安定及び就業環境の整備については、第二編及び第四編の規定に基づき、必要な施策が講じられなければならない。

(担い手の育成及び確保)

第二十三条 国は、前条に規定する農業の担い手について、農業経営に必要な知識及び技能の習得並びに経営管理能力の向上を図るとともに、当該農業の担い手の確保及び定着を通じて農業構造の改革が着実に進むようにするため、教育、研修、経営相談その他の必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 地方公共団体は、前項の施策と調和を保ちつつ、その地域の農業及び農村の実情に応じ、農業の担い手の育成及び確保のための施策を総合的かつ計画的に実施するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業の担い手の育成及び確保に関する施策を実施するに当たって、農業大学校その他の教育機関、農業協同組合その他の農業者団体、金融機関、専門家その他の関係者との連携に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前各項の施策を講ずるに当たり、特に青年、女性その他新たに農業に従事しようとする者が農業の担い手(新規就農区分の認定農業者を含む。)として成長し、当該地域において農業経営を継続し得るようにすることに配意しなければならない。

(農地及び農業経営の集積及び集約化)

第二十四条 国は、農業生産性の向上及び持続可能な農業構造の確立を図るため、主要農業経営体その他の農業の担い手への農地及び農業経営の計画的な集積並びに経営資源の合理的な集約化(以下「農地等の集積等」という。)が適切に推進されるよう、農地の権利移動及び利用調整、農業経営の統合若しくは共同化その他の必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 農地等の集積等は、第三編に定める農地制度及び土地利用の基本的枠組みに従い、地域の自然的及び社会的条件、土地利用の状況並びに農業及び農村の有する多面的機能に配慮しつつ、中小規模の家族経営その他多様な経営形態の存立を不当に損なうことのないよう行われなければならない。

 国及び地方公共団体は、農地の貸付け、利用権の設定その他これに類する方法による経営規模の拡大及び経営資源の再配分を促進するため、農地中間管理機構その他農地等の集積等に関する事業を行う者の体制の整備並びにその機能の強化を図るものとする。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画その他の関係計画と調和を保ちつつ、その区域における農地等の集積等に関する目標を定め、その達成状況を把握し、必要があると認めるときは、当該目標及びこれに係る施策の見直しを行うよう努めなければならない。

(多様な農業経営形態の促進)

第二十五条 国及び地方公共団体は、農業の健全な発展並びに地域の実情に即した持続可能な農業構造の確立に資するよう、この法律において農業の担い手として位置付けられる個人による農業経営体、家族を単位とする農業経営体、農事組合法人その他の法人による農業経営体、農業協同組合その他の協同組織による農業経営体並びに会社法その他の法律に基づき設立される法人であって農業を主たる事業として行うもの(以下「多様な農業経営形態」という。)が、その特性を生かして存立し、及び発展することができるよう、必要な施策を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、農地の権利移動及び利用調整並びに農地等の集積及び集約化に関する施策を講ずるに当たっては、前項に規定する多様な農業経営形態の選択が、地域の自然的及び社会的条件、農作業の特性、労働力の状況その他の事情に応じて適切に行われるよう配慮するとともに、特定の経営形態への一律の転換を過度に促すことにより、地域に根ざした中小規模の家族経営その他の農業経営体の存立を不当に損なうことのないよう留意しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業協同組合法、農地法、会社法その他の関係法律に基づく農業経営体の設立及び運営に関する制度が、多様な農業経営形態の特性を踏まえつつ、公正な競争条件の下で適切に機能するよう、金融、税制その他の関連施策との整合性を図りつつ必要な措置を講ずるものとする。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する多様な農業経営形態相互の連携及び役割分担が促進されるよう、共同利用施設の整備、共同労務の仕組みの構築その他の協働のための基盤整備に関し、必要な支援を行うよう努めなければならない。

(地域農業戦略及び集落等における合意形成)

第二十六条 市町村は、第十六条に規定する市町村農業計画に即して、当該市町村の区域内の農村集落その他の小地域ごとに、農地の利用及び保全並びに農業経営体の役割分担その他地域における農業の在り方についての方針(以下「地域農業戦略」という。)を定め、又は当該市町村農業計画においてこれを明らかにするよう努めなければならない。

 前項の地域農業戦略には、次に掲げる事項が、当該地域の自然的及び社会的条件並びに第二十二条から第二十五条までに規定する農業経営体の構造に即して、体系的に定められるものとする。

一 農地の利用区分、集積及び集約化並びに農地の保全に関する方針

二 個人、家族、法人、協同組織その他の農業経営体相互の役割分担及び共同利用施設、共同労務その他の協働の在り方に関する方針

三 農業労働力の確保及び育成並びに次世代への継承に関する方針

四 環境保全、景観形成及び防災・減災その他の地域の安全に関する方針

五 前各号に掲げるもののほか、当該地域における農業及び農村の持続可能性の確保に必要な事項

 市町村は、第一項の地域農業戦略を定め、又は変更しようとするときは、農業委員会等に関する法律に規定する農業委員会その他の関係機関と連携し、当該地域において農業に従事する者、農地の権利を有する者その他の関係者に対し、その案の内容を明らかにして意見を述べる機会を確保するとともに、必要に応じ、当該地域ごとに地域農業に関する協議の場を設けるものとする。

 前項の協議の場においては、地域農業戦略に係る事項のほか、第二十三条から第二十五条までの規定に基づく担い手の育成及び確保、農地の権利移動及び利用調整並びに多様な農業経営形態の選択に関する事項についても協議することができるものとし、その結果は、市町村農業計画及び都道府県農業計画の策定及び変更に適切に反映されるよう努めなければならない。

 第一項の地域農業戦略は、第十四条から第十六条までに規定する農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに第三編に規定する農地制度に関する規定に適合するものでなければならず、これらと抵触することによって新たな計画又は認定制度を事実上創設するものと解してはならない。

(農地管理機関の活用)

第二十七条 国は、第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化並びに第二十六条に規定する地域農業戦略の実施を図るため、公共組織法に基づき農林水産省を主務省として設置される指定公共組織のうち、農地の権利の中間的取得又は受託及びその利用権の設定その他農地の利用調整を主たる任務とするもの(以下この条において「農地管理機関」という。)を設け、これを計画的に活用しなければならない。

 農地管理機関は、農林水産省に置かれる農村振興局の内部組織として設置される農地管理事業部を中核とし、都道府県及び市町村の機関に置かれる農地管理事業部により構成されるものとする。

 都道府県及び市町村は、前項に規定する農地管理事業部をそれぞれその機関の内部組織として設置し、職員の配置、予算その他必要な措置を講ずることにより、国と一体として農地の利用調整に係るガバナンスが確保されるよう努めなければならない。

 農地管理機関は、第一項の目的を達成するため、次に掲げる業務を中心として行うものとする。

一 農業に継続して従事する意思を有しない者その他農地の利用の見直しを必要とする者からの農地の権利の取得又は受託

二 前号により取得し、又は受託した農地について、第二十二条に規定する農業経営体に対する利用権の設定その他当該農地の効率的かつ安定的な利用を確保するための措置

三 遊休農地及び荒廃農地の解消に資するための農地の再配置

四 農地の権利関係及び利用状況に関する情報の整理及び提供

五 前各号に掲げるもののほか、農地の集積及び集約化並びに利用調整に必要な業務であって、第三編に規定する農地制度に関する施策の実施に資するもの

 都道府県は、農業基本計画及び都道府県農業計画に即し、農地管理機関が前項各号に掲げる業務を行うに当たり、その実施区域、対象とする農地及び農業経営体の範囲その他必要な事項を定めるとともに、市町村及び農業委員会その他の関係機関と連携して、当該業務が第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第二十六条に規定する地域農業戦略と整合的に行われるよう調整しなければならない。

 市町村は、農地管理機関が行う前各項に規定する業務に関し、その機関に置かれる農地管理事業部を通じ、地域の農地の利用状況及び農業経営体の構造に関する情報の提供、地域農業に関する協議の場における調整その他必要な協力を行うよう努めなければならない。

 農地管理機関が行う業務は、第二十四条及び第二十六条に規定する施策を実施するための手段として位置付けられるものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的とするものと解してはならない。

 農地管理機関は、第四十五条の二に規定する農業水利組合、第四十五条の三に規定する流域管理法人、土地改良区その他農業用水利施設の管理者と連携し、第一項第一号の規定により取得し、又は受託した農地について、当該農地に係る農業用水の運転及び維持管理に関する協力、費用負担の承継又は調整並びに配水計画の周知が適切に行われるよう、必要な措置を講じなければならない。

 農地管理機関は、第四十五条に規定する土地改良事業等の受益地区内にある農地について、第一項第四号第一号又は第二号の規定により農地の権利の取得又は受託をしたときは、当該農地に係る土地改良区その他土地改良施設の管理者に対する賦課金その他の負担及び当該施設の維持管理に必要な協力が、農地の利用権の設定先である農業経営体に適切に承継され、又は調整されるよう、必要な措置を講じなければならない。

10 農地管理機関は、前項の措置を講ずるに当たり、土地改良区が事業計画又は予算を定め、又は変更する場合における説明及び合意形成が円滑に行われるよう、関係市町村及び土地改良区との間で必要な情報提供及び調整を行うものとする。

11 この法律の施行の際現に農地中間管理事業の推進に関する法律(平成二十五年法律第百〇一号)第二条に規定する農地中間管理機構として指定を受けている法人(以下この項において「既存農地中間管理機構」という。)は、当該法人がその主たる事務所を置く都道府県の機関に置かれる農地管理事業部が行うべき前各項に規定する業務を行うものとして、この条の規定の適用については、当該都道府県の農地管理事業部とみなす。

12 前項に規定する既存農地中間管理機構の権利及び義務その他その有する一切の財産関係は、附則で定めるところにより、当該都道府県の機関に置かれる農地管理事業部に承継されるものとする。

(農業協同組合等の役割)

第二十八条 農業協同組合その他政令で定める協同組織(以下この条において「農業協同組合等」という。)は、組合員の協同の理念に基づき、その営む事業を通じて、農業経営の安定及び地域農業の持続的な発展に寄与するとともに、第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第二十六条に規定する地域農業戦略の策定及び実施に関し、農業委員会その他の関係機関に対して必要な協力を行うものとする。

 農業協同組合等のうち、特定の農産物又はこれに準ずる商品区分ごとに組織され、当該農産物の集荷、選別、加工、販売その他の共同事業を主たる目的とするもの(以下この項において「商品別農業協同組合」という。)は、国内外における当該農産物及びその加工品の安定的な供給並びに付加価値の向上に資するよう、その事業を行うものとする。

 農業協同組合等のうち、信用、共済、資材の共同購入、機械の共同利用その他農業経営に共通する機能の提供を主たる目的とするもの(以下この項において「機能別農業協同組合」という。)は、農業経営体に対する資金供給、リスク分散及び経営基盤の強化に資するよう、その事業を行うものとする。

 全国農業協同組合中央会その他政令で定める農業協同組合等の連合体(以下この項において「協同組合グループ統括法人」という。)は、前二項に規定する商品別農業協同組合及び機能別農業協同組合その他の農業協同組合等の組織及び事業の再編に係る基本方針を作成するとともに、国内外の需給及び価格の動向その他の事情を勘案しつつ、農業経営の安定及び食料の安定供給に資するための中長期的な戦略を策定し、及びその実施を推進するよう努めなければならない。

 農業協同組合等は、第二十七条に規定する農地管理機関及び第二十七条の二に規定する農業経営支援機関が行う業務に関し、当該業務の実施に必要な情報の提供、地域における農業経営体の紹介その他の協力を行うとともに、その役員及び職員のうち農業経営及び地域農業に関する知見を有する者について、農業委員会の委員その他当該機関からの協力の要請があったときは、これに応じるよう努めなければならない。

 農業協同組合等のうち、商品別農業協同組合又は機能別農業協同組合であって、その行う事業の内容、経営の健全性、組合員への還元状況その他政令で定める基準に適合すると認められるものは、公共組織法の定めるところにより、第二十七条の二第一項に規定する農業経営支援機関指定公共組織又は食料の安定供給に資する指定公共組織として指定することができる。

(女性、若者及び新規参入者の支援)

第二十九条 国及び地方公共団体は、女性、若者及び他の産業からの新規参入者その他多様な農業従事者が、その有する能力を十分に発揮しつつ、安定して農業に従事することができるようにするため、この法律に基づく施策並びに財政会計法及び他の法律に基づく施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国は、前項の施策を講ずるに当たり、次に掲げる事項に配慮しなければならない。

一 就農を希望する者が農業に必要な知識及び技能を修得するための教育及び研修の機会の確保(認定農業者(新規就農区分)に係る制度との円滑な接続を含む。)

二 就農の準備の期間及び就農後の一定の期間における所得の下支え並びに経営の安定に資する資金の円滑な確保(認定農業者(新規就農区分)に対する支援を含む。)

三 雇用就農、法人経営への参画その他多様な形態による農業への参入の促進

四 子育て、介護その他の家庭生活と農業との両立に資する居住、保育、医療その他の生活環境の整備

 地方公共団体は、その区域の実情に応じ、第一項及び前項の施策と一体として、第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第二十六条に規定する地域農業戦略に基づき、女性、若者及び新規参入者に係る就農相談、体験就農の機会の提供、地域とのマッチングその他必要な支援を行うよう努めなければならない。この場合において、当該支援は、認定農業者(新規就農区分)に係る制度に円滑に接続されるよう配慮しなければならない。

 農業経営体は、性別、年齢その他の属性にかかわらず、農業に従事する者の能力に応じた役割分担及び処遇が適切に行われるよう配慮するとともに、女性及び若者が農業経営の方針その他重要な事項に関する意思決定に参画する機会の拡大に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、女性、若者及び新規参入者に係る農業従事者数その他政令で定める指標を把握し、その結果に基づき、前各項に規定する施策の効果を検証し、及び必要な見直しを行うよう努めなければならない。

(小規模農業経営体の位置付け)

第三十条 農業経営体のうち、その経営規模が相対的に小さいもの(以下この条において「小規模農業経営体」という。)は、その営む農業の種類及び地域の実情に応じ、多品目栽培、品質又はブランドによる差別化、地域内における直接販売その他の形態を通じて、地域の食文化及び景観の維持並びに農村社会の多様性の確保に資する重要な構成要素であることにかんがみ、適切に支援されなければならない。

 国及び地方公共団体は、この法律に基づく施策を講ずるに当たり、農業経営体の規模の大小のみをもって、小規模農業経営体を支援の対象から一律に除外し、又はこれに不利益な取扱いをしてはならない。ただし、施策の目的及び効果に照らし、客観的かつ合理的な理由がある場合は、この限りでない。

(地域小規模耕作の位置付け)

第三十条の二 兼業農家、都市農業を営む者並びに家庭菜園、市民農園その他主として自家消費又は地域内における少量の販売を目的として行われる小規模な耕作(以下この条において「地域小規模耕作」という。)は、専ら農業を営む農業経営体による農産物の供給を補完し、地域における食生活の充実及び環境の保全に資するとともに、平時においては当該地域の食料自給力を底支えし、災害その他の非常時においては当該地域における食料供給連鎖構造の緩衝機能を果たし得るものとして、専ら農業を営む農業経営体とは異なる役割を有するものとして適切に位置付けられなければならない。

 地方公共団体は、地域小規模耕作が前項の趣旨に沿って行われ、平時における食生活の多様化及び非常時における食料の緊急避難的な供給源として機能するよう配意し、その実施状況を把握するとともに、農業計画及び地域防災計画その他の関係計画において、当該地域小規模耕作の役割を明らかにするよう努めなければならない。

(種子及び肥料等の地域内での融通)

第三十条の三 国、地方公共団体、農業協同組合等及び第二十七条に規定する農地管理機関並びに第二十七条の二に規定する農業経営支援機関は、農業経営体が使用する種子、苗、肥料その他の生産資材のうち、品質及び安全性が確保された余剰のものが生じている場合において、当該余剰分が廃棄されることのないよう配慮し、地域小規模耕作に従事する者との間で当該生産資材の地域内における融通が円滑に行われるよう、情報提供その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 前項の生産資材の融通は、農薬及び肥料の適正な使用並びに種苗の知的財産の保護に係る法令の規定に適合する範囲において行われなければならず、その実施に当たっては、農業経営体による生産に支障を生じさせることのないよう、あらかじめ地域における協議の場において必要な調整が図られるものとする。

(技術支援及び人材循環)

第三十条の四 地方公共団体は、農業経営体、農業協同組合等及び農業改良普及組織その他の関係機関と連携し、地域小規模耕作に従事する者又はこれから従事しようとする者に対し、基礎的な栽培技術、安全な農薬及び肥料の使用方法並びに収穫物の保存方法に関する研修、講習会その他の人材育成の機会を提供するよう努めなければならない。

 前項の研修等は、平時における地域住民の学習及び交流の機会として行われるとともに、災害その他の非常時において、地域小規模耕作に従事する者が農業経営体と連携して農作業の補助その他の協力を行うことができるようにすることを目的として実施されるものとする。

(物流が遅延し得る地域における自給体制)

第三十条の五 地方公共団体は、離島その他地理的条件等により災害その他の非常時において物流の遅延が生じやすい地域にあっては、第三十条から前条までに規定する施策を通じ、主食的な作物及び平素家計に与える影響が大きい高価格の野菜その他の作物の生産が、小規模農業経営体及び地域小規模耕作によって一定程度確保され、これが当該地域における食料供給連鎖構造における緩衝装置として機能するよう配慮し、当該地域における食料の自給体制の確保に努めなければならない。

(農業労働力及び外国人材の確保)

第三十一条 国は、農業が長期にわたり安定的に営まれるためには、農業に従事する者(以下この条において「農業従事者」という。)の量及び質の双方について、他産業との均衡に配意しつつ確保されることが不可欠であることにかんがみ、第二十一条に規定する農業構造改革の基本方針並びに第二十三条から第二十五条まで及び第三十条に規定する施策と相まって、農業従事者の確保及びその雇用の安定並びに職業能力の向上を図るために必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国は、前項の施策を講ずるに当たり、農業従事者の処遇の改善、労働時間、休日その他の労働条件の適正な確保及び職場環境の改善を図るとともに、機械化、スマート農業の導入その他の生産性の向上に資する施策を一体として推進することにより、農業における雇用が他産業の雇用との比較においても選択され得るものとなるよう努めなければならない。

 地方公共団体は、第一項に規定する国の施策と相まって、その区域の農業の実情に応じ、農業従事者の確保及び育成に関する計画その他必要な施策を、農業計画及び地域農業戦略並びに地域における雇用対策及び教育訓練に関する施策と一体として講ずるよう努めなければならない。

 国は、出入国管理及び難民認定に関する法令並びに労働関係法令の趣旨にのっとり、農業における外国人材の受入れが、農業従事者の構成における補完的な役割を果たす範囲において行われるべきものであることを基本として、農業経営体が受け入れることができる外国人材の在留資格の類型、その職務内容、受入れ数の目安その他必要な事項について、農業における労働力需要及び国内の農業従事者の確保状況を踏まえた中長期的な方針を定めなければならない。

 農業経営体は、外国人材をその事業所に受け入れる場合においては、当該外国人材について、労働基準法、最低賃金法その他の労働関係法令の適用に服することを前提として、賃金その他の労働条件について国内の農業従事者との不当な格差が生じることのないよう配慮しなければならない。この場合において、農業経営体は、当該外国人材に対し、安全衛生に関する教育、災害時の対応に関する説明その他の必要な指導を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、外国人材が農業に従事するに当たり、地域社会における生活環境の整備、多言語による相談体制の整備その他の支援が適切に行われるよう、関係機関及び関係団体との連携の下に必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 国は、農業従事者及び外国人材に係る数及び属性並びにその地域別、作目別その他政令で定める区分ごとの状況について、統計法の定めるところにより統計を整備し、当該統計に基づき前各項に規定する施策の実施状況を定期的に評価し、その結果に応じて必要な見直しを行わなければならない。

 農業における外国人材の受入れに関し、ブローカーその他の不適切な仲介を通じて当該外国人材の権利が侵害され、又は農業従事者の雇用の安定に重大な支障が生ずることのないようにするため必要な措置その他の事項については、出入国管理及び難民認定に関する法令並びに職業安定に関する法令の定めるところにより講じられる施策と一体として、政令で定める。

(事業承継及び相続の円滑化)

第三十二条 国は、農業が世代を超えて継続して営まれることが、食料の安定供給及び農村社会の維持に不可欠であることにかんがみ、農業経営体の事業承継及び農地その他の農業に供される資産(以下この条において「農業関連資産」という。)の相続が円滑に行われるよう、第二十一条に規定する農業構造改革の基本方針並びに第二十四条及び第六十四条から第六十五条までに規定する農業経営の集積及び再編に関する施策と相まって、金融、税制その他の関係施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国は、前項の施策を講ずるに当たり、民法その他の関係法令の趣旨を尊重しつつ、農業関連資産が過度に分散し、又は遊休化することのないよう配慮するとともに、農業経営体の規模及び形態並びに地域の実情に応じて、親族内承継、第三者への承継その他多様な形態による事業承継が選択し得る環境の整備に努めなければならない。

 地方公共団体は、第一項に規定する国の施策と相まって、その区域の農業の実情に応じ、農業計画及び地域農業戦略の中に、農業経営体の事業承継及び農業関連資産の相続の状況に関する把握、相談体制の整備並びに関係機関との連携に関する事項を位置付け、当該区域における農業経営の世代間の継続が確保されるよう努めなければならない。

 農業経営体は、その構成員の年齢構成、経営の見通しその他の事情を勘案し、事業承継及び農業関連資産の相続に関し、中長期的な見通しを有し、必要に応じて、後継者の育成、農業関連資産の承継方法及び承継後の経営体制に関する方針(以下この項において「事業承継構想」という。)を定めるよう努めなければならない。この場合において、事業承継構想は、第二十四条及び第三十条に規定する施策との整合に配慮して作成されるものとする。

 国及び地方公共団体は、農業経営体が前項に規定する事業承継構想の作成その他の事業承継に関する取組を行うに当たり、農業協同組合等、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士、司法書士その他の専門家並びに第二十七条に規定する農地管理機関及び第二十七条の二に規定する農業経営支援機関との連携により、相談、診断及び計画策定支援を一体として提供し得る体制の整備に努めなければならない。

 国は、農業関連資産の相続又は贈与による承継が円滑に行われるようにするため、租税特別措置法その他の税に関する法律において、農地、農業用施設及び農業用機械その他の農業関連資産に係る相続税又は贈与税の納税猶予その他の特例措置並びに固定資産税その他の地方税に係る措置を講ずるとともに、政策金融機関その他の金融機関による承継資金の供給及び信用保証に関する制度が、第二十四条及び第六十四条から第六十五条までに規定する施策と整合的に運用されるよう配慮しなければならない。

 農業経営体が農業関連資産の相続により経営を承継する場合においては、当該農業関連資産に係る農地の権利移動及び利用の調整その他の事項は、第三編に規定する農地制度に関する規定に従い行われるものとし、その際、農地管理機関は、相続により農地が分割され、又は遊休農地が生ずることのないよう必要な助言及び調整を行うものとする。

 国は、農業経営体の事業承継及び農業関連資産の相続の状況並びにこれらに対する支援施策の利用状況について、統計法の定めるところにより統計を整備し、当該統計に基づき第一項から前項までに規定する施策の実施状況を定期的に評価し、その結果に応じて必要な見直しを行わなければならない。

(担い手施策の評価及び見直し)

第三十三条 国は、第二十一条から第三十二条までに規定する農業構造の改革及び担い手に関する施策(以下この条において「担い手施策」という。)について、その実施状況及び効果を、統計その他の客観的な指標に基づき定期的に評価し、その結果に応じて、当該担い手施策の内容の見直しその他必要な措置を講じなければならない。

 前項の評価は、次に掲げる事項その他政令で定める事項について行うものとし、その際に用いる統計上の単位及び区分は、第二条及び第二十二条に規定する用語並びに統計法(平成十九年法律第五十三号)に基づく農林業センサスその他の農業に関する統計調査における区分との整合が保たれるよう定められなければならない。

一 第二十二条に規定する農業経営体の区分ごとの数、農業従事者数、年齢構成、労働時間及び農業所得の動向

二 第二十四条及び第二十七条に規定する農地の集積及び集約化並びに農地管理機関による農地の利用調整の状況

三 第二十三条及び第二十九条から第三十一条までに規定する担い手の育成及び確保に係る施策の実施状況並びにその成果

四 第三十条及び第三十二条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作並びに事業承継及び相続の状況

 国は、第一項の評価を行うに当たり、公共組織法の定めるところにより、食料・農業・農村に関する審議会その他の第三者的機能を有する機関の意見を聴くとともに、主要な農業政策制度を有する国又は地域における担い手政策及び農業構造政策の動向並びにその評価の結果を参照し、これらとの比較によりわが国の担い手施策の在り方を検討するよう努めなければならない。

 国は、第一項の評価の結果及びこれに基づき講じた措置の概要を、公表しなければならない。この場合において、当該結果及び措置の概要は、第十四条から第十六条までに規定する農業基本計画等並びに第百六条から第百九条までに規定する調査、統計、情報及び行政評価に関する施策との関係が明らかとなるよう整理されなければならない。

 地方公共団体は、その区域における担い手施策の実施状況及び効果について、第一項から前項までに規定する国の評価の枠組みに即して把握及び検証を行い、その結果を第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第二十六条に規定する地域農業戦略の見直しに反映させるよう努めなければならない。

(担い手支援に係る関係機関の連携)

第三十四条 国及び地方公共団体は、第二十一条から第三十三条までに規定する農業構造の改革及び担い手に関する施策(以下この条において「担い手施策」という。)を実施するに当たり、次に掲げる機関及び団体(以下この条において「担い手支援関係機関」という。)が、それぞれの役割に応じて相互に密接に連携し、当該担い手施策が一体的かつ効率的に推進されるよう、必要な体制の整備その他の措置を講じなければならない。

一 農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第二百八十八号)に規定する農業委員会及び農地利用最適化推進委員

二 第二十七条に規定する農地管理機関

三 第二十七条の二に規定する農業経営支援機関

四 第二十八条に規定する農業協同組合等

五 日本政策金融公庫その他農業者に対する制度金融を行う機関並びに信用保証協会その他資金供給及び信用保証を業とする者であって政令で定めるもの

六 公共職業安定所、職業紹介事業を行う機関その他第三十一条に規定する農業に従事する労働力の確保に関与する機関であって政令で定めるもの

七 農業改良普及事業を実施する機関、農業大学校その他農業に係る教育又は技術普及を行う機関

八 前各号に掲げるもののほか、担い手施策の実施に密接な関連を有する機関又は団体であって政令で定めるもの

 国は、担い手施策の推進に関する基本的な方針及び農業基本計画において、前項に規定する担い手支援関係機関の役割分担及び連携の在り方を明らかにするとともに、情報の共有、相談及び支援の窓口の整理統合その他担い手施策を利用する農業経営体及び農業従事者にとって分かりやすい支援体系となるよう配慮しなければならない。

 地方公共団体は、第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第二十六条に規定する地域農業戦略に即し、その区域ごとに、担い手支援関係機関の代表者その他関係者による協議の場を活用して、担い手施策に関する情報の共有、役割分担の整理及び個々の農業経営体に対する支援内容の調整を行うよう努めなければならない。

 前項に規定する協議の場は、第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第二十六条に規定する地域農業戦略の策定及び実施の過程において位置付けられるものとし、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的とするものと解してはならない。

 国は、第三十三条に規定する担い手施策の評価を行うに当たり、担い手支援関係機関相互の連携の状況及びその効果についても検証し、その結果を踏まえて、前各項に規定する体制の在り方の見直しその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(農業における労働条件の確保及び雇用の安定)

第三十五条 農業に従事する労働者(外国人であって我が国の法令に基づき就労が認められる者を含む。)の労働条件、労働安全衛生その他の雇用に関する事項については、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)、労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)、雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)その他の労働に関する法令の定めるところによるものとし、この法律において特に定める場合を除き、農業に従事する労働者であることのみを理由として、これらの法令における一般の労働者と異なる取扱いをしてはならない。

 国及び地方公共団体は、農業構造の改革及び担い手に関する施策並びに第三十一条に規定する農業に従事する労働力の確保に関する施策を講ずるに当たり、農業に従事する労働者の労働条件が適正に確保され、過度な長時間労働、危険又は有害な作業における安全配慮の欠如その他の不適切な就労実態が生ずることのないよう、厚生労働行政を担う機関その他関係機関と連携して必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 農業経営体は、季節的又は短期間の雇用、パートタイム労働、家族以外の者の雇用その他農業の実情に応じた多様な雇用形態を活用する場合においても、前二項に規定する趣旨に沿い、賃金、就業時間、安全衛生、休憩及び休暇その他の労働条件を明確にし、かつ、これを適正に確保するとともに、労働に関する法令に基づく帳簿の作成及び保存その他必要な管理を行うよう努めなければならない。

 農業経営体は、外国人その他農業に従事する経験が乏しい者を雇用する場合において、言語、生活環境及び文化の相違に配慮しつつ、安全な作業方法、使用する機械及び資材に関する基礎的事項並びに災害その他の緊急時における対応に関する教育を行うよう努めるとともに、居住環境及び通勤手段の確保その他当該労働者が健康で安定した就労を継続することができるよう必要な配慮をしなければならない。

 国及び地方公共団体は、第二十一条から第三十四条までに規定する施策により農業構造の高度化及び機械化等が進むことが、農業に従事する労働者の一方的な雇用の不安定化につながることのないよう留意し、当該施策の実施に伴い雇用に影響を受けるおそれのある者に対する職業訓練、再就職支援その他必要な雇用政策上の措置が、関係機関の連携の下で適切に講じられるよう努めなければならない。

 農業経営体は、家族として農業に従事する者についても、前各項に規定する労働条件の確保、安全配慮及び健康の保持に関する趣旨を踏まえ、その年齢及び心身の状況並びに従事する作業の内容に応じ、過度の負担を課し、又は危険若しくは有害な作業に従事させることのないよう十分な留意をしなければならない。

(農地制度の基本原則)

第三十六条 農地は、国民に対する食料の安定的な供給の基礎であるとともに、水源の涵養その他の多面的機能を有し、かつ、長期的な確保が困難な有限の資源であることにかんがみ、その制度及び運用は、将来にわたる農業生産の持続的な発展並びに地域における良好な環境及び景観の保全に資するよう、耕作者の地位の安定に配意しつつ行われなければならない。

 農地の利用は、食料の安定供給及び農業経営体の経営の安定に資する農業上の利用を基本とし、これ以外の利用は、当該地域における土地利用に関する計画との整合性、代替地の有無その他の事情を総合的に勘案してもなお必要やむを得ないと認められる場合に限り、最小限度において行われるものとする。

 農地の所有権その他の権利の帰属及び利用の形態は、第二十二条に規定する農業経営体が継続して農業に従事し得るようにすることを基本として定められなければならず、その集積及び集約化が無秩序に行われ、又は過度の分散若しくは細分化が生ずることにより、農業生産の効率性及び安定性が損なわれることのないよう配慮されなければならない。

 国及び地方公共団体は、第一項から前項までに定める原則に基づき、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画その他の土地利用に関する計画との調和を図りつつ、農地の面積及び質の維持向上に必要な施策を総合的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。

 この編において定める農地制度は、国土利用計画、都市計画、森林に関する施策その他の国土及び地域の利用に関する基本的な施策との調和の下に運用されなければならない。

(農地について権利を有する者の責務)

第三十六条の二 農地について所有権その他の権利を有する者は、当該農地が前条に規定する性質及び機能を有することにかんがみ、当該農地を適正かつ効率的に利用し、又は農業上の利用が確保されるよう努めなければならない。

(農地の権利移動及び利用調整)

第三十七条 農地についての所有権その他の物権又は使用及び収益を目的とする権利(以下この条において「農地に係る権利」という。)の移転又は設定(以下この条において「農地の権利移動」という。)は、第三十六条に規定する農地制度の基本原則並びに第十四条から第十六条までに規定する農業計画及び第四十条に規定する農業振興地域その他のゾーニングとの整合の下に行われなければならず、当該農地の属する地域における農地の集積及び集約化、農業経営体の構造の改善並びに地域小規模耕作(第三十条第三項に規定するものをいう。)の適切な維持に著しい支障を生ずるおそれがある場合においては、これを行ってはならない。

 農地の権利移動のうち、次に掲げる区分に該当するものは、政令で定めるところにより、都道府県知事(指定都市その他政令で定める市にあってはその長)又は市町村長の許可を受けなければならない。

一 第四十条に規定する農業振興区域内の農地に係る所有権の移転又は長期の賃貸借その他これに準ずる権利の設定であって、当該区域における農地の集積及び集約化に支障を及ぼすおそれがあると認められるもの

二 前号に掲げる区域以外の区域に所在する農地のうち、その規模、位置及び周辺の土地利用の状況に照らし、当該地域における農地の保全及び農業経営体の構造に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められるものとして政令で定めるものの権利移動

三 前二号に掲げるもののほか、国土の保全、災害の防止又は環境の保全の観点から、その是非について個別に審査することが必要と認められる農地の権利移動として政令で定めるもの

 前項に規定するもの以外の農地の権利移動であって、その規模、位置及び権利の内容に照らし、当該地域の農業生産及び農地の保全に与える影響が比較的軽微であると認められるものは、政令で定めるところにより、市町村長への届出をしなければならない。この場合において、当該届出を受理した市町村長は、当該権利移動が第十四条から第十六条までに規定する農業計画及び第四十条に規定するゾーニングと整合的であるかどうかについて確認しなければならない。

 第二項の許可を受け、又は前項の届出をしようとする者は、相続、包括遺贈、合併その他政令で定めるやむを得ない事由により事前にこれらの手続を行うことが著しく困難である場合を除き、農地の権利移動の原因となる契約又は法律行為の効力が生ずる日前までに、当該許可の申請又は届出をしなければならない。

 第二項の許可をし、又は第三項の届出に係る農地の権利移動を認めるに当たっては、都道府県知事又は市町村長は、当該地域における農地の分布、農業経営体の構造、地域小規模耕作の状況及び災害その他の非常時における食料供給連鎖構造の緩衝機能並びに環境及び景観の保全への影響を総合的に勘案するとともに、第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化及び第四十四条に規定する遊休農地及び荒廃農地対策に支障を生じさせないよう配慮しなければならない。

 都道府県知事及び市町村長は、第二項及び第三項に規定する農地の権利移動の許可及び届出に係る事務を行うに当たり、第二十七条に規定する農地管理機関及び農業委員会法に基づく農業委員会その他の関係機関と密接に連携し、農地情報の共有及び利用調整に関する協議を行うものとする。

 農地の権利移動に係る手続は、民法その他の私法上の規律及び第三十九条に規定する農地の転用に係る手続と調和を保ちつつ、第十四条から第十六条までに規定する農業計画及び第四十条に規定するゾーニングの実施手段として位置付けられるものであって、別個の計画又は認定制度を創設することを目的とするものと解してはならない。

 第二項の許可を受けないで、又は第三項の規定による届出をせずに農地の権利移動を行い、又は同項の届出に係る内容と異なる農地の権利移動を行った者に対する原状回復その他の是正措置及び罰則については、この法律で別に定めるところによる。

(農地の所有及び利用の制限)

第三十八条 農地の所有及び利用は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三十六条に規定する農地制度の基本原則に照らし、食料の安定供給の確保、農地の有する多面的機能の発揮及び農業経営の健全な発展に資するよう行われなければならず、これらの目的に反する純粋な投機その他の不適切な目的のために行われてはならない。

 農地を農地として所有することができる者は、次に掲げる者に限られる。

一 第二十二条に規定する農業経営体であって、当該農地について継続して農業を営む意思及び能力を有し、政令で定める基準に適合するもの

二 国、地方公共団体、第二十七条に規定する農地管理機関その他農地の保全若しくは農業振興のために農地を保有することが特に必要と認められる法人であって、政令で定めるもの

三 農業に関する試験研究、教育又は技術の普及のために農地を保有することが必要と認められる機関であって、政令で定めるもの

 前項各号に掲げる者以外の者が、相続その他政令で定めるやむを得ない事由により農地の所有権を取得した場合においては、当該者は、政令で定める期間内に、第二十二条に規定する農業経営体への譲渡又は利用権の設定若しくは第二十七条に規定する農地管理機関への権利の移転その他政令で定める措置を講じなければならない。

 第二項各号に掲げる者のうち農業経営体以外の者が農地を所有する場合においては、当該者は、その所有する農地について、農業経営体による利用が確保されるよう配慮しなければならず、正当な理由なくこれを遊休農地又は荒廃農地として放置してはならない。

 外国人その他日本国の国籍を有しない者(外国法人を含む。)及びこれらが実質的に支配する法人による農地の所有又は長期にわたる利用権の取得については、食料安全保障及び国土の適正な利用の確保に資する観点並びに国際的な約束及び安全保障上の観点を踏まえ、日本国民及び日本の法人が当該外国において農地の所有又は利用について受ける取扱いとの均衡に配意し、別に法律で定めるところにより、必要な制限その他の措置が講ぜられるものとする。

 前三項及び前項に規定する農地の所有及び利用に関する制限は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整並びに第四十四条に規定する遊休農地及び荒廃農地対策に関する施策と一体として運用されなければならない。

(農地の転用の許可及び届出)

第三十九条 農地を農地以外の用途に供し、又は供することとなるようその形質の変更をすること(以下この条において「農地の転用」という。)は、第三十六条に規定する農地制度の基本原則及び第十四条から第十六条までに規定する農業計画並びに第四十条に規定する農業振興地域その他のゾーニングとの整合の下に行われなければならず、当該農地の属する地域における食料の安定供給、農地の有する多面的機能及び農村社会の維持に著しい支障を生ずるおそれがある場合においては、これを行ってはならない。

 農地の転用のうち、次に掲げる区分に該当するものは、政令で定めるところにより、都道府県知事(指定都市その他政令で定める市にあってはその長)又は市町村長の許可を受けなければならない。

一 第四十条に規定する農業振興区域(農用地区域その他これに準ずる、農地としての利用を重点的に確保すべき区域をいう。)内の農地の転用であって、当該区域における農地の集積及び集約化に支障を及ぼすおそれがあると認められるもの

二 前号に掲げる区域以外の区域に所在する農地のうち、その規模、位置及び周辺の土地利用の状況に照らし、当該地域における農地の保全に重大な影響を及ぼすおそれがあると認められるものとして政令で定めるものの転用

三 前二号に掲げるもののほか、国土の保全、災害の防止又は環境の保全の観点から、その是非について個別に審査することが必要と認められる農地の転用として政令で定めるもの

 前項に規定するもの以外の農地の転用であって、その規模、位置及び用途の性質に照らし、当該地域の農業生産及び農地の保全に与える影響が比較的軽微であると認められるものは、政令で定めるところにより、市町村長への届出をしなければならない。この場合において、当該届出を受理した市町村長は、当該転用が第十四条から第十六条までに規定する農業計画及び第四十条に規定するゾーニングと整合的であるかどうかについて確認しなければならない。

 第二項の許可を受け、又は前項の届出をしようとする者は、相続、包括遺贈、合併その他政令で定めるやむを得ない事由により事前にこれらの手続を行うことが著しく困難である場合を除き、農地の転用に係る行為に着手する日前までに、当該許可の申請又は届出をしなければならない。

 第二項の許可をし、又は第三項の届出に係る農地の転用を認めるに当たっては、都道府県知事又は市町村長は、当該地域における農地の分布、農業経営体の構造、地域小規模耕作の状況(第三十条第三項に規定するものをいう。)及び災害その他の非常時における食料供給連鎖構造の緩衝機能並びに環境及び景観の保全への影響を総合的に勘案するとともに、第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化及び第四十四条に規定する遊休農地及び荒廃農地対策に支障を生じさせないよう配慮しなければならない。

 都道府県知事及び市町村長は、第二項及び第三項に規定する農地の転用の許可及び届出に係る事務を行うに当たり、第二十七条に規定する農地管理機関及び農業委員会法に基づく農業委員会その他の関係機関と密接に連携し、農地情報の共有及び利用調整に関する協議を行うものとする。

 第四十条に規定する農業振興区域内に所在する農地のうち、政令で定める基準に適合する優良農地については、その転用は、道路その他の公共的施設の整備、統合公共施設その他の公共の利益のためにやむを得ないものとして政令で定める用途に供する場合その他これに準ずる場合を除き、許可してはならない。

 農地の転用に係る手続は、国土利用計画その他の土地利用に関する計画及び都市計画その他の法令に基づく開発許可等の手続とできる限り一体的に行われるよう整備されなければならない。この場合において、農地の転用に係る許可又は届出は、別個の計画又は認定制度の創設を目的とするものではなく、第十四条から第十六条までに規定する農業計画及び第四十条に規定するゾーニングの実施手段として位置付けられるものと解するものとする。

 第二項の許可を受けないで、又は第三項の規定による届出をせずに農地の転用を行い、又は同項の届出に係る内容と異なる農地の転用を行った者に対する原状回復その他の是正措置及び罰則については、この法律で別に定めるところによる。

10 農地の転用を目的として、当該農地に係る権利の移転又は設定を伴う行為をしようとする者は、第二項の許可又は第三項の届出により、第三十七条第二項又は第三項に規定する手続を要しない。

(農業振興地域等のゾーニング)

第四十条 国は、農地制度に関する施策を講ずるに当たり、食料の安定供給の確保及び農地の有する多面的機能の発揮並びに農業経営の健全な発展を図るため、農業に適した土地について、農業を主たる土地利用とする区域とこれ以外の土地利用を主たるものとする区域とを区分するゾーニングの仕組み(以下この条及び次条において「農業振興地域等のゾーニング」という。)を整備し、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三十六条に規定する農地制度の基本原則が当該ゾーニングを通じて具体化されるよう配慮しなければならない。

 都道府県は、農業基本計画及び都道府県農業計画に即し、自然的条件、土地利用の現況及び見通しその他の地域の実情を勘案して、その区域を、農業を主たる土地利用とすることが適当な区域(以下この条において「農業振興地域」という。)と、その他の土地利用との調和の下に農業を維持し、又はこれを適切に縮小することが適当な区域その他必要な土地利用区分に区分するための基本方針を定めるものとする。

 市町村は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画に即し、前項の基本方針に従い、その区域内において農業振興地域を定めるとともに、当該農業振興地域のうち、農業上利用することが適当である土地を中心として、農地として利用すべき土地の区域(以下この条において「農用地区域」という。)を定めなければならない。この場合において、市町村は、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)に基づく用途地域、国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)に基づく土地利用に関する区分その他の関係法令に基づく区域区分との整合が図られるよう配慮しなければならない。

 前項の農業振興地域及び農用地区域の指定並びにこれらの変更は、農業計画の変更と一体として、又はこれと密接に関連付けて行われるものとし、市町村は、これらを行おうとするときは、あらかじめ都道府県と協議するとともに、関係機関及び関係住民の意見を聴かなければならない。

 農地の転用に係る許可又は届出その他農地の権利移動及び利用調整に関する措置は、第三十九条の規定に従い行われるものとし、その際、当該農地が農業振興地域又は農用地区域に属するかどうか並びに当該区域における農業の位置付け及び役割を示す農業計画の内容が、当該措置の判断に当たって重要な考慮要素とされなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業振興地域等のゾーニングを通じて、農地の保全及び効率的な利用を図ることを目的として新たに区域を指定する制度を設ける場合においては、前各項に規定する農業振興地域及び農用地区域その他これらに準ずる土地利用区分との重複及び併存による混乱が生ずることのないよう、当該制度の趣旨及び目的に照らし、可能な限りこれらの土地利用区分に統合し、又はこれらを活用する方向で制度設計を行うものとする。

 この法律の施行の際現に農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)第二条第一項に規定する農業振興地域として指定されている区域及び同法第七条第一項に規定する農用地区域として指定されている区域は、附則で定めるところにより、それぞれ前各項に規定する農業振興地域及び農用地区域として指定されたものとみなされるものとし、これらの区域の指定及び変更に係る手続その他必要な経過措置については、同附則の定めるところによる。

 農用地区域内の農地について第三十九条に規定する転用の許可又は届出に係る判断を行うに当たっては、当該農用地区域の指定又は変更が適法に行われたことを確認しなければならない。

(違反行為に対する勧告等)

第四十一条 都道府県知事又は市町村長は、第三十七条第二項若しくは第三項の規定に違反して農地の権利移動を行った者又は第三十九条第二項若しくは第三項の規定に違反して農地の転用を行った者があると認めるときは、当該者に対し、期限を定めて、当該行為の停止、是正その他必要な措置をとるべきことを勧告することができる。

 前項の勧告に従わない者があるときは、都道府県知事又は市町村長は、当該者に対し、工事その他の行為の停止を命ずることができる。

 都道府県知事又は市町村長は、前二項の措置を講ずるに当たり、第二十七条に規定する農地管理機関及び農業委員会法に基づく農業委員会と連携し、必要な調査、資料の提出の求めその他の措置を行うものとする。

(許可の取消し及び原状回復命令等)

第四十二条 都道府県知事又は市町村長は、第三十九条第二項の許可を受けないで農地の転用をした者、同条第三項の届出をせずに農地の転用をした者その他政令で定める違反転用者等があると認めるときは、当該違反転用者等に対し、期限を定めて、原状回復その他農地としての利用の確保に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

 都道府県知事又は市町村長は、第三十九条第二項の許可を受けた者が当該許可に付した条件に違反したと認めるときは、当該許可を取り消し、又は当該条件を変更し、若しくは新たな条件を付することができる。

 都道府県知事又は市町村長は、前二項の処分を行おうとするときは、第二十七条に規定する農地管理機関及び農業委員会法に基づく農業委員会の意見を聴くものとする。ただし、緊急を要する場合は、この限りでない。

 第一項の命令及び第二項の処分に関し必要な事項は、政令で定める。

以下、条番号繰り下げ

(都市近郊農地及び市民農園)

第四十一条 国及び地方公共団体は、都市又はその近郊に所在する農地(以下この条において「都市近郊農地」という。)が、新鮮な農産物の供給、良好な生活環境及び景観の形成、災害時の避難空間及び延焼遮断帯としての機能その他多面的な役割を有することにかんがみ、第三十六条に規定する農地制度の基本原則並びに前条に規定する農業振興地域等のゾーニングとの整合を図りつつ、その保全及び適正な利用に必要な施策を講ずるものとする。

 この法律において「市民農園」とは、都市近郊農地その他これに準ずる土地について、主として地域住民が自ら耕作を行うことにより、農業への理解の増進、食育の推進、健康の増進及び地域コミュニティの形成並びに平時及び災害その他の非常時における食料供給連鎖の補完に資することを目的として設置される農園であって、市町村、農業経営体、農業協同組合等その他の者が開設し、又は管理するものをいう。

 都道府県及び市町村は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに都市計画法(昭和四十三年法律第百号)に基づく都市計画その他土地利用に関する計画に即し、都市近郊農地のうち農業として利用することが適当な区域を明らかにするとともに、当該区域において市民農園を含む多様な農業利用が継続されるよう、土地利用の方針及び必要な措置を定めなければならない。

 市町村は、前項の方針に基づき、市民農園の開設及び運営に関し、当該市民農園が第三十条に規定する地域小規模耕作と一体として地域の食生活の充実及び災害その他の非常時における緊急避難的な食料供給連鎖源として機能するよう配慮し、その位置、規模、利用区画、利用方法その他必要な事項を定めるとともに、農業経営体、農業協同組合等及び関係住民との協議の場を設けるよう努めなければならない。

 都市近郊農地について農地の転用に係る許可又は届出その他第三十九条に規定する措置を行うに当たっては、当該農地が市民農園として利用され、又は将来その利用が見込まれるかどうか並びに当該地域における食料供給連鎖構造及び防災上の必要性を十分に考慮しなければならない。この場合において、市民農園として利用されている農地については、相続その他政令で定めるやむを得ない事由により転用の必要が生ずる場合を除き、当該利用が継続されるよう最大限の配慮がなされるものとする。

 市民農園の開設者及び管理者は、農薬及び肥料の適正な使用並びに種苗の知的財産の保護に関する法令を遵守するとともに、利用者に対し、第三十条第五項及び第六項に規定する地域内における種子及び肥料等の融通に係る留意事項その他安全かつ適正な耕作の方法について必要な指導及び助言を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、市民農園の利用者が平時において農業に関する基礎的な知識及び技能を習得し、災害その他の非常時において農業経営体と連携して農作業の補助その他の協力を行うことができるようにするため、第三十条第七項及び第八項に規定する研修、講習会その他の人材育成の機会を、市民農園を活用して実施し、又はこれに必要な支援を行うよう努めなければならない。

 この法律の施行の際現に都市農業振興基本法(平成二十七年法律第十四号)第二条に規定する都市農業に供される農地として位置付けられている農地及び市民農園整備促進法(昭和四十八年法律第百十二号)第二条に規定する市民農園として認められている農園は、附則で定めるところにより、それぞれ前各項に規定する都市近郊農地及び市民農園として位置付けられたものとみなされるものとし、これらに係る計画、許可その他必要な経過措置については、同附則の定めるところによる。

(農業用施設及び農用地の位置付け)

第四十二条 この法律において「農業用施設」とは、主として農業経営体が農産物の生産、収穫、調製、貯蔵、出荷その他これらに付随する行為を行うために使用する施設であって、次に掲げるものをいう。

一 用水路、排水路、暗渠、ため池その他農業用用排水施設

二 農道、作業用道路その他農作業の用に供する道路

三 畜舎、飼料貯蔵施設、堆肥舎その他家畜の飼養及び畜産物の生産に係る施設

四 温室、ハウスその他施設園芸の用に供する施設

五 収穫物の調製、選別、貯蔵又は予備的な加工の用に供する倉庫その他の施設であって、当該農業経営体の農業経営に一体として供されるもの

六 前各号に掲げるもののほか、農業経営の継続的な遂行のために必要な施設であって、政令で定めるもの

 この法律において「農用地」とは、第三十六条に規定する農地及び前項各号に掲げる農業用施設の敷地その他これらと一体として農業の用に供される土地を総称するものとし、第三編に規定する農地制度及び土地利用に関する施策の対象として位置付けられるものとする。

 国及び地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニングに即し、農用地の範囲を明らかにするとともに、農地と農業用施設との機能的な一体性が損なわれることのないよう、権利の設定、転用及び災害復旧に係る手続その他の運用を行わなければならない。

 第三十九条に規定する農地の転用に係る許可又は届出その他土地利用に関する行政手続を行うに当たっては、当該土地が農業用施設の敷地又はこれと一体として利用される農用地であるかどうかに十分配慮し、当該施設の機能の喪失又は低下により周辺の農地の利用に支障を生ずることのないよう留意しなければならない。

 農業用施設及び農用地に関する基盤整備、改良及び災害復旧に係る事業は、第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧並びに第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備に関する施策と一体として実施されるものとし、これらに関し別個の計画又は認定制度を新たに設けることにより重複又は矛盾を生ずることのないよう配慮されなければならない。

(農地及び農業用施設の災害復旧)

第四十三条 国及び地方公共団体は、地震、風水害その他の自然災害又はこれに準ずる事態により農地又は第四十二条第一項各号に掲げる農業用施設(以下この条において「農地等」という。)に被害が生じ、又は生じるおそれがある場合においては、災害対策基本法その他の関係法令の定めるところにより、食料の安定供給の確保及び当該地域における農業経営の継続並びに農村社会の生活の安定に資するよう、当該農地等の災害復旧(原形への復旧及びこれと一体として行う必要な改良を含む。以下この条において同じ。)に関し必要な措置を講じなければならない。

 農地等の災害復旧は、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング、第四十一条に規定する都市近郊農地及び市民農園の位置付け並びに第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備に関する施策との整合を図りつつ、被害の態様及び当該地域の農業構造に応じ、次に掲げる措置を適切に組み合わせて行われるものとする。

一 用排水施設、農道その他の農業用施設の機能回復及び改良

二 流失、埋没その他により被害を受けた農地の原形復旧又は再配置

三 被災の状況に応じた農地の区画整理、集団化その他農業経営の再編

四 前各号に掲げるもののほか、当該地域における農業経営の再建及び防災・減災に資することが明らかである災害復旧に付随する基盤整備

 国は、農地等の災害復旧に係る事業について、財政会計法及び第十編に定めるところにより、農業特別会計その他の財政措置を通じ、地方公共団体が行う災害復旧事業に対する国庫補助、災害復旧に必要な資金の融通に係る金融支援その他必要な措置を講じなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域防災計画に即し、農地等の災害復旧に係る事業の優先度、実施区域及び実施時期その他必要な事項を定め、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等及び農業委員会その他の関係機関と連携して、当該事業を計画的かつ速やかに実施しなければならない。

 農地等の災害復旧に係る事業について、土地改良法その他の関係法令に基づき施行者の決定、負担金の賦課、換地処分その他の手続を行う場合においては、災害からの迅速な復旧の必要性に配意し、災害対策基本法その他の特例に関する法令の定めるところにより、手続の簡素化及び期間の短縮が図られるよう運用しなければならない。

 農地等の災害復旧に係る事業は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整、第四十四条に規定する遊休農地及び荒廃農地対策並びに第九十六条に規定する農地及び農村における防災・減災に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する措置を講ずるに当たり、災害発生後において農地等の災害復旧に係る契約及び入札その他の発注手続に関する事務が過度に集中することにより、現場における応急的措置及び本格復旧が遅延し、又は行政職員の負担が著しく増大することのないよう配慮しなければならない。このため、国及び地方公共団体は、財政会計法その他の関係法令の定めるところにより、農地等に係る災害復旧についての標準的な設計、仕様、単価及び工種ごとの施工メニュー並びにこれらに対応する契約方式(単価契約、包括契約その他の継続的契約を含む。)をあらかじめ整備し、災害時においてこれを活用することにより、契約及び発注に係る実務の軽減並びに災害復旧の迅速な着手が図られるよう努めなければならない。

 国は、前項に規定する標準的な設計、施工メニュー及び契約方式の整備並びに災害時における随意契約その他の特例的な契約方式の活用に関し、財政会計法の趣旨に即した指針を定めるものとする。地方公共団体は、当該指針に即しつつ地域の実情に応じて、農地等の応急復旧及び本格復旧に係る施工メニュー及び契約方式を定め、これを農業計画及び地域防災計画その他の関係計画と整合を保って運用しなければならない。この場合において、地方公共団体は、当該特例的な契約方式により締結された契約及びこれに基づく工事の内容、費用及び施工状況について、事後的な検証及び情報公開を行うとともに、監査その他のチェックの機能が十分に発揮されるよう必要な措置を講じなければならない。

(遊休農地及び荒廃農地対策)

第四十四条 国及び地方公共団体は、農地が適正に利用されることにより、食料の安定供給の確保並びに農地の有する多面的機能の十分な発揮が図られるようにするため、遊休農地及び荒廃農地(以下この条において「遊休農地等」という。)の発生の予防及び解消に関し、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整並びに第二十七条に規定する農地管理機関の活用その他必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 農地の所有者又は利用権者は、第三十八条に規定する農地の所有及び利用の制限並びに前条に規定する災害復旧に関する施策に留意しつつ、当該農地について、政令で定めるところにより、適正かつ安定的な農業の継続的営みが確保されるよう努めなければならず、正当な理由なくこれを遊休農地又は荒廃農地として放置してはならない。

 市町村は、その区域内に所在する農地の利用状況を把握するため、農地台帳その他の資料及び現地調査に基づき、政令で定める基準に従い、遊休農地等の状況に関する調査を定期的に実施し、その結果を都道府県に報告するとともに、農業計画及び地域防災計画その他の関係計画との整合を図りつつ、公表その他適切な方法により関係者に周知しなければならない。

 市町村は、前項の調査の結果、その区域内に遊休農地等が存在すると認めるときは、当該農地の所有者又は利用権者に対し、当該農地の適正な利用の回復に関し必要な助言及び指導を行うものとする。この場合において、当該所有者又は利用権者が正当な理由なく当該助言又は指導に従わないときは、市町村は、都道府県及び農地管理機関と協議の上、当該農地を第二十七条に規定する農地管理機関による権利の中間的取得又は受託の対象とするよう勧告することができる。

 都道府県は、前項の勧告に基づき又は当該都道府県の区域全体の農地利用の状況に照らし必要があると認めるときは、農地管理機関その他の関係機関と連携して、遊休農地等を第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化の対象として位置付け、当該農地について、農業経営体への利用権の設定、区画整理その他の措置を講じなければならない。

 遊休農地等のうち、地形、土壌その他の自然条件又は周辺の土地利用の状況に照らし、将来にわたり農地として利用することが著しく困難であると認められるものについては、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニングに関する見直しにおいて、森林その他の土地利用への転換の可能性を検討するとともに、必要に応じ、国土利用計画法その他の土地利用に関する法令との調整を図りつつ、当該地域における防災・減災及び環境保全に資する利用への転換が図られるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、遊休農地等の発生の予防及び解消に資するため、第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作並びに第三十二条に規定する事業承継及び相続の円滑化に関する施策と連携し、高齢化その他の事情により農業経営の継続が困難となるおそれがある農業経営体について、早期の相談体制の整備、農地管理機関による受け皿機能の拡充その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 この条に基づく遊休農地等に関する調査、勧告その他の措置は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整、第三十八条に規定する農地の所有及び利用の制限並びに第二十七条に規定する農地管理機関の業務の一環として行われるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(土地改良及び基盤整備)

第四十五条 国及び地方公共団体は、農業の生産性の向上及び経営の安定並びに農地の有する多面的機能の発揮を図るため、ほ場の区画整理、用排水施設及び農道その他の農業用施設の整備並びにこれらに付随する防災・減災に資する施設の整備(以下この条において「土地改良事業等」という。)を、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング及び第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧に関する施策と調和を保ちつつ、総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 土地改良事業等は、土地改良法その他の関係法令に基づき、農業の高度化に資する大区画化及び機械化への対応、用排水機能の高度化、農業用道路網の整備並びに気候変動への適応及び国土強靱化に資する機能の付加を一体的に図るものとして実施されるべきものであり、その施行に当たっては、当該事業の効果が当該地域の農業経営体の構造、作付体系及び流通経路の実態と整合するよう配慮しなければならない。

 土地改良事業等の施行者は、土地改良法に基づき、土地改良区、地方公共団体その他の者とされるものとし、その選定及び事業の実施に当たっては、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三十六条に規定する農地制度の基本原則を踏まえ、受益と負担の均衡、公平性及び透明性の確保並びに事業後の維持管理体制の確立に十分配意しなければならない。

3の2 土地改良事業等の工事が完了したときは、当該事業により造成された土地改良施設は、土地改良法の定めるところにより、当該事業の施行者その他法令上の管理者が引き続きこれを管理し、適正な機能の維持が図られなければならない。

3の3 土地改良区が前項の管理を行う場合において、当該管理に要する経費に充てるための賦課金その他の負担は、土地改良法の定めるところにより、受益と負担の対応関係が明確となるよう算定され、かつ、その内容が適切に説明されなければならない。

3の4 土地改良施設のうち、ダムその他のえん堤等、管理の適正を確保するために管理規程を要するものについては、土地改良法の定めるところにより、管理規程の整備その他必要な措置が講じられなければならない。

 国は、土地改良事業等のうち、国の施策として特に推進することが必要であると認められるものについては、財政会計法及び第十編に定めるところにより、農業特別会計その他の財政措置を通じて、地方公共団体及び土地改良区が行う当該事業に対し、国庫補助、長期かつ低利の資金の融通その他必要な支援を行わなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに都市計画その他の土地利用に関する計画との整合を図りつつ、その区域における土地改良事業等の実施区域、事業の種類及び優先順位その他必要な事項を定め、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、土地改良区及び農業委員会その他の関係機関と連携して、当該事業を計画的に実施しなければならない。

5の2 土地改良事業等により河川から取水する場合における河川法上の流水占用許可に基づく権利(以下この項において「水利権」という。)の取得及び帰属は、河川法その他関係法令の定めるところによるものとし、土地改良法上の「水の使用に関する権利」との混同が生じないよう整理されなければならない。この場合において、土地改良区その他の管理運転主体は、水利権の許可条件及び慣行を踏まえ、配水の透明性の確保に資する記録及び情報管理を行うものとする。

 土地改良事業等の実施に当たっては、関係農業経営体及び地域住民の意見を聴くための協議の場が設けられなければならず、その内容は、事業の必要性、事業により見込まれる効果及び負担並びに事業後の維持管理の方法について、わかりやすく説明されなければならない。あわせて、関係者の同意の取得、計画の周知及び説明その他必要な手続が、土地改良法その他関係法令の定めるところにより適正に行われなければならない。

 土地改良事業等は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整、第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化、第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧並びに第九十六条に規定する農地及び農村における防災・減災に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農業水利組合)

第四十五条の二 国及び地方公共団体は、土地改良事業等に至らない農業用水利施設の維持管理及び農業用水の取水又は配水の調整が、個人、任意の団体、土地改良区その他の者により錯綜して行われ、又はその継続が困難となっている地域において、当該水利の安定的かつ透明な運営体制を確保するため、公共組織法に基づき農林水産省及び国土交通省を主務省として設置される指定公共組織のうち、農業用水の運転及び維持管理を主たる任務とするもの(以下この条において「農業水利組合」という。)を、計画的に活用することができる。

 農業水利組合は、次に掲げる業務を中心として行うものとする。

一 農業用水利施設(ため池、用排水路、揚水機、頭首工その他農業用水の取水又は配水に供する施設をいう。以下同じ。)の維持管理、点検及び軽微な補修並びに当該施設の台帳の整備

二 農業用水の取水及び配水の調整(渇水時その他の非常時における調整を含む。)

三 前二号に掲げる業務に要する費用の算定及び負担の調整並びにその徴収に関する事務

四 取水量、配水量その他運転状況並びにゲートその他の操作の記録(以下この条において「操作ログ」という。)の整備及び保存

五 前各号に掲げるもののほか、農業用水の安定供給及び水利紛争の予防に資する業務

 農業水利組合は、前項第二号に掲げる業務を適正に行うため、利水調整に関する規程(以下この条において「利水調整規程」という。)及び毎年度の配水計画を定め、これをわかりやすい方法により公表しなければならない。

 農業水利組合は、前項の規程及び計画に基づき運転を行うに当たり、操作ログ並びに施設台帳及び点検記録を整備し、保存しなければならない。

 農業水利組合は、第二項第三号に掲げる負担の算定及び徴収に当たり、受益と負担との対応関係が明確となるよう配意するとともに、その算定の基準、予算の概要及び収支の状況その他必要な事項を公表しなければならない。

 河川法その他関係法令に基づく河川の流水の占用に係る許可その他水利権に関する手続及び権利の帰属は、当該法令の定めるところによるものとし、農業水利組合の運転及び調整に関する行為は、これらの許可又は権利と混同して解してはならない。

 土地改良区その他の農業用水利施設の管理者は、農業水利組合が第二項各号に掲げる業務を行う場合において、当該管理者が担うべき土地改良事業等の施行及び造成施設の管理に支障を生じない範囲で、運転、点検、軽微な補修その他水利運営に関する業務の全部又は一部を委託し、又は協定により分担することができる。

 都道府県は、農業水利組合の設置又は活用が必要と認められる区域について、市町村、農業委員会、土地改良区その他の関係機関と連携し、当該組合の担当区域、対象とする施設及び農業経営体の範囲、費用負担の調整の方針並びに紛争の処理に関する事項が、第四十条に規定するゾーニング及び第十五条、第十六条並びに第二十六条に規定する計画及び戦略と整合的に行われるよう、必要な調整を行うものとする。

 農業水利組合は、第二項第二号及び第三号に関し、紛争又は苦情が生じたときは、利水調整規程に定めるところにより、関係者の意見を聴取し、必要な調整を行わなければならない。この場合において、市町村又は農業委員会その他の第三者的立場にある者を関与させる仕組みが確保されなければならない。

10 農業水利組合の業務は、第四十五条に規定する土地改良事業等及び第四十三条に規定する災害復旧その他本法の施策を実施するための基盤として位置付けられるものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

11 農業水利組合に対する監督その他必要な事項は、公共組織法の定めるところによるほか、農林水産大臣及び国土交通大臣が協議して定める。

(流域管理法人)

第四十五条の三 国は、気候変動その他の要因により渇水、豪雨、土砂災害又は水質悪化等のリスクが増大する状況に鑑み、農業用水の利用の安定と河川環境の維持との調和を図るため、公共組織法に基づき農林水産省及び国土交通省を主務省として設置される指定公共組織のうち、水系又は流域を単位として、水理運用(取水、配水、貯留、放流その他の水の運用をいう。以下同じ。)の調整並びに水環境の維持に係る業務を主たる任務とするもの(以下この条において「流域管理法人」という。)を、計画的に活用しなければならない。

 流域管理法人は、次に掲げる業務を中心として行うものとする。

一 流域における農業用水の取水及び配水の広域的な調整(渇水時その他の非常時における調整を含む。)

二 農業水利組合、土地改良区、地方公共団体その他関係主体の間の水理運用に関する協定の作成支援及び調整

三 水量、水質、生態系その他水環境の維持に資する指標の把握及び必要な情報の集約並びに公表

四 水理運用に係るデータの標準化及び共有に関する基盤の整備

五 前各号に掲げるもののほか、流域における農業用水の安定供給及び水環境の維持に資する業務

 流域管理法人は、前項第一号の調整を行うに当たり、関係する河川管理者及び関係行政機関、都道府県、市町村、農業水利組合、土地改良区、農業協同組合その他の関係者と連携し、必要な協議の場を設けなければならない。

 流域管理法人は、前項の協議の場において、渇水時その他の非常時における優先順位、按分の方法、情報伝達及び操作ログの共有その他の運用ルールを、あらかじめ定め、これを公表しなければならない。

 河川法その他関係法令に基づく水利権の取得、変更又は更新その他許可に関する権限及び手続は、当該法令の定めるところによるものとし、流域管理法人は、当該権限を当然に有するものと解してはならない。ただし、流域管理法人は、関係法令の定めるところにより、許可条件の遵守及び水環境の維持に資する運用が確保されるよう、必要な協議及び調整を行うものとする。

 流域管理法人の業務は、第四十五条に規定する土地改良事業等、第四十三条に規定する災害復旧及び第九十六条に規定する防災・減災に関する施策その他本法の施策を実施するための基盤として位置付けられるものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

 流域管理法人に対する監督その他必要な事項は、公共組織法の定めるところによるほか、農林水産大臣及び国土交通大臣が協議して定める。

(土地改良区等のガバナンス)

第四十五条の四 土地改良事業等並びに第四十五条の二及び第四十五条の三に規定する水利の運転及び維持管理の実施主体(以下この条において「土地改良区等」という。)は、受益と負担の均衡、公平性及び透明性を確保し、並びに水利紛争及び管理不全を予防するため、次に掲げる事項に関する規程(以下この条において「管理運営規程」という。)を整備し、これを公表しなければならない。

一 費用負担の算定の基準及び徴収の方法

二 配水の基本ルール及び渇水時その他の非常時における調整の方法

三 施設の点検、補修及び更新の基本方針並びに資産台帳の整備

四 運転状況及び操作に関する記録の作成及び保存の方法

五 紛争又は苦情が生じた場合の調整及び不服申立ての取扱い

 土地改良区等は、管理運営規程及びこれに基づく運用の状況について、関係者が理解しやすい方法により説明するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、土地改良区等における管理運営規程の整備及び運用が適正に行われるよう、必要な助言、指導その他の支援を行うものとする。

 第四十五条に規定する土地改良事業等において、防災・減災に資する施設の整備を一体的に推進する場合であっても、運転維持管理及び責任分界は、河川管理その他関係法令に基づく枠組みとの整合に留意し、必要に応じ機能分担又は協定により明確化されなければならない。

 この条の規定は、第四十五条、第四十五条の二及び第四十五条の三に規定する施策を実施するための基盤として位置付けられるものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農地情報の整備及び公開)

第四十六条 国及び地方公共団体は、第三十六条に規定する農地制度の基本原則並びに第十四条から第十六条までに規定する農業計画の策定及び実施を的確に行うため、農地の所在、地目、地積、権利関係、利用状況、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニングその他農地の利用に関する基本的事項(以下この条において「農地情報」という。)について、地図情報と一体として正確かつ最新の状態に維持されるよう、その整備及び更新に関し必要な施策を講じなければならない。

 農地情報の整備は、不動産登記法に基づく登記情報、固定資産税に係る課税台帳、農地台帳その他の既存の台帳及び情報システムを基礎としつつ、これらの相互の整合が図られるよう、公共組織法に基づく関係行政機関及び第二十七条に規定する農地管理機関との連携の下に行われるものとする。

 国は、前二項の規定により整備される農地情報を一元的に管理するため、農地に係る地図情報及び属性情報を統合した農地情報システムを構築し、これを用いて、次に掲げる事項を行うものとする。

一 農地の権利移動及び利用調整(第三十七条)の適正な実施のために必要な情報の提供

二 農地管理機関による農地の集積及び集約化並びに遊休農地及び荒廃農地対策(第四十四条)の実施のために必要な情報の整理及び分析

三 第十四条から第十六条までに規定する農業計画並びに第四十条及び第九十六条に規定するゾーニング及び防災・減災に関する施策の立案及び評価に資する情報の提供

四 第九編に規定する調査及び統計に係る基礎情報の提供

五 前各号に掲げるもののほか、農地の適正な利用及び保全に資することが明らかであるものとして政令で定める事項

 国及び地方公共団体は、前項に規定する農地情報システムに蓄積された農地情報のうち、個人情報その他公にすることにより権利利益の侵害のおそれがあるものを除き、行政機関情報公開法その他の関係法令の定めるところにより、インターネットその他の適切な方法により公表するとともに、統合公共施設法に基づく統合公共施設その他の公の施設において住民が閲覧することができるよう配慮しなければならない。

 農地情報の整備及び公表に当たっては、個人情報の保護、地理情報の安全管理及び第三者による利用の円滑化に配意し、匿名加工情報その他の方法により、統計的な利活用が可能となるよう努めなければならない。

 前各項に規定する農地情報は、不動産登記その他権利の得喪及び変更の効力を定める法令に基づく公示の制度に代わるものではなく、これらの制度を補完するものとして位置付けられるべきものであって、当該農地情報の記載のみにより権利関係の成否又は優劣が最終的に確定されるものと解してはならない。

 農地情報の整備及び公表に関する施策は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整、第四十四条に規定する遊休農地及び荒廃農地対策並びに第九編に規定する調査、統計及び情報に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農地に関する紛争の予防及び解決)

第四十七条 国及び地方公共団体は、第三十六条に規定する農地制度の基本原則並びに第三十七条から第三十九条まで及び第四十条から第四十四条までに規定する施策が適正かつ円滑に実施されるようにするため、農地の権利関係、境界、利用条件、用排水、農道その他農業用施設の利用又は農地の周辺環境に関して生ずる紛争(以下この条において「農地紛争」という。)の予防及び解決に資する施策を総合的に講じなければならない。

 農地紛争の予防は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整並びに第四十六条に規定する農地情報の整備及び公開と一体として行われるべきものであり、国及び地方公共団体は、農地の権利関係及び境界に関する情報の明確化、契約書その他の書面の様式の標準化並びに農業経営体及び地域住民に対する説明及び相談の機会の確保に努めなければならない。

 市町村の機関として置かれる農業委員会は、農地紛争の未然防止及び早期解決に資するため、農地に関する相談窓口を設け、当事者からの相談に応じ、必要があると認めるときは、関係者の意見を聴き、事実関係を整理し、当事者間の話合いによる解決を促進するものとする。この場合において、農業委員会は、第二十七条に規定する農地管理機関、第二十八条に規定する農業協同組合等その他の関係機関と連携するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農地紛争の性質に応じ、民事調停その他裁判所における手続の活用を促進するとともに、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)その他の関係法令の定めるところにより、農地に関する専門的知見を有する者によるあっせん、調停その他の裁判外紛争解決手続(以下この条において「農地紛争解決手続」という。)の整備及び利用の促進に努めなければならない。

 農地紛争解決手続においては、農地情報システム(第四十六条第三項)に蓄積された農地情報が、個人情報の保護及び当事者の正当な利益の保護に配慮しつつ、境界及び利用状況等の確認のために適切に活用されるようにしなければならない。

 国及び地方公共団体は、農地紛争の予防及び解決に係る施策を講ずるに当たり、小規模農業経営体、地域小規模耕作に従事する者、女性、若者、新規参入者及び外国人その他の者が、情報及び相談の機会並びに農地紛争解決手続に円滑にアクセスすることができるよう、必要な情報提供、通訳その他の支援に努めなければならない。

 前各項に規定する農地紛争の予防及び解決に関する施策は、第三十七条に規定する農地の権利移動及び利用調整、第四十四条に規定する遊休農地及び荒廃農地対策並びに第九編に規定する調査、統計及び情報に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農地と環境及び景観との調和)

第四十八条 農地の利用及び保全は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三十六条に規定する農地制度の基本原則に照らし、環境基本法(平成五年法律第九十一号)に基づく環境の保全及び創造並びに景観法(平成十六年法律第百十号)に基づく良好な景観の形成との調和が図られるよう行われなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに都市計画法(昭和四十三年法律第百号)に基づく都市計画及び景観法に基づく景観計画その他の計画を定め、又は実施するに当たり、農地が有する土壌及び水環境の保全機能、生物多様性の維持機能並びに農村景観の形成機能が適切に発揮されるよう配慮しなければならない。

 農業経営体その他農地の所有者又は利用権者は、その営む農業の内容及び当該農地の所在する地域の実情に応じ、適切な輪作及び耕起の方法の選択、農薬及び肥料の適正な使用並びに畦畔、用排水路、屋敷林、農地周辺の樹林帯その他伝統的な農村景観を構成する要素の保全その他環境負荷の低減及び景観の維持に資する管理に努めなければならない。

 地方公共団体は、景観法その他の関係法令に基づき定める景観計画、景観地区その他の区域の指定に当たり、農地が集団的に存在し、当該地域の歴史的、文化的又は自然的特性を示す農村景観が形成されている区域について、その特性が持続的に維持されるよう、当該区域における建築物その他の工作物の形態又は色彩、広告物の表示、農地の転用その他の行為に関する方針及び基準を、農業計画との整合を図りつつ定めるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農地の利用及び管理が周辺の生活環境に与える影響に配慮しつつ、有機農業及び環境保全型農業(第七十三条)、農薬及び肥料の適正使用(第七十四条)、景観及び生物多様性の保全(第九十五条)その他第七編に規定する施策と一体として推進されるよう、必要な情報提供、人材育成及び技術支援の施策を講ずるよう努めなければならない。

 前各項に規定する農地と環境及び景観との調和に関する施策は、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング、第四十一条に規定する都市近郊農地及び市民農園の位置付け並びに第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農地に関する地方公共団体の条例)

第四十九条 地方公共団体は、この法律の目的及び第三十六条に規定する農地制度の基本原則に即し、当該地域における農地の保全、適正な利用及び農村環境の維持向上を図るため必要があると認めるときは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)その他の関係法令の定めるところにより、農地に関する条例を制定することができる。

 前項の条例は、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング、第四十一条に規定する都市近郊農地及び市民農園の位置付け並びに第四十八条に規定する農地と環境及び景観との調和に関する施策と整合を保ちつつ、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画に即して定められなければならない。

 地方公共団体が農地に関し、国の法令による規制又は助成に加えて、独自に許可、届出その他の行為規制若しくは支援措置を条例により定める場合においては、当該規制又は支援措置が、農地の権利移動及び利用調整(第三十七条)、農地の所有及び利用の制限(第三十八条)、農地転用の許可及び届出(第三十九条)並びに遊休農地及び荒廃農地対策(第四十四条)に関する国の制度の趣旨を損なうことがなく、かつ、農業経営体及び地域住民に対して過度の負担とならないよう配慮されなければならない。

 地方公共団体は、第一項の条例に基づき、農地の保全区域、景観形成区域その他農地及びその周辺環境に関する区域を定め、又は行為の制限若しくは助成の基準を定めようとするときは、あらかじめ農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、農業委員会その他の関係機関及び関係住民の意見を聴くよう努めるものとし、これらの関係者との協議を通じて、当該区域及び基準が地域の農業構造及び生活環境に適合したものとなるよう配慮しなければならない。

 農地に関する条例に基づく計画、方針その他これに準ずる文書は、当該地方公共団体の定める農業計画又はこれと一体として策定されるべきものであり、別個独立の農業計画若しくは認定制度として重複して設けることにより、農業経営体及び関係機関の事務負担を不当に増加させることのないようにしなければならない。

 前各項に規定する農地に関する条例は、第五十条に規定する他の土地関係法令との関係を踏まえ、都市計画法、国土利用計画法、森林法その他の土地利用に関する法令との調整が図られるように運用されなければならない。

 国は、第一項の規定に基づき制定され、及び運用されている農地に関する条例並びにこれに基づく施策の状況について、必要な情報の収集及び分析を行い、その結果に基づき、この法律及びこれに基づく政令その他の関係法令に定める制度が地域の実情に即したものとなるよう、必要に応じて当該制度の見直しその他の措置を講ずるよう努めなければならない。

(他の土地関係法令との関係)

第五十条 この法律に基づく農地の保全、利用及び整備に関する規定は、土地基本法(平成元年法律第八十四号)、国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)その他の国土及び土地利用に関する法令の定めるところに即し、これらとの調和を保ちつつ適用されなければならない。

 農地について、都市計画法に基づく用途地域、都市計画施設その他の都市計画上の区域又は施設の指定がある場合においては、第三十九条に規定する農地転用の許可及び届出並びに第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニングは、これらの指定との整合を図りつつ運用されなければならない。この場合において、農業振興地域その他農地に関する区域の指定は、当該都市計画の変更を伴うことなく、可能な限りこれと両立するよう行われるものとする。

 農地に隣接し、又はこれと一体として利用される土地について、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)、自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)、河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)その他の土地利用に関する法令に基づき区域の指定又は行為の制限が行われているときは、第三十六条に規定する農地制度の基本原則及び第三十八条に規定する農地の所有及び利用の制限は、これらの法令に基づく規制を緩和し、又はこれと抵触するものとして解してはならない。

 農地を、道路、河川施設その他公共の用に供する施設又は防災若しくは環境保全のための施設として利用することを目的として転用する場合においては、第三十九条に規定する農地転用の許可又は届出に係る手続は、道路法、河川法その他の関係法令に基づく許可、認可その他の手続と一体として運用されるよう配慮されなければならない。この場合において、当該他の法令に基づく手続の一部をもって、当該農地転用に関する手続の一部とみなす特例その他の調整については、政令で定めるところによる。

 国及び地方公共団体は、農地に関し、この法律及び他の土地関係法令に基づき区域の指定、計画の策定又は行為の規制若しくは助成を行うに当たっては、農業経営体、地域住民その他の関係者の事務負担を不当に増加させることのないよう配慮し、同一の趣旨を有する区域及び計画が重複して設けられることのないようにしなければならない。

 国は、この法律に基づく農地制度及び土地利用に関する施策と、前各項に規定する土地関係法令に基づく施策との調整を図るため、公共組織法に基づき関係行政機関相互の連絡調整の体制を整備するとともに、第四十九条第七項に規定する地方公共団体の条例及びその運用状況を踏まえ、必要に応じ、この法律及びこれに基づく政令その他の関係法令に定める制度の見直しその他の措置を講ずるよう努めなければならない。

(農業経営安定の基本方針)

第五十一条 国及び地方公共団体は、農業経営が、自然条件に大きく依存し、国内外の需給及び価格の変動その他の事情により収入が著しく変動し得るものであることにかんがみ、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第二十一条に規定する農業構造改革の基本方針に即し、農業経営体が自立性及び創意工夫を発揮しつつ、その経営の継続及び発展に必要な所得並びに資金繰りの安定が確保されるよう、農業経営の安定に関する施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 この法律において「農業経営の安定」とは、農業経営体が、通常の経営努力及び合理的な農業安定対策を行うことにより、世代を通じて農業を継続し得る程度の所得の水準及び資金繰りの見通しが確保されるとともに、自然災害、価格及び収量の変動その他の予見し難い事態が生じた場合においても、当該農業経営体が急激な経営の破綻に至ることなく、その再建又は再編の機会が確保されている状態をいう。

 農業経営の安定に関する施策は、次に掲げる各種のリスクを対象として、相互に重複し又は欠落することのないよう体系的に構成されなければならない。

一 農産物の価格及び収量の変動並びに為替その他の要因に起因する収入の変動に係るリスク

二 自然災害、家畜の疾病、植物の病害虫その他の外的要因に起因する生産の停滞又は停止に係るリスク

三 機械及び施設への投資負担、資金繰り及び債務返済に係るリスク

四 事業承継、経営体の再編及び退出その他農業経営体の組織及び構造に係るリスク

 前項に規定する施策は、農業経営体による自助的な備え(内部留保、民間保険の活用その他の自主的な農業安定対策)を基礎としつつ、地域における相互扶助(農業協同組合等による共済その他の相互扶助の仕組み)及び国及び地方公共団体による公的な支援(公的保険及び共済、経営所得安定対策、資金繰り支援、税制上の措置、事業再編及び再チャレンジ支援その他の公的セーフティネット)を適切に組み合わせる三層構造として設計されなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業経営の安定に関する施策を講ずるに当たり、第二編及び第三編に規定する農業構造改革及び農地制度に関する施策並びに第七編に規定する環境、資源及び農業インフラに関する施策との整合を図り、農業経営体の規模拡大、技術革新及び生産性の向上の意欲を損なうことなく、必要なセーフティネットが確保されるよう配慮しなければならない。

 農業経営の安定に関する施策は、農産物の価格及び所得の安定を図るとともに、消費者の利益及び財政負担との均衡に配意しつつ、第九編に規定する調査、統計及び情報に基づき、その効果が継続的に検証され、必要に応じて見直されるものとする。この場合において、国は、第十編に規定する農業財政及び特別会計に関する施策と併せて、当該施策の中長期的な持続可能性の確保に努めなければならない。

(経営安定対策の体系)

第五十二条 この法律において「経営安定対策」とは、前条第二項に規定する農業経営の安定を図るため、国及び地方公共団体が、農業経営体の自助的な取組及び地域における相互扶助を前提として講ずる、公的保険及び共済、価格及び所得の安定に資する措置、資金繰り及び投資負担の平準化に関する措置、自然災害その他の事由に係るセーフティネットその他の施策の総体をいう。

 経営安定対策は、主として次に掲げる類型により構成されるものとし、その詳細は、第五十三条から第六十五条までに定めるところによる。

一 自然災害、家畜の疾病、植物の病害虫その他の事由により生ずる収量の減少又は農業資産の損壊に伴う損失を補てんする農業保険及び共済に関する措置

二 農産物の価格及び収入の変動に伴う所得の変動を平準化するための価格及び所得の安定に関する措置

三 機械及び施設への投資並びに運転資金に係る資金繰り及び債務返済の負担を平準化するための資金、信用保証及び税制上の措置

四 地震、風水害その他の自然災害又はこれに準ずる事態が生じた場合における、農業経営の継続及び再建のための特例的な資金、交付金その他のセーフティネットに関する措置

五 農業経営体に対する経営診断、経営改善計画の策定支援、六次産業化その他の多角化の支援並びに事業再編及び退出後の再チャレンジ支援に関する措置

六 前各号に掲げるもののほか、農業経営の安定を図るために特に必要な措置であって、この法律又は他の法律において明示的に位置付けられるもの

 国及び地方公共団体は、経営安定対策を設計し、又は実施するに当たり、前項各号に掲げる類型ごとに、その対象とするリスク、適用対象となる農業経営体の範囲、負担と給付の関係及び他の経営安定対策との関係が明確に整理されるよう配慮し、同一の目的及び対象に係る施策が重複し、又は過度に複雑な仕組みとなることのないよう努めなければならない。

 新たに経営安定対策を創設し、又は既存の経営安定対策を改廃する場合においては、その位置付け及び制度設計について、前二項に規定する経営安定対策全体の体系との関係が明らかにされなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、品目、地域又は経営形態ごとに計画又は認定を要件とする制度が過度に細分化され、又は乱立することのないよう特に配慮しなければならない。

 経営安定対策に要する経費に係る財政上の措置は、財政会計法及び第十編に定めるところにより講ぜられるものとし、その検証及び見直しは、第九編に規定する調査、統計及び情報に基づき、農業経営の構造及び国際的な需給・貿易の動向を踏まえて行われなければならない。

(農業保険及び共済制度)

第五十三条 国は、第五十一条及び第五十二条に規定する農業経営の安定の基本方針並びに経営安定対策の体系に基づき、自然災害、家畜の疾病、植物の病害虫その他農業の営みに内在するリスクにより生ずる収量の減少又は農業資産の損壊に伴う損失を補てんするため、農業保険及び共済に関する制度(以下この条において「農業保険等」という。)を整備し、及び実施しなければならない。

 農業保険等は、おおむね次に掲げる類型により構成されるものとする。

一 一定の農作物又は家畜等を対象として、その収量の減少若しくは喪失又は家畜の死亡その他これに準ずる事由により生ずる損失を補てんする制度

二 農業経営体ごとの年間の農業収入の減少に着目して、その一定割合を下回る損失を補てんする制度

三 農業用施設、農業機械その他農業の用に供される資産の毀損又は滅失により生ずる損失を補てんする制度であって、災害その他の事由により農業経営の継続に支障が生ずることを防止することを目的とするもの

 農業保険等は、農業経営体の相互扶助の理念に基づく共済方式及び保険数理に基づく保険方式を適切に組み合わせて構成されるものとし、その保険料又は共済掛金の水準、給付又は共済金の算定方法その他制度の基本的事項は、農業経営体の自助努力を損なうことなく、かつ財政の健全性及び制度の持続可能性が確保されるよう定められなければならない。

 農業保険等の実施主体は、公共組織法に基づき農業保険等を主たる任務とする指定公共組織として設置される法人、地方公共団体又は政令で定める民間保険会社その他の法人とし、その具体的な区分及び役割分担は、政令で定めるところにより、農業経営体に対するサービスの提供が地域に偏在することのないよう配慮して定められなければならない。

 農業保険等のうち、全国的な再保険、損失の平準化その他制度全体の安定的運営に資する機能については、国が財政会計法及び第十編に定めるところにより、再保険への引受け、準備金の積立てその他必要な措置を講ずるものとする。

 国及び地方公共団体は、農業保険等を設計し、又は実施するに当たり、対象とするリスク及び給付の内容が第五十二条第二項各号に掲げる他の経営安定対策と明確に区別されるよう配慮し、同一の損失について重複して補てんが行われ、又は農業経営体に過度の負担を課することとならないよう努めなければならない。

 農業保険等の種類、加入の方法、保険料又は共済掛金の算定及び負担の方法、給付又は共済金の支払の要件及び内容、実施主体の指定基準その他農業保険等の実施に必要な事項は、前各項の趣旨及び第五十一条から第五十二条までの規定に即し、政令で定める基準に従い農林水産省令で定めるものとする。この場合において、新たな計画又は認定制度を創設することをもって加入を条件とするなど、制度の趣旨及び経営安定対策全体の体系を不必要に複雑化するものと解してはならない。

(価格及び所得安定制度)

第五十四条 国は、第五十一条及び第五十二条に規定する農業経営の安定の基本方針並びに経営安定対策の体系に基づき、農産物の価格及び農業経営体の所得が、国内外の需給の変動、為替相場の変動その他の事由により過度に変動することにより、食料の安定供給及び農業経営の継続に支障が生ずることのないよう、価格及び所得安定に関する制度(以下この条において「価格・所得安定制度」という。)を整備し、及び実施しなければならない。

 価格・所得安定制度は、おおむね次に掲げる類型により構成されるものとし、その具体的な内容は、対象とする農産物の性質及び市場構造並びに国際的な約束その他の事情を勘案して定められなければならない。

一 一定の農産物につき、その卸売価格等が平常時の水準から著しく乖離した場合において、当該価格の変動幅を緩和することを目的として行われる、買入れ、売渡し、在庫の積増し又は放出その他の市場介入及び需給調整に関する措置

二 一定の農産物又は農業経営体につき、実際に得られた販売収入が、標準的な生産条件を前提として算定される基準収入の水準を著しく下回った場合において、その差額の一部を補てんすることを目的として行われる、いわゆる所得補償型の交付金その他の給付に関する措置

三 中山間地域その他生産条件が不利な地域における農業経営体、環境保全型農業に取り組む農業経営体その他政令で定める類型に属する農業経営体につき、その有する公益的機能に着目して行われる、面積、戸数その他客観的な指標に基づく定額的な支払に関する措置

四 前各号に掲げるもののほか、農産物の価格及び農業経営体の所得の過度の変動を緩和することにより、食料の安定供給及び農業経営の継続を図ることを主たる目的とする措置であって、第五十二条及び第五十三条に規定する経営安定対策及び農業保険等と区別して運用されるもの

 価格・所得安定制度は、農産物の価格形成が、原則として市場における需給に委ねられるべきものであることに配意し、過度の変動の緩和及び急激な収入の減少の緩和に必要な最小限度の範囲において講じられるものとし、特定の農産物又は特定の農業経営体に対する恒常的かつ過度の保護を目的とするものとして運用してはならない。

 価格・所得安定制度に基づく交付金その他の給付は、その算定方法、支払の要件及び水準が、農業経営体の生産意欲及び構造の改善を損なうことのないよう配慮されるとともに、第五十三条に規定する農業保険等その他の経営安定対策と重複して同一の損失を補てんすることとならないよう、制度間の役割分担が明確にされなければならない。

 国及び地方公共団体は、価格・所得安定制度を設計し、又は実施するに当たり、国内外の需給及び価格の動向、為替相場、輸出入に係る政策その他の事情を継続的に把握するとともに、第二編に規定する農業構造の改革及び担い手に関する施策並びに第六編に規定する流通、加工及び需給に関する施策と一体的に運用するよう努めなければならない。

 価格・所得安定制度の対象とする農産物の範囲、対象とする農業経営体の類型、前二項に規定する給付の水準の設定に関する基本的な考え方、費用負担の枠組みその他価格・所得安定制度の実施に必要な事項は、前各項の趣旨及び第五十一条から第五十三条までの規定に即し、政令で定める基準に従い農林水産省令で定めるものとする。この場合において、個別の価格・所得安定制度ごとに新たな計画又は認定制度を乱立させることにより、農業経営体及び関係機関に過度の事務負担を課することとならないよう配慮しなければならない。

(市場観測及び発動基準の明確化)

第五十四条の二 国は、価格・所得安定制度及びこれと一体として講ずる経営安定対策の適切な運用を確保するため、国内外の需給、価格、生産費、在庫、輸入動向その他必要な指標について、継続的に把握し、分析し、及び公表する体制を整備しなければならない。

 国は、前項の指標に基づき、価格・所得安定制度その他の給付、補てん、融資又は臨時措置の発動条件を、恣意性を排した形で定め、これを公表するものとする。

 国は、前二項の実施に当たり、農業者等の事務負担が過重とならないよう、既存の統計、取引データその他の情報の活用並びに申請手続の簡素化を図らなければならない。

(投資負担及び資金繰りの平準化)

第五十五条 国は、農業経営体が機械、施設、情報通信技術その他の生産資本への集中的な投資を行う場合において、その投資負担及び資金繰りが作況、価格、為替相場その他の変動により過度に不安定となることが、農業経営の継続及び農業構造の改善を阻害する要因となり得ることにかんがみ、当該投資負担及び資金繰りを平準化することを目的とする制度(以下この条において「投資・資金繰り平準化制度」という。)を整備し、及び実施しなければならない。

 投資・資金繰り平準化制度は、おおむね次に掲げる措置を適切に組み合わせて構成されるものとし、その具体的な内容は、農業経営体の規模、経営内容及び所在する地域の実情並びに第十編に規定する農業財政及び特別会計に関する施策との整合を図りつつ定められなければならない。

一 機械、施設その他の減価償却資産への投資に必要な資金について、その償却期間及び収益の発現時期を勘案した長期かつ低利の融通並びに元本及び利息の据置きその他の償還条件の適切な設定に関する措置

二 収穫期又は補助金その他の給付の支払時期と、資材費、労賃その他の支払時期とのずれにより生ずる一時的な資金不足を緩和するために行われる、つなぎ資金その他運転資金の融通に関する措置

三 複数の農業経営体による機械、施設その他の共同利用又はリースの活用を促進することにより、一戸当たりの投資負担を軽減することを目的とする措置

四 前各号に掲げるもののほか、農業経営体の投資負担及び資金繰りの平準化に資することが明らかであり、第五十一条から第五十四条までに規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策と重複しないよう設計される措置

 国は、前項各号に掲げる措置を講ずるに当たり、農業特別会計その他の財政資源の活用及び政策金融機関による制度資金の供給を通じて、農業経営体の信用力及び担保能力に過度に依存することなく、実際の事業内容及び将来の収益見通しに応じた資金の供給が行われるようにしなければならない。

 地方公共団体は、前二項の趣旨に即し、地域の農業構造及び金融の実情に応じ、利子補給、保証料の一部負担その他の補完的な措置を講ずるよう努めるとともに、金融機関、農業協同組合等及び第二十七条の二に規定する農業経営支援機関と連携して、農業経営体の資金繰りの状況を把握し、必要な助言及び情報提供を行うよう努めなければならない。

 投資・資金繰り平準化制度に基づく資金の供給及びこれに付随する支援は、第三編に規定する農地制度、第二編に規定する農業構造の改革及び担い手に関する施策並びに第六十一条及び第六十二条に規定する金融及び信用保証並びに税制上の措置と一体として運用されなければならず、特定の農業経営体に対し、その経営の合理化及び再編を著しく阻害する恒常的な依存状態を生じさせるものとして運用してはならない。

 投資・資金繰り平準化制度は、前各項に規定する趣旨に反し、個々の資金ごとに新たな計画又は認定制度を乱立させることにより、農業経営体及び関係機関に過度の事務負担を課することとならないよう設計されなければならず、その具体的な基準及び手続は、第百十九条から第百二十一条までに規定する予算の編成及び執行並びに指定公共組織等への委託に関する規定との整合の下に、政令で定めるところにより定められるものとする。

(登録型支払及び前払・後精算)

第五十五条の二 国は、価格・所得安定制度その他の経営安定対策に係る給付又は補てん(以下この条において「給付等」という。)について、申請及び審査の反復に伴う負担を軽減するため、農業経営体の登録に基づく手続(以下この条において「登録型手続」という。)を整備するものとする。

 登録型手続においては、農業経営体の基本情報及び対象となる生産又は販売の態様をあらかじめ登録し、当該登録に基づき、一定期間における実績の報告により給付等を行うことができる。

 国は、給付等のうち、精算を要する性質を有するものについて、資金繰りの平準化を図る観点から、政策金融その他の手段により前払を行い、後日、確定額により精算する仕組みを整備することができる。

 前項の場合において、国は、農業経営体の同意を得て、前払に係る債務と給付等の確定額との相殺その他必要な調整を行うことができる。

 国は、前三項の仕組みを整備するに当たり、利子補給その他の措置を講ずる場合には、その対象、要件及び上限を明確にし、モラルハザードの防止及び財政規律の確保に配意しなければならない。

(自然災害等に対するセーフティネット)

第五十六条 国は、地震、津波、風水害、火山噴火その他の自然災害又はこれらに準ずる異常気象その他の事態(以下この条において「自然災害等」という。)により、農地、農業用施設又は農業経営体の生産活動若しくは販売活動に著しい支障が生じ、若しくは生じるおそれがある場合には、当該農業経営体の経営の継続及び地域の食料供給連鎖の維持が危殆に瀕することとなり得ることにかんがみ、第五十一条から第五十五条までに規定する施策と相まって機能する自然災害等に対するセーフティネット(以下この条において「災害セーフティネット」という。)を整備し、及び実施しなければならない。

 災害セーフティネットは、第三編に規定する農地制度及び土地利用、第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧、第五十三条に規定する農業保険及び共済制度並びに第五十四条に規定する価格及び所得安定制度と重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的とするものではなく、これらの施策によりなお吸収し難い自然災害等の影響に対し、経営の継続に必要な資金繰り及び生活の安定を暫定的に補完するものとして位置付けられなければならない。

 前項の趣旨に基づき、災害セーフティネットは、おおむね次に掲げる措置を適切に組み合わせて構成されるものとし、その具体的な内容は、災害対策基本法その他の関係法令との整合を図りつつ、政令で定めるところにより定められるものとする。

一 自然災害等により一時的に収入が減少し、又は支出が増加した農業経営体に対し、当該減少又は増加の程度に応じて必要な資金を円滑に融通するための無利子又は低利の資金、償還猶予その他資金繰りに係る特例に関する措置

二 農業保険及び共済制度において填補し得ない部分のうち、特に中小規模の農業経営体にとって経営の継続上重大な影響を及ぼすと認められる部分について、予算の範囲内で行う交付金その他の給付に関する措置

三 自然災害等に伴い一時的に租税その他の公課の納付が著しく困難となった農業経営体に対し、その納付期限の延長又は分割納付その他の負担の平準化に関する措置

四 前各号に掲げるもののほか、自然災害等からの農業経営の早期回復及び再建に資することが明らかであり、第五十三条及び第五十四条に規定する制度と一体として設計される措置

 国及び地方公共団体は、災害セーフティネットに係る措置を講ずるに当たり、自然災害等の発生後に個々の農業経営体が複数の申請及び審査を繰り返し行うことを余儀なくされることにより、当該農業経営体の負担が過度となることのないよう配慮するとともに、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等及び農業委員会その他の関係機関との連携の下に、被害状況の把握、支援メニューの周知及び手続の簡素化のための一体的な窓口の整備その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 災害セーフティネットに基づく措置は、自然災害等からの回復に要する相当の期間に限り、農業経営体の経営の継続及び再建を支援するために行われるべきものであり、特定の農業経営体に対し、その経営の合理化及び構造改善を著しく阻害する恒常的な依存状態を生じさせるものとして運用してはならない。

(危機時の臨時措置の順序と時限)

第五十六条の二 国は、自然災害、疾病、国際的需給の急変その他の事態により、農業経営又は食料の安定供給に重大な支障が生ずるおそれがある場合には、次に掲げる順序を基本として、必要な臨時措置を講ずるものとする。

一 需給、価格及び流通の状況の迅速な把握並びに情報の公開

二 経営の継続に必要な範囲に限った時限的支援(給付、補てん、融資又は利子補給)

三 流通の円滑化、代替調達その他のオペレーション措置

 前項の臨時措置は、原則として時限措置とし、期間及び終了条件をあらかじめ定めなければならない。

(家畜疾病及び植物防疫に関する農業安定対策)

第五十七条 国は、家畜の疾病及び植物に有害な病害虫その他の有害動植物(以下この条において「家畜疾病等」という。)が国内に侵入し、又は国内においてまん延することにより、農業経営の継続、食料の安全性及び国際的な取引関係に重大な影響を及ぼし得ることにかんがみ、家畜疾病等に関する予防、監視、まん延防止及び清浄化に係る措置(現行の家畜伝染病予防及び植物防疫に関する法制に相当する措置を含む。)を、第五十一条から第五十六条までに規定する農業経営安定及び農業安定対策に関する施策と一体として、計画的かつ総合的に講じなければならない。

 前項の家畜疾病等に関する措置は、次に掲げる施策を基本として構成されるものとし、その具体的内容は、国際的な衛生及び植物検疫に関する基準並びに我が国が締結した条約その他の国際約束との整合を図りつつ、政令で定めるところにより定められるものとする。

一 家畜疾病等の発生状況及び発生のおそれに関する常時の監視、早期探知及び通報並びにこれらに必要な検査及び診断体制の整備

二 家畜疾病等の発生又はそのおそれが認められた場合における、家畜及び植物の移動制限、殺処分、廃棄、消毒その他のまん延防止措置並びにそれらの措置に伴う農業経営体への影響を緩和するための支援

三 空港、港湾その他の出入国の管理に係る地点における、家畜疾病等の侵入防止のための検査、検疫及び持込みの規制その他の国境措置

四 家畜疾病等に係る試験研究、ワクチンその他の防除資材の開発及び備蓄並びにこれらの成果の普及

五 前各号に掲げるもののほか、家畜疾病等の予防及び防除並びにその発生に伴う農業経営への影響の軽減に資することが明らかであり、第五十三条及び第五十四条に規定する制度と一体として設計される措置

 国及び地方公共団体は、前項各号に掲げる施策を実施するに当たり、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、農業委員会、獣医師会その他の関係機関との連携の下に、発生情報及び防疫措置に関する情報を迅速かつ的確に共有し、並びに農業経営体及び地域住民に対する分かりやすい周知及びリスクコミュニケーションに努めなければならない。

 農業経営体は、家畜疾病等の発生又はそのおそれを知ったときは、政令で定めるところにより、遅滞なくその旨を国又は地方公共団体の機関その他政令で定める機関に通報し、及び当該機関が講ずるまん延防止その他の措置に協力しなければならない。

 家畜疾病等に関する措置は、科学的知見に基づくリスク評価及び費用対効果の観点を踏まえつつ講じられなければならないものであり、特定の農業経営体又は地域に対し、必要な補償その他の支援措置との均衡を欠いた過度の負担を課するものとして運用してはならない。

 家畜疾病等に係る予防及び防除に関する施策は、第三編に規定する農地制度及び土地利用、第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧、第五十六条に規定する自然災害等に対するセーフティネット並びに第九十条に規定する非常時における流通及び供給の確保に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(経営継続計画の策定支援)

第五十八条 国は、地震、風水害その他の自然災害、家畜疾病等(第五十七条第一項に規定するものをいう。)、感染症のまん延、国際情勢の変化に伴う輸出入の制限、資材価格の急激な変動その他農業経営に重大な影響を及ぼし得る事態が発生し、又は発生するおそれがあることに鑑み、農業経営体が当該事態の発生時においてもその経営を可能な限り継続し得るようにするための経営継続計画(以下この条において「経営継続計画」という。)の策定及び実施に係る支援を、第五十一条から前条までに規定する農業経営安定及び農業安定対策に関する施策と一体として、計画的かつ総合的に講じなければならない。

 前項に規定する経営継続計画は、平時において、農業経営体自らが、次に掲げる事項その他政令で定める事項についてあらかじめ検討し、及び定めるものとする。

一 当該農業経営体の営む農業の種類及び所在する地域の特性に応じて想定される災害その他の事態の類型及びそれらが当該経営に及ぼし得る影響の把握に関する事項

二 当該事態の発生時において優先的に継続すべき営農活動及びこれに必要な人員、施設、設備、資材、資金その他の経営資源の確保に関する事項

三 施設、機械その他の主要な経営資源の損壊等が生じた場合の代替手段(代替施設の活用、作付の変更、委託加工その他を含む。)に関する事項

四 家畜疾病等が発生した場合における防疫措置、移動制限区域内外の経営調整その他第五十七条に規定する措置との整合に関する事項

五 従業者及びその家族その他関係者の安全の確保、連絡体制及び役割分担に関する事項

六 経営に関する重要な情報及び記録の保全、復旧並びにこれらに係る情報通信手段の確保に関する事項

七 前各号に掲げるもののほか、農業経営の継続に特に必要と認められる事項

 国及び地方公共団体は、前項に規定する経営継続計画の策定及び実施を促進するため、農業経営体の規模、営む農業の種類及び地域の実情に応じた手引、ひな形その他の参考資料の作成及び提供、研修会その他の人材育成の機会の提供並びに専門家による助言その他の技術的支援を行うよう努めなければならない。

 農業経営体は、第一項に規定する趣旨にのっとり、自らの経営の実情に応じて経営継続計画を策定し、定期的にこれを見直すよう努めるとともに、当該計画の内容が第五十一条から第五十七条までに規定する施策及び第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧並びに第九十条に規定する非常時における流通及び供給の確保に関する施策と整合的なものとなるよう配意しなければならない。

 国及び地方公共団体は、経営継続計画の策定及び実施に関し、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、農業委員会その他の関係機関と連携し、平時から当該計画に基づく訓練その他の取組が行われるよう支援するとともに、災害その他の事態の発生時には、当該計画の内容を踏まえた支援措置が円滑に講じられるよう努めなければならない。

 経営継続計画に関する施策は、農業経営体が第五十一条に規定する農業経営の安定及び第五十二条から第五十四条までに規定する経営安定対策の体系を理解し、これらを活用することを前提として、その自律的な経営判断を支援することを目的とするものであり、これと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(経営相談及び専門家による支援)

第五十九条 国は、第五十一条から前条までに規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策が、農業経営体の実情に即して適切かつ効果的に活用されるようにするため、農業経営体からの相談に一元的かつ継続的に応じる体制を整備するとともに、経営、財務、人事労務その他農業経営に係る専門的知見を有する者による支援が受けられるようにするために必要な施策を講じなければならない。

 地方公共団体は、農業改良普及事業、農業委員会及び第二十七条の二に規定する農業経営支援機関並びに農業協同組合等と連携し、農業経営体がその規模及び営む農業の種類にかかわらず、経営に関する相談、助言及び情報提供を受けることができる窓口を整備し、又はこれらの機能を有する既存の窓口を活用することにより、地域における経営相談体制の充実に努めなければならない。

 前二項に規定する経営相談及び支援は、農業経営体が、収支状況及び負債の状況の把握、経営改善及び事業再構築の方針の検討並びに第五十八条に規定する経営継続計画の策定その他の自律的な経営判断を行うことができるようにすることを目的として、経営診断、事業計画の作成、資金計画及び投資計画の立案、人材の確保及び育成並びに販路の開拓その他政令で定める事項に関する助言を含むものとする。

 国及び地方公共団体は、農業改良普及員その他の農業技術の専門家に加え、中小企業診断士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁護士その他の専門的知見を有する者が、農業経営体に対し、前項に規定する事項に関する助言その他の支援を行うことができるよう、その派遣、紹介その他必要な連携の仕組みを整備するとともに、当該支援に要する費用の一部について、財政会計法及び第十編に定めるところにより、必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならない。

 前各項に規定する経営相談及び専門家による支援は、農業経営体の利益の擁護及び健全な競争環境の確保に資するよう、公正中立かつ透明性をもって行われなければならず、特定の金融商品、資材、機械その他の商品又は役務の販売若しくは利用を不当に誘引し、又はこれに偏ったものとして行ってはならない。

 経営相談及び専門家による支援に関する施策は、第五十二条から第五十五条までに規定する経営安定対策及び第六十条に規定する多角化及び六次産業化の推進並びに第六十四条及び第六十五条に規定する農業事業の再編及び退出支援に係る施策と一体として運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(多角化及び六次産業化の推進)

第六十条 農業経営体は、その営む農業の種類及び地域の実情に応じ、複数の品目の組合せ、生産方法の高度化、観光その他のサービスの提供、再生可能エネルギーの活用その他の多角的な事業展開(以下この条において「多角化」という。)並びに農産物の加工、流通、販売その他これらに附帯する事業を一体として行うこと(以下この条において「六次産業化」という。)を通じて、収入の安定及び向上並びに地域経済の持続的な発展に寄与するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項に規定する多角化及び六次産業化が、食料の安定供給の確保、農業の多面的機能の発揮並びに農村社会の生活の安定に資するよう行われるようにするため、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画においてその推進に関する基本的方向及び必要な施策を定めるとともに、技術指導、人材育成、資金調達及び販路開拓その他の面において、農業経営体に対する必要な支援を行わなければならない。

 六次産業化は、農業経営体が主体となり、又はこれを中心とする企業その他の事業者との共同その他の方法により行われるべきものであって、当該農業経営体が生産する農産物の加工、流通、販売その他これらに附帯する事業から生ずる利益が、当該農業経営体に対し、当該農産物の供給に係る貢献に応じて適切に配分されるよう配慮して行われなければならない。

 国は、多角化及び六次産業化を推進するため、財政会計法及び第十編に定めるところにより、農業経営体又はこれと連携する事業者が行う次に掲げる取組に対し、農業特別会計その他の財源を通じて、予算の範囲内において、必要な財政上、金融上その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

一 農産物の加工施設、直売施設その他多角化及び六次産業化に必要な施設の整備

二 地域の特性及び需要を踏まえた新商品の開発、ブランド化及び品質管理の高度化

三 観光、教育、福祉その他の分野と連携した体験型サービスその他の事業の実施

四 輸出その他新たな市場開拓のためのマーケティング及び物流体制の整備

五 前各号に掲げるもののほか、多角化及び六次産業化の推進に資することが明らかである取組であって、政令で定めるもの

 多角化及び六次産業化は、消費者の利益を不当に害することなく行われなければならず、食品衛生、食品表示、知的財産の保護その他の関係法令に適合するものでなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、農産物及びその加工品に係る品質及び安全性に関する情報が的確に提供されるよう配慮しなければならない。

 多角化及び六次産業化に関する施策は、第五十二条から第五十五条までに規定する経営安定対策、第五十九条に規定する経営相談及び専門家による支援並びに第六十四条及び第六十五条に規定する農業事業の再編及び退出支援に係る施策と一体として運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

 この法律の施行の際現に農林水産物及び食品の六次産業化の推進に関する法律(平成二十二年法律第六十七号)その他六次産業化に係る特別の法律に基づき認定を受けた計画又は事業については、附則で定めるところにより、農業基本計画、都道府県農業計画又は市町村農業計画に基づく多角化及び六次産業化の取組としてみなす等の経過措置が講じられるものとする。

(金融及び信用保証の活用)

第六十一条 国及び地方公共団体は、農業経営体が、その自らの経営上の責任及び危険負担において必要な投資を行い、又は収入及び支出の時期のずれその他の事情により一時的な資金需要に対応するに当たり、当該農業経営体の経営規模、信用力及び事業内容に応じた資金が、民間金融機関その他の金融機関から適切な利率及び条件で円滑に供給されるよう、農業に係る金融及び信用保証の制度の整備に努めなければならない。

 国は、農業に係る信用保証保険その他の信用保証制度(以下この条において「農業信用保証制度」という。)及び政策金融機関による長期かつ低利の資金の供給その他の措置を通じ、前項の趣旨に沿って、農業経営体に対する融資の実行に伴う信用リスクの分散を図るとともに、第五十五条に規定する投資負担及び資金繰りの平準化に資するために必要な財政上及び金融上の措置を講じなければならない。

 農業信用保証制度を運営する機関(以下この条において「農業信用保証機関」という。)及び農業協同組合その他の金融機関は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに第二十二条に規定する農業経営体の事業計画及び経営状況を的確に把握しつつ、過度に画一的な担保の提供又は保証人の徴求に依存することなく、事業性及び将来の収益性の評価に基づき、女性、若者、新規就農者(新規就農区分の認定農業者)、小規模農業経営体及び多角化又は六次産業化に取り組む農業経営体に対する融資及び信用保証の円滑な実行に努めなければならない。

 地方公共団体は、第二項に規定する措置と相まって、農業経営体が行う設備投資、経営改善及び経営継続に必要な資金の調達が円滑に行われるようにするため、農業基本計画、都道府県農業計画又は市町村農業計画に即し、利子補給、保証料の補助その他の財政上の支援並びに融資あっせん、経営診断と連動したリスケジューリングの調整その他の金融支援を行うことができる。この場合においては、当該支援が特定の農業経営体又は特定の金融機関に対する不当な優遇となることのないよう配慮しなければならない。

 農業信用保証機関及び金融機関は、前各項に規定する措置を実施するに当たり、第五十九条に規定する経営相談及び専門家による支援並びに第六十四条及び第六十五条に規定する農業事業の再編及び退出支援に係る施策と連携し、債務の過重な累積を未然に防止するとともに、やむを得ず事業の縮小又は退出を行う農業経営体について、その生活及び再チャレンジの機会の確保に配慮しなければならない。

 金融及び信用保証に関する施策は、第五十二条から第五十五条までに規定する経営安定対策並びに第十編に規定する農業財政及び特別会計に係る施策と一体として運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(税制上の措置との連携)

第六十二条 国は、農業経営体が行う設備投資、生産性及び付加価値の向上、多角化又は六次産業化並びに第三十二条に規定する事業承継の円滑化その他農業経営の健全な発展に資する取組に対し、所得税、法人税、相続税、贈与税及び固定資産税その他の租税に関する法律の定めるところにより、特別償却、税額控除、課税の繰延べその他の税制上の措置(以下この条において「農業税制上の措置」という。)を講ずるよう努めなければならない。

 農業税制上の措置は、農業経営体の規模、経営形態及び所在する地域の実情に応じつつも、税負担の公平、中立及び簡素の原則を損なうことのないよう配慮して講じられなければならない。この場合において、特定の農業経営体又は特定の事業類型のみに対する過度の優遇措置とならないよう留意するとともに、第五十二条から第五十五条までに規定する経営安定対策及び第六十一条に規定する金融及び信用保証に関する施策との均衡が保たれるようにしなければならない。

 国は、農業基本計画において、農業税制上の措置の基本的方向、対象とする投資及び取組の範囲並びに当該措置と他の財政上及び金融上の措置との役割分担の大綱を明らかにするよう努めなければならない。

 地方公共団体は、都道府県農業計画及び市町村農業計画に即し、地方税法その他の法令の定めるところにより、固定資産税その他の地方税に係る課税標準の特例、減免その他の税制上の措置を講ずることができる。この場合においては、当該措置が、農業経営体の設備投資及び事業承継を通じた地域農業の維持及び発展に資するものであるとともに、他の産業との間の税負担の均衡を著しく害することのないよう配慮しなければならない。

 税務当局は、農林水産行政機関及び地方公共団体と連携し、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画の内容を踏まえつつ、農業税制上の措置の適用状況に関する統計及び分析を行い、その結果を第三十三条に規定する担い手施策の評価及び見直し並びに第百九条に規定する行政評価及び第三者評価に活用するよう努めなければならない。この場合において、個人情報の保護に関する法令の規定に留意しなければならない。

 農業税制上の措置に関する制度は、第五十二条から第五十五条まで及び第六十一条に規定する施策並びに第十編に規定する農業財政及び特別会計に係る施策と一体として運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(経営安定対策の評価及び見直し)

第六十三条 国は、第第五十一条から第六十二条までに規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策(以下この条において「経営安定対策」という。)について、その実施状況及び効果を継続的に把握し、農業経営体の所得の水準及び変動、負債の状況、生産性及び付加価値の向上の程度並びに農村社会の維持に与える影響その他政令で定める指標に基づき、定期的に評価を行わなければならない。

 前項の評価は、地域及び品目ごとの特性並びに農業経営体の規模、経営形態及び担い手の属性の違いに配意して行われるものとし、その際において、経営安定対策が、特定の地域又は特定の類型の農業経営体に対して過度の有利又は不利を及ぼし、又は農業経営体の自立的な経営努力を損なうこととなっていないかどうかについても検証しなければならない。

 国は、第一項の評価を行うに当たり、第百六条に規定する農業に関する調査及び統計並びに第百九条に規定する行政評価及び第三者評価の結果を活用するとともに、学識経験を有する者、農業経営体、農業協同組合等その他の関係者の意見を聴くよう努めなければならない。

 国は、第一項の評価の結果に基づき、経営安定対策の体系、対象及び手法並びに第十編に規定する農業財政及び特別会計に係る予算配分について必要な見直しを行うとともに、その概要を農業基本計画に反映させなければならない。この場合において、当該見直しが、農業経営体に対する中長期的な見通しの提示を妨げることのないよう配慮しなければならない。

 地方公共団体は、都道府県農業計画及び市町村農業計画に即し、経営安定対策に関連する地域独自の施策について、その実施状況及び効果の検証を行い、その結果を国が行う第一項の評価に提供するとともに、当該結果に基づき必要な見直しを行うよう努めなければならない。

 経営安定対策の評価及び見直しに関する制度は、第五十二条から第五十五条まで、第六十一条及び第六十二条に規定する施策並びに第百九条に規定する行政評価及び第三者評価に係る制度と一体として運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農業事業の再編及び退出支援)

第六十四条 国は、人口構造の変化、国際的な需給及び価格の変動その他農業を取り巻く経済社会の情勢の変化に対応しつつ、農業経営体が自らの判断により合併、分割、事業譲渡その他の事業再編又は農業からの退出(以下この条において「農業事業の再編等」という。)を行う場合において、当該農業事業の再編等が、食料の安定供給の確保及び農村社会の維持に資するとともに、過度の負債の累積又は無秩序な離農を招くことのないよう、産業競争力強化法その他の事業再編に関する法制との調和を図りつつ、必要な施策を講じなければならない。

 農業経営体は、農業事業の再編等を行おうとするときは、第二十二条に規定する農業経営体としての継続性及び地域農業への影響に配意し、その形態及び時期について、第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化、第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作の役割並びに第三十二条に規定する事業承継及び相続の円滑化に関する施策との整合を図りつつ、政令で定めるところにより、経営改善、事業再編又は退出に関する計画(以下この条において「再編等計画」という。)を作成するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の再編等計画に基づき農業事業の再編等を行う農業経営体に対し、農地の権利移動又は利用調整については第二十七条に規定する農地管理機関を、経営相談、資金繰り及び事業再生に関する助言については第二十七条の二に規定する農業経営支援機関その他の関係機関をそれぞれ活用しつつ、債務の条件変更、事業譲渡の仲介、雇用の維持及び労働者の再就職支援並びに税制上の措置その他必要な支援を総合的かつ一体的に講ずるよう努めなければならない。

 農業事業の再編等は、当該農業経営体の債権者、取引先及び従業者並びに地域社会に対し不当な不利益を与えることのないよう行われなければならず、その実施に当たっては、労働基準法、労働契約法その他の労働関係法令並びに独占禁止法その他の公正な競争の確保に関する法令の趣旨に反しないよう配慮されなければならない。

 国は、農業事業の再編等に関する指針を定めるに当たり、産業競争力強化法、中小企業等経営強化法、会社法、民事再生法その他の事業再生及び退出に関する法制並びに第六十五条に規定する農業事業整理に関する制度との関係を整理し、農業経営体が破綻に至る前の段階から、段階的かつ予見可能性の高い手段を選択できるよう配慮しなければならない。

 この条に基づく施策及び前各項に規定する再編等計画は、第五十一条から第五十三条まで及び第五十五条に規定する経営安定対策並びに第六十五条に規定する農業事業整理に関する制度と一体として運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農業事業整理及び破綻後の再チャレンジ支援)

第六十五条 この法律において「農業事業整理」とは、農業経営体が過大な負債その他の事情により通常の経営安定対策及び第六十四条に規定する農業事業の再編等によっては自立的な経営の継続が困難となった場合において、当該農業経営体の有する資産及び負債並びに農地その他の生産手段を整理し、再建し、又は適切に清算することにより、食料の安定供給及び農村社会の維持に資する事業若しくは経営体を可能な限り残し、又はこれを新たな担い手に承継させることを目的として行われる一連の措置をいう。

 国は、農業事業整理が、農業経営体の責任ある経営判断を前提としつつも、過度の負債の連鎖的な破綻及び無秩序な離農を防止し、かつ、経営の失敗を経験した者が再び農業に従事し、又は関連する産業においてその経験を生かすことができるようにするための「第二の出発」の機会として機能するよう、第十編に定める農業財政及び特別会計に係る措置その他必要な施策を講じなければならない。

 農業事業整理は、民事再生法、会社更生法、破産法その他事業再生及び清算に関する法令の定めるところに従いつつ、第二十四条に規定する農地及び農業経営の集積並びに集約化、第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作の役割並びに第三十八条から第四十四条までに規定する農地制度に関する施策との整合を図り、第二十七条に規定する農地管理機関及び第二十七条の二に規定する農業経営支援機関を中心として実施されなければならない。

 農業事業整理に際しては、当該農業経営体の有する農地について、農地管理機関への権利の移転、他の農業経営体への利用権の設定又は譲渡その他の措置を通じて、その効率的かつ安定的な利用が確保されるよう配慮されなければならず、これに伴う遊休農地及び荒廃農地の発生を防止するための措置が第四十四条に規定する施策と一体として講じられなければならない。

 農業事業整理に関する手続及びこれに基づく措置は、当該農業経営体の債権者及び従業者その他利害関係人の正当な権利を不当に害するものであってはならず、その実施に当たっては、労働関係法令、公正な競争の確保に関する法令及び金融に関する法令の趣旨を踏まえ、透明性の確保、公平な負担及び情報の適切な提供に配意しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業事業整理を経た者が、農業経営者、雇用労働者、指導者その他の形で農業又は関連産業に再び参画することができるよう、職業紹介、能力開発、債務整理後の資金調達支援その他の施策を講ずるよう努めるとともに、当該者に対する不当な差別的取扱いが行われることのないよう配慮しなければならない。

 農業事業整理に関し必要な計画書の作成その他の手続は、第六十四条第二項に規定する再編等計画の特別の類型として位置付けられるものとし、その名称のいかんを問わず、これと重複する新たな認定制度又は計画制度を創設することを目的として解してはならない。

(生産振興の基本方針)

第六十六条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条までに規定する基本理念に基づき、食料の安定供給の確保及び農業経営の健全な発展を図るため、農産物の生産性の向上及び生産コストの低減並びに品質の向上及び多様な需要への的確な対応を図るとともに、環境との調和及び農村社会の持続可能性の確保に配意しつつ、生産振興に関する施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 前項に規定する生産振興に関する施策は、人口及び食料需要の長期的な見通し、国際的な需給及び貿易の動向、気候変動その他の環境条件の変化並びに農業労働力の構造の変化を踏まえ、次に掲げる事項に特に留意して講じられなければならない。

一 主要品目別及び地域別の特性に応じた作付及び飼養形態の高度化並びにこれらの組合せの最適化

二 第二編に規定する農業構造の改革及び担い手に関する施策との有機的な連携の下における農業経営体の規模、形態及び労働力構成に応じた生産方式の多様化

三 第五編に規定する技術及びスマート農業に関する施策の活用によるデータに基づく経営判断の普及及び生産プロセスの高度化

四 第七編に規定する環境、資源及び農業インフラに関する施策との調和の下における環境負荷の低減及び気候変動への適応

五 第四編に規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策との整合の下における天候、価格その他の変動に強い生産構造への転換

六 各地域における産業ポートフォリオ及び農村社会の実情を踏まえた特産品の振興並びに多品目・多経路による収入構造の構築

 国は、前二項に規定する生産振興に関する施策を講ずるに当たり、第十四条から第十六条までに規定する農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画において、生産振興に係る中長期的な目標及び指標並びにこれを達成するための主要な施策を定めるものとし、当該施策が第二十一条に規定する農業構造改革の基本方針及び第五十一条に規定する農業経営安定の基本方針と整合的に実施されるよう配慮しなければならない。

 地方公共団体は、前項に規定する農業計画に即し、その区域の自然的条件及び社会経済的条件に応じた生産振興に係る目標及び施策を定めるとともに、農業管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等及び農業委員会その他の関係機関と連携して、これらの施策を地域の実情に即して実施しなければならない。

 生産振興に関する施策の策定及び実施は、前各項に規定する農業計画及びこの法律に基づき既に設けられた計画、指針その他の枠組の下で行われるべきものであり、その名称のいかんを問わず、これらと重複し又はこれらを形骸化させる新たな認定制度若しくは計画制度を創設することを目的として解してはならない。

(主要品目別振興指針)

第六十七条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び前条の規定する基本理念及び基本方針に基づき、食料の安定供給の確保及び農業経営の健全な発展を図るため、米、麦、大豆その他の穀物、牛乳及び乳製品、食肉、野菜、果樹、いも類、工芸作物その他政令で定める主要な農産物の区分ごとに、中長期的な需給の見通し、生産及び流通構造の特性並びに環境条件の変化を踏まえた振興に関する指針(以下この条において「主要品目別振興指針」という。)を定めるものとする。

 前項に規定する主要品目別振興指針は、第十四条に規定する農業基本計画の一部として又はこれと一体をなすものとして定められ、当該品目ごとに、次に掲げる事項その他政令で定める事項についての基本的方向が示されるものとする。

一 当該品目の国内外における需給及び価格の中長期的な見通し並びにこれを踏まえた生産及び流通の役割分担

二 当該品目の生産に適した地域区分及び当該地域における作付又は飼養の方針

三 品質、安全性及び環境負荷に関する目標並びにこれを達成するための技術的方策

四 第四編に規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策との連携の下における収入変動及び需給の変動に対する備え

五 第六編に規定する流通、加工、需給及び食料供給連鎖に関する施策並びに第八十五条に規定する輸出促進及びブランド戦略との整合

 主要品目別振興指針は、従前の米穀の需給及び価格の安定に関する法律その他の品目ごとに制定された需給及び価格の安定に関する法律に基づき講ぜられてきた施策を統合し、これを第十四条から第十六条までに規定する農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画の体系の下に再編する趣旨に即して定められるものとし、これらと重複し又はこれらを形骸化させる新たな計画制度又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

 国及び地方公共団体は、主要品目別振興指針に即し、第二十一条に規定する農業構造改革の基本方針及び第五十一条に規定する農業経営安定の基本方針との整合を図りつつ、当該品目の特性及び地域の実情に応じた生産振興、流通及び加工の高度化並びに需給の安定に関する施策を講じなければならない。

(主要品目別振興指針)

第六十七条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び前条の規定する基本理念及び基本方針に基づき、食料の安定供給の確保及び農業経営の健全な発展を図るため、米、麦、大豆その他の穀物、牛乳及び乳製品、食肉、野菜、果樹、いも類、工芸作物その他政令で定める主要な農産物の区分ごとに、中長期的な需給の見通し、生産及び流通構造の特性並びに環境条件の変化を踏まえた振興に関する指針(以下この条において「主要品目別振興指針」という。)を定めるものとする。

 前項に規定する主要品目別振興指針は、第十四条に規定する農業基本計画の一部として又はこれと一体をなすものとして定められ、当該品目ごとに、次に掲げる事項その他政令で定める事項についての基本的方向が示されるものとする。

一 当該品目の国内外における需給及び価格の中長期的な見通し並びにこれを踏まえた生産及び流通の役割分担

二 当該品目の生産に適した地域区分及び当該地域における作付又は飼養の方針

三 品質、安全性及び環境負荷に関する目標並びにこれを達成するための技術的方策

四 第四編に規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策との連携の下における収入変動及び需給の変動に対する備え

五 第六編に規定する流通、加工、需給及び食料供給連鎖に関する施策並びに第八十五条に規定する輸出促進及びブランド戦略との整合

 主要品目別振興指針は、従前の米穀の需給及び価格の安定に関する法律その他の品目ごとに制定された需給及び価格の安定に関する法律に基づき講ぜられてきた施策を統合し、これを第十四条から第十六条までに規定する農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画の体系の下に再編する趣旨に即して定められるものとし、これらと重複し又はこれらを形骸化させる新たな計画制度又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

 国及び地方公共団体は、主要品目別振興指針に即し、第二十一条に規定する農業構造改革の基本方針及び第五十一条に規定する農業経営安定の基本方針との整合を図りつつ、当該品目の特性及び地域の実情に応じた生産振興、流通及び加工の高度化並びに需給の安定に関する施策を講じなければならない。

(データ基盤及び情報連携)

第六十九条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び第六十六条から前条までに規定する基本方針に基づき、前条第五項に規定する農業データ(以下この条において単に「農業データ」という。)その他農業に関する情報について、その標準化、集約、分析及び共有を一体として推進し、農業経営の改善、需給及びリスクの予見可能性の向上並びに第九編に規定する調査及び統計に関する施策の高度化に資するよう、必要な施策を講じなければならない。

 国は、統計法その他の関係法令の定めるところにより、農業データについて、作物、家畜、農業経営体、農地及び農業用施設その他農業に係る対象ごとの識別コード及び地理情報、数量及び価格等の単位並びに時系列の区分が、農林水産統計をはじめとする公的統計と整合的となるよう、その標準化に努めなければならない。

 国は、前二項の趣旨に基づき、農業データを集約し、及び分析するための全国的なデータ基盤を整備し、並びに公共組織法に基づき農業データの集約及び利活用を主たる任務とする指定公共組織を指定することができる。この場合において、当該指定公共組織は、第六十八条第六項に規定する技術的基準及びガイドラインに適合したシステムの構築及び運用に努めなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画の策定及び実施並びに地域防災計画その他の関係計画に資するため、域内の農業経営体、農地、農業用施設及び流通拠点に関する情報を整備し、これを国及び前項に規定する指定公共組織と共有するとともに、当該情報を用いて地域の農業構造及び需給の状況を把握し、必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 農業データの提供及び利用は、農業経営体が当該データに係る主体としての地位を有すること並びに個人情報の保護及び営業秘密の保護が確保されるべきことに留意しつつ、その利用目的、利用範囲及び利用方法が明確かつ透明であるよう行われなければならない。

 国は、農業データの利活用が、独占禁止法その他の競争政策に関する法令に適合するよう配慮しつつ、農業経営体、農業協同組合等、農地管理機関、農業経営支援機関、食品関連事業者その他の関係者が、当該農業データを用いて生産、流通、加工及び販売の各段階における連携及び効率化を図ることができるよう、オープンデータとしての提供、匿名加工情報その他の手法による提供及び共同利用の枠組みの整備に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業データの整備及び利活用に関する施策を講ずるに当たり、災害その他の非常時における情報システムの途絶又は機能低下が農業経営の継続及び食料の供給に与える影響に配慮し、必要に応じ、紙媒体その他のアナログな手段による記録及び伝達の方法を含む代替及びバックアップ体制の整備と一体としてこれを実施しなければならない。

 前各項に規定する農業データ及び情報連携に関する施策は、第八十一条から第九十条までに規定する食料供給連鎖に関する施策並びに第百六条から第百十条までに規定する調査、統計、情報及び審議会に関する施策と有機的に連携して行われるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(研究開発及び試験研究機関の役割)

第七十条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び第六十六条から前条までに規定する基本理念及び基本方針に基づき、農業に関する基礎的研究及び応用的研究(生産技術、経営及び労務管理、流通及び加工、環境及び資源の保全並びに情報・データの利活用に係るものを含む。)並びにその成果の普及(以下「研究開発」という。)を、長期的かつ計画的に推進しなければならない。

 国は、公共組織法の定めるところにより、農林水産省の所管の下において、農業に関する研究開発を主たる任務とする指定公共組織その他の機関を整備するとともに、都道府県その他の地方公共団体が設置する農業試験場、畜産試験場その他これらに類する機関(以下これらを総称して「農業試験研究機関」という。)が、その機能に応じて相互に連携しつつ、全国的及び地域的な研究開発を分担して実施することができるよう、必要な施策を講じなければならない。

 農業試験研究機関は、前項に規定する分担の下に、次に掲げる分野に関し、それぞれの特性に応じた研究開発を行うものとする。

一 主要農産物及び地域の特産物に係る生産技術、品質向上及び安定多収に関する研究

二 スマート農業技術、農業データの利活用及び前条に規定する情報連携の高度化に資する研究

三 農業と環境との調和、気候変動への適応及び温室効果ガスの削減その他環境負荷の低減に関する研究

四 農産物の加工、流通及び食料供給連鎖全体の効率化並びに付加価値の向上に関する研究

五 農業経営、労働安全衛生及び人材育成等、農業経営体の経営管理の高度化に資する研究

六 前各号に掲げるもののほか、農業経営の安定及び地域農業の持続的な発展に資することが明らかな研究

 国及び地方公共団体は、農業試験研究機関による研究開発の成果が、第二十二条に規定する農業経営体、農業協同組合等、第二十七条に規定する農地管理機関、第二十七条の二に規定する農業経営支援機関その他の関係者において速やかかつ分かりやすい形で活用されるよう、農業改良普及事業その他の普及・指導体制の整備、実証ほ場及びパイロットファームの設置並びに研修の実施その他必要な措置を講じなければならない。

 国は、研究開発に係る資源の配分に当たり、全国的な課題に係る研究と、地域の特性に応じた課題に係る研究との適切な役割分担が図られるよう配慮するとともに、共通試験法及び第九編に規定する調査及び統計に関する施策との有機的な連携の下に、研究開発の成果の評価、指標化及び知識の体系化を推進しなければならない。

 農業試験研究機関は、研究開発を行うに当たり、大学、研究開発型企業その他の民間研究機関及び外国の研究機関との共同研究その他の連携に努めるとともに、知的財産の保護及び利活用の適正を確保しつつ、その成果の公開及び共有が進むよう配慮しなければならない。

 前各項に規定する研究開発及び農業試験研究機関に関する施策は、第六十八条及び前条に規定するスマート農業及び農業データに関する施策、第五編に規定するその他の生産振興及び技術に関する施策並びに第九編に規定する調査、統計及び審議会に関する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(品種育成及び知的財産の保護)

第七十一条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び第六十六条から前条までに規定する基本理念及び基本方針に基づき、我が国及び世界の気候、需要構造その他の変化に対応した多様な農作物の品種(在来品種を含む。以下この条において「農作物品種」という。)の育成及び利用並びに当該農作物品種に係る知的財産の保護(以下「品種育成等」という。)を、食料の安定供給の確保、農業経営の健全な発展及び生物多様性の保全に資するよう、総合的かつ一体的に推進しなければならない。

 国は、種苗法その他の知的財産に関する法令及び農作物品種の保護に関する国際約束の履行に留意しつつ、農作物品種に係る育成者権その他の権利(以下この条において「育成者権等」という。)の適切な付与、権利期間の管理及び権利行使に関する制度を整備するとともに、当該育成者権等の保護が、研究及び試験、教育及び普及並びに農業経営体による合理的な範囲での自家増殖その他の利用を不当に妨げることのないよう、権利制限及び利用許諾の在り方について必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項に規定する制度を運用するに当たり、主食作物その他国民生活に重要な影響を及ぼす農作物品種について、種子及び苗の安定的かつ適正な価格による供給が確保されるよう、公共的主体による品種育成及び種子供給体制の整備、民間事業者による種子供給との適切な役割分担並びに種子価格及び利用条件に係る情報の透明性の確保に努めなければならない。

 国は、第七十条に規定する農業試験研究機関その他の公的研究機関が、地域の気象、土壌、病害虫の発生状況その他の特性に応じた農作物品種の育成及び遺伝資源の保存・評価を計画的に行うことができるよう、研究開発に係る費用の負担、遺伝資源の収集・保存施設の整備、人材の育成その他必要な施策を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、在来品種その他地域固有の農作物品種及びこれに関連する伝統的な知識が、地域の食文化及び景観の形成並びに生物多様性の保全に資する重要な公共的資産であることにかんがみ、その実態の調査、記録及び保存並びに適切な利用の促進を図るとともに、当該在来品種等に係る知的財産の取扱いについて、地域住民その他の関係者の意向を尊重しつつ、公平かつ透明なルールの整備に努めなければならない。

 育成者権等を有する者は、その権利を行使するに当たり、第二十条第一項に規定する農業法の目的及び前各項に規定する趣旨に留意し、農業経営体による当該農作物品種の継続的な利用が不当に阻害されることのないよう配慮するとともに、種子及び苗の供給条件、ライセンス契約の内容その他重要な事項について、農業経営体に対し分かりやすい説明を行うよう努めなければならない。

 前各項に規定する品種育成等及び農作物品種に係る知的財産の保護に関する施策は、第七十三条に規定する有機農業及び環境保全型農業に関する施策、第七十八条に規定する気候変動への適応技術に関する施策並びに第九編に規定する調査及び統計に関する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農業機械及び農業用施設の標準化及び安全の確保)

第七十二条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び第六十六条から前条までに規定する基本理念及び基本方針に基づき、農業経営体が使用する農業機械及び第四十二条第一項各号に掲げる農業用施設(以下この条において「農業機械等」という。)について、その標準化及び安全の確保を図るため、技術基準の整備、情報提供その他必要な施策を総合的かつ一体的に推進しなければならない。

 国は、農業機械等の設計、構造及び性能並びに防護装置、制御装置、遠隔操作・自動走行機能、騒音及び排出ガスに係る事項その他の安全確保に関する技術的要件について、労働安全衛生に関する法令その他の関係法令との整合を図りつつ、政令及び省令で定めるところにより、標準的な仕様及び技術基準を定めるものとし、当該技術基準が、農業機械等の相互互換性、保守点検の容易性及び長期にわたる利用の継続性の確保に資するよう配慮しなければならない。

 農業機械等を製造し、又は輸入する者は、前項に規定する技術基準に適合するよう当該農業機械等の設計及び製造を行うとともに、その安全な使用方法、点検及び整備の方法並びに想定される危険及びその回避方法に関する情報を、取扱説明書その他の方法により、農業経営体その他の使用者に対し分かりやすく提供するよう努めなければならない。

 農業経営体は、その行う農作業に農業機械等を用いる場合においては、労働基準法その他の労働関係法令の趣旨に則り、当該農業機械等の構造及び性能に応じた安全な作業手順の策定、防護装置の適正な使用、定期的な点検及び整備並びに作業に従事する者に対する教育及び訓練を行うことにより、農作業に従事する者(家族その他雇用契約によらない者並びに外国人その他新規参入者を含む。)の生命及び身体の安全の確保並びに過重な労働の防止に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、高額な農業機械等であって、地域における共同利用によりその効率的な利用及び農業経営体の投資負担の平準化に資するものについて、共同利用組織の整備、リースその他の方法による導入支援、保守点検体制の整備及びオペレーターの育成その他必要な施策を講ずるよう努めなければならない。この場合においては、小規模農業経営体、新規参入者及び中山間地域その他条件不利地域に所在する農業経営体が適切に利用できるよう配慮しなければならない。

 自動走行機能その他の高度な制御機能を有する農業機械等の使用については、国は、第三十五条及び第六十八条に規定する施策との整合を図りつつ、当該機能の特性に応じた安全基準、人の監視及び介入の在り方並びに通信障害その他の不測の事態が生じた場合の停止及び安全確保に関する基準を整備し、農業経営体がおおむね一人又は少人数で作業を行う場合においても安全が確保されるよう必要な措置を講じなければならない。

 前各項に規定する農業機械等の標準化及び安全の確保に関する施策は、第七十一条に規定する品種育成等に関する施策、第七十八条に規定する気候変動への適応技術に関する施策並びに第九十六条に規定する農地及び農村における防災・減災に関する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(有機農業及び環境保全型農業の推進)

第七十三条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び第九十一条から第九十六条までに規定する基本理念及び基本方針に基づき、化学的に合成された肥料及び農薬の使用その他の環境負荷をできる限り低減しつつ、土壌の持続的な肥沃度、生物多様性及び水環境の保全に資する方法により行われる有機農業並びにこれに準ずる環境保全型農業(以下この条において「有機農業等」という。)を、食料安全保障及び農業経営の健全な発展と両立させつつ、農業生産の重要な一形態として総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 国は、有機農業等の推進に当たり、環境基本法その他の環境に関する基本法制及び気候変動の緩和及び適応に関する国の計画との整合を図りつつ、対象とする農産物の種類、地域の自然条件、農業経営体の規模及び経営形態並びに消費者の需要の動向を勘案して、中長期的な目標及びこれを達成するための指針を定め、その実施状況を定期的に点検し、必要に応じて見直しを行わなければならない。

 国及び地方公共団体は、有機農業等への転換又はその継続的実施に伴い、一定期間において収量又は所得が変動し得ることその他の経営上のリスクが存在することに配意し、第五十二条から第五十五条までに規定する経営安定対策及び金融支援その他の施策と有機農業等に関する施策とが相互に補完し合うよう、技術指導、人材育成、認証取得に要する費用の一部助成その他必要な支援を講ずるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、有機農業等が、特に中山間地域その他条件不利地域における土壌及び水資源の保全、洪水等の災害の緩和並びに景観及び生物多様性の維持に資することにかんがみ、当該地域における有機農業等の取組を、第四十五条、第四十八条及び第九十六条に規定する農業インフラ及び環境保全に関する施策と一体として位置付け、その実施に必要な支援措置を講ずるよう努めなければならない。

 国は、有機農業等により生産された農産物及びその加工品の品質及び安全性に関する基準並びにその表示に関する基準について、食品表示法、JAS法その他の関係法令との整合を図りつつ、従前の有機農業の推進に関する法律に基づく施策その他有機農産物及び環境保全型農産物に係る認証制度を整理統合し、消費者にとって分かりやすく、かつ、過度に複雑でない仕組みとなるよう必要な見直しを行うものとする。

 国及び地方公共団体は、学校給食その他の公的な給食、統合公共施設における飲食の提供その他公共調達に係る機会を活用し、有機農業等により生産された農産物及びその加工品の利用を促進するよう努めなければならない。この場合においては、第五十四条に規定する価格及び所得安定制度との整合を図り、特定の農業経営体にのみ不合理な利益又は不利益が生じることのないよう配慮しなければならない。

 有機農業等に関する施策は、全ての農業経営体について一律に特定の生産方式への転換を義務付けるものと解してはならず、地域の自然条件及び農業構造、対象とする品目並びに農業経営体の判断を尊重しつつ、総体として環境負荷の低減及び農業生産の持続可能性の向上が図られるよう、第三条に規定する基本理念に即して講じられなければならない。

 前各項に規定する有機農業等の推進に関する施策は、第六十八条に規定するスマート農業の推進に関する施策、第七十二条に規定する農業機械等の標準化及び安全の確保に関する施策並びに第九十一条から第九十六条までに規定する環境及び農業インフラに関する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農薬及び肥料の適正使用)

第七十四条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第六条、第九十一条から第九十六条まで及び第九十九条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、農業における農薬及び肥料(石灰質資材その他これに準ずる土壌改良資材を含む。以下この条において同じ。)の製造、輸入、販売及び使用が、人の健康及び生活環境の保全並びに農産物の安全性の確保に十分配慮しつつ、農業生産力の維持向上及び土壌の長期的な肥沃度の保持に資するよう行われるために必要な施策を、総合的かつ計画的に講じなければならない。

 第二十二条に規定する農業経営体は、農薬及び肥料の使用に当たり、その性状、用途、使用時期及び使用量その他の使用基準並びに周辺の生活環境及び生態系に与える影響に関する情報を十分に把握し、これらに従って適正に使用するとともに、農薬及び肥料の使用の状況について、作物ごと、圃場ごと又は区域ごとに、政令で定めるところにより記録を作成し、及び保存しなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の規定に基づく農薬及び肥料の適正使用を確保するため、農業改良普及組織、農業大学校その他の教育・研修機関、農業協同組合等及び農薬・肥料の販売事業者と連携し、農業経営体及び地域小規模耕作に従事する者に対する技術指導、講習会その他の人材育成の機会を提供するとともに、平易かつ体系的な解説資料を作成し、及び提供するよう努めなければならない。

 国は、従前の農薬取締法及び肥料取締法に基づく農薬の登録、肥料の公定規格その他の制度を整理統合し、農薬及び肥料の有効性、安全性及び品質が科学的知見に基づき継続的に評価される仕組みを維持しつつ、成分規制、使用基準及び表示制度が、食品衛生法、JAS法、環境基本法その他の関係法令と整合するよう必要な見直しを行うものとする。

 国及び地方公共団体は、農薬及び肥料の使用に伴う大気、水質及び土壌への負荷が、第二条に規定する農地の多面的機能及び第九十五条に規定する景観及び生物多様性の保全を損なうことのないよう、病害虫及び雑草の発生状況、気象条件、土壌診断の結果その他の情報に基づき、化学的手段と物理的・生物的手段を組み合わせた総合的病害虫管理及び施肥管理(以下この条において「総合的管理」という。)の導入及び普及を促進しなければならない。

 農薬及び肥料の製造者、輸入者及び販売事業者は、その取り扱う農薬及び肥料について、成分、使用方法、環境及び健康への影響並びに保管及び廃棄の方法に関する情報を、政令で定めるところにより表示し、又は説明するとともに、その品質の確保のために必要な検査及び管理を行い、偽造品又は品質の劣るものが流通することのないよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第六十八条に規定するスマート農業の推進及び第六十九条に規定するデータ基盤及び情報連携に関する施策との連携を図り、農薬及び肥料の使用状況、土壌及び水質の状態並びに農産物の残留状況に係る情報が、統計として適切に収集され、匿名性の確保その他個人の権利利益の保護に配慮しつつ、農業経営体による経営改善及び行政による施策の見直しに活用されるよう、必要な仕組みを整備しなければならない。

 前各項に規定する農薬及び肥料の適正使用に関する施策は、第五十一条から第五十五条までに規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策、第七十三条に規定する有機農業等の推進に関する施策、第七十九条に規定する品質及び安全性の管理に関する施策並びに第八十七条に規定する食品表示及びトレーサビリティに関する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(畜産・酪農及び飼料システムの高度化)

第七十五条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第四条、第六条、第九十一条から第九十六条まで及び第百条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、畜産及び酪農(以下この条において「畜産・酪農」という。)並びにこれを支える飼料の生産、流通及び利用の一体的なシステム(以下この条において「飼料システム」という。)が、家畜の保健及び福祉、人の健康及び生活環境の保全並びに環境負荷の低減に十分配慮しつつ、畜産物の安定的な供給及び中長期的な食料安全保障に資するよう行われるために必要な施策を、総合的かつ計画的に講じなければならない。

 第二十二条に規定する農業経営体のうち畜産・酪農を営むもの(以下この条において「畜産・酪農経営体」という。)は、粗飼料及び濃厚飼料の給与並びに放牧その他の飼養管理が、家畜の生理及び行動の特性に適合し、疾病の発生及び拡大の防止並びに生産性の向上に資するよう行われるよう配慮するとともに、飼料の購入、調製及び給与の状況並びに畜産物の生産量及び品質に関する情報について、政令で定めるところにより記録を作成し、及び保存しなければならない。

 国及び地方公共団体は、畜産・酪農に必要な飼料が、過度に輸入に依存することにより食料安全保障及び農業経営の安定が損なわれることのないよう、第七十二条及び第四十五条の規定に基づく農業機械及び農業基盤の整備、飼料作物及び牧草の栽培の振興、耕種農業と畜産・酪農との連携による輪作体系の確立その他の措置を講ずることにより、粗飼料を中心とする飼料自給力の向上を図らなければならない。

 国は、従前の飼料安全法に基づく飼料及び飼料添加物の安全性及び品質の確保に関する制度を整理統合し、飼料の成分、製造方法、保管及び流通に係る基準並びに表示制度が、家畜伝染病予防法その他の家畜保健衛生に関する法令、第七十四条に規定する農薬及び肥料の適正使用に関する制度並びに第七十九条に規定する品質及び安全性の管理に関する制度と整合するよう、科学的知見に基づき継続的に見直しを行うものとする。

 畜産・酪農経営体は、家畜ふん尿その他の副産物について、その発生抑制、適切な処理及び利用が、第九十二条及び第九十六条に規定する土壌及び水資源の保全並びに防災・減災に関する施策と調和するよう行われるよう配慮しなければならず、国及び地方公共団体は、バイオガス化、堆肥化その他の循環利用技術の導入及び普及に必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第六十八条に規定するスマート農業の推進及び第六十九条に規定するデータ基盤及び情報連携に関する施策との連携を図り、飼料の給与量及び給与成分、家畜の健康状態、生産性及び環境負荷に関するデータが、畜産・酪農経営体による経営改善及び第四編に規定する農業安定対策に活用されるよう、必要な仕組みを整備しなければならない。

 国及び地方公共団体は、畜産・酪農及び飼料システムに関する施策を講ずるに当たり、国際的な動物衛生及び動物福祉に関する議論の動向並びに主要国の制度及び技術水準に留意しつつ、我が国の自然条件及び農業構造に適合した形でこれらを反映させるよう努めなければならない。

 前各項に規定する畜産・酪農及び飼料システムの高度化に関する施策は、第五十一条から第五十八条までに規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策、第七十三条及び第七十四条に規定する環境保全型農業及び農薬・肥料の適正使用に関する施策、第七十九条に規定する品質及び安全性の管理に関する施策並びに第九十条に規定する非常時における流通及び供給確保に関する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農業と水産業との連携)

第七十六条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第四条、第六条、第九十一条から第九十六条まで及び第百条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、農業及び水産業(海面及び内水面における漁業及び養殖業をいう。以下同じ。)が、食料の安定供給の確保、地域経済の持続的な発展並びに海洋及び陸域の環境保全に資するよう一体的に行われるため、農業に関する施策と水産に関する施策との間の連携及び調整に必要な措置を、総合的かつ計画的に講じなければならない。

 流域、沿岸部、湖沼周辺その他農業と水産業とが同一の地域社会及び自然環境の下で営まれる地域においては、地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに水産に関する基本計画その他の関係計画が、土地利用、水利用及び資源管理に係る方針について相互に矛盾し、又は重複することのないよう調整を図るとともに、当該地域における農業及び水産業の役割分担及び連携の方向性を明らかにするよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業及び水産業が、肥料、飼料、バイオマスその他の資源について相互に補完し合うことにより、第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備並びに第九十二条及び第九十六条に規定する土壌及び水資源の保全並びに防災・減災に関する施策と調和した循環型の生産体系(有機物の循環利用、陸上養殖と耕種農業との連携その他これらに類するものをいう。)の構築に寄与するよう、技術開発及び実証、情報提供並びに人材育成に関する施策を推進しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農地からの流出水が内水面及び沿岸水域の水質及び生態系に与える影響並びに漁港、漁場及び養殖施設の整備が農地及び農村の防災・減災に与える影響に留意しつつ、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング、第四十一条に規定する都市近郊農地及び市民農園の位置付け並びに第九十六条に規定する農地及び農村における防災・減災に関する施策と、水産に関する港湾、漁港及び漁場の整備その他のインフラ施策との整合が図られるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第八十一条から第九十条までに規定する食料供給連鎖に関する施策との連携を図り、農産物及び水産物(その加工品を含む。)の流通、加工、輸出及び観光利用が、地域ブランドの形成、地産地消の推進及び災害その他の非常時における食料供給連鎖構造の多様化に資するよう、産地間及び産業間の連携体制の整備を支援しなければならない。

 国は、第五十七条に規定する家畜疾病及び植物防疫に関する農業安定対策並びに水産に関する魚病及び水域環境の保全に関する制度が、第七十九条に規定する品質及び安全性の管理に関する施策と一体として機能し、農産物及び水産物の安全性に関する情報が相互に共有されるよう、関係機関間の連携及び情報連結に必要な仕組みを整備しなければならない。

 前各項に規定する農業と水産業との連携に関する施策は、第四十条から第四十五条まで、第七十三条から第七十五条まで、第九十六条及び第九十条に規定する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。この場合において、既存の農業及び水産業に関する協議会その他の協議の場は、その構成及び運営を見直すことにより、農業と水産業との連携を図るための場として積極的に活用されなければならない。

(農業と林業との連携)

第七十七条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第六条、第九十一条から第九十六条まで及び第百条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、農業及び林業が、食料、木材その他の森林産品の安定供給の確保、国土保全及び地域経済の持続的な発展並びに生物多様性の保全に資するよう一体的に行われるため、農業に関する施策と森林及び林業に関する施策との間の連携及び調整に必要な措置を、総合的かつ計画的に講じなければならない。

 中山間地域その他農地と森林とが同一の流域及び地域社会の下で一体的に存在し、又は利用されている地域においては、地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに森林及び林業に関する基本計画その他の関係計画が、土地利用、水利用、土砂災害の防止及び生態系の保全に係る方針について相互に矛盾し、又は重複することのないよう調整を図るとともに、当該地域における農業及び林業の役割分担並びに連携の方向性を明らかにするよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業及び林業が、土壌保全、水源涵養、景観形成及び生物多様性の保全において相互に補完し合うことにより、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング、第九十二条に規定する土壌及び水資源の保全並びに第九十五条に規定する景観及び生物多様性の保全に関する施策と調和した土地利用の多層構造(棚田及び傾斜地における農地と森林との組合せ、里地里山の維持その他これらに類するものをいう。)の形成に寄与するよう、技術開発及び実証、情報提供並びに人材育成に関する施策を推進しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業及び林業における間伐材、農業残さ、バイオマスその他の再生可能資源の利用が、第九十四条に規定する再生可能エネルギー及びバイオマスの活用並びに第九十八条に規定する環境負荷の評価及び指標に関する施策と一体として、温室効果ガスの排出削減及び吸収源としての森林の機能の発揮に資するよう、サプライチェーンの構築及び関連する投資の促進に必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備並びに第九十六条に規定する農地及び農村における防災・減災に関する施策を講ずるに当たり、森林のもつ治山機能及び土砂災害防止機能と農地及び農業用施設の保全との関係に留意し、治山事業、林道整備その他森林に関するインフラ施策と農業用用排水施設及び農道の整備とが、当該地域における国土強靱化に資するよう相互に補完的に行われるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第七十三条に規定する有機農業及び環境保全型農業に関する施策並びに森林の認証制度その他持続可能な森林経営に関する施策との連携を図り、農産物及び森林産品に係る環境配慮に関する情報が国際的な基準との整合を保ちつつ一体的に整理され、国内外の需要者に対して分かりやすい形で提供されるよう、表示、認証及びトレーサビリティに関する仕組みの整備を推進しなければならない。

 前各項に規定する農業と林業との連携に関する施策は、第四十条から第四十五条まで、第九十一条から第九十六条まで及び第百条に規定する施策と一体として講じられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。この場合において、農業及び林業に関する既存の協議会その他の協議の場は、その構成及び運営を見直すことにより、農業と林業との連携を図るための場として積極的に活用されなければならない。

(気候変動への適応技術等)

第七十八条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第六条、第九十一条から第九十六条まで及び第百条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、気候変動及びこれに起因する気温、降水、降水形態その他の自然条件の変化が農業生産及び農村社会に及ぼす影響を的確に把握しつつ、食料の安定供給の確保及び農業経営の継続性が損なわれることのないよう、気候変動への適応に係る技術及び体制の整備に関し、総合的かつ計画的に必要な施策を講じなければならない。

 国は、気候変動適応法その他の関係法令の定めるところにより、気温、降水、土壌水分等の観測及び予測並びに病害虫の発生動向、作況指数その他の農業生産に係る指標のモニタリング体制を整備し、第三編及び第五編に規定する施策との連携の下に、複数の将来シナリオに応じた農業分野への影響評価及びこれに対する適応方策の選択肢を継続的に検証し、及び必要な情報を農業経営体及び地方公共団体に提供しなければならない。

 国及び地方公共団体は、第七十条に規定する研究開発及び試験研究機関の役割に留意しつつ、高温耐性、干ばつ耐性及び耐湿性その他気候変動への耐性を有する品種の育成、播種期及び収穫期の見直し、かんがい及び排水施設の高度化、病害虫・雑草管理の技術革新その他の気候変動への適応に資する技術の開発及び普及を促進するとともに、これらの技術が第四十条に規定するゾーニング及び第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備に関する施策と調和して導入されるよう配慮しなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに気候変動適応に関する地方計画その他の関係計画の策定及び実施に当たり、平地農業、中山間地域農業、都市近郊農業その他地域の自然条件及び農業構造の違いに応じて、当該地域に適した気候変動への適応技術及びこれを組み合わせた営農体系を明らかにし、第二十二条に規定する農業経営体がこれを選択し、又は段階的に導入し得るよう、必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第五十八条に規定する経営継続計画の策定支援、第五十九条に規定する経営相談及び専門家による支援並びに第六十条、第六十一条及び第六十三条に規定する多角化、金融及び評価に関する施策と一体として、気候変動に伴う収量及び品質の変動、自然災害の頻度及び規模の変化その他のリスクが農業経営に与える影響を緩和し、又は吸収し得るよう、保険、共済、所得補填、投資負担の平準化その他の経営安定手段を組み合わせて活用するために必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、第七十三条に規定する有機農業及び環境保全型農業並びに第九十八条に規定する環境負荷の評価及び指標に関する施策との整合を図り、気候変動への適応に資する技術の導入が、温室効果ガスの排出削減その他の緩和策と両立し、又はこれを補完するものとなるよう留意するとともに、これらの取組に関する評価指標及び情報が国内外の需要者に対して分かりやすい形で提供されるよう努めなければならない。

 前各項に規定する施策は、第五編及び第七編に規定する施策と一体として講じられるべきものであり、気候変動への適応のみを目的とする新たな計画又は認定制度を乱立させることを目的として解してはならない。この場合において、既存の農業及び環境に関する審議会その他の協議の場は、その構成及び審議事項を見直すことにより、農業分野における気候変動への適応技術に関する検討及び合意形成の場として積極的に活用されなければならない。

(品質及び安全性の管理)

第七十九条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第五条、第六条、第七十三条及び第九十八条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、農産物及びこれを原材料とする食品(以下この条において「農畜産食品等」という。)について、その品質及び安全性が科学的知見に基づき、かつ国民にとって分かりやすい基準により確保されるよう、食品衛生法、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律その他の関係法令の定めるところにより、必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の施策に関連して、農畜産食品等の生産、加工、保管、輸送及び販売の各段階における衛生管理、農薬及び肥料の適正な使用(第七十四条参照)、飼料の安全性の確保並びに動物用医薬品の適正使用に関する基準及び指針を整備し、その内容を第二十二条に規定する農業経営体その他の関係者に対し周知するとともに、その遵守を支援しなければならない。

 国は、農畜産食品等の生産段階における品質及び安全性の確保に資するため、農業生産工程管理(いわゆるGAP)、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理その他の体系的な管理手法に関し、品目、経営規模及び取引先の要請に応じて選択し得る複数の標準モデルを整備し、その導入及び継続的改善を支援しなければならない。この場合において、国は、小規模農業経営体及び地域小規模耕作(第三十条)の負担に配慮し、必要な簡素化及び段階的導入の方策を講ずるものとする。

 国は、農畜産食品等の品質及び安全性に関する規格又は基準を定め、又はこれを国際的な規格若しくは基準(コーデックス委員会その他の国際機関により策定されるものを含む。)と調和させることにより、国内の取引における信頼性の確保及び輸出入における円滑な通商を図るとともに、農業経営体が当該規格又は基準を満たすために必要な設備投資及び技術導入を行う場合における支援その他必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、農畜産食品等の品質及び安全性に関する第三者認証その他の認証制度(日本農林規格に基づく認証、地理的表示保護制度その他これに類する制度を含む。)の運用に当たり、その趣旨及び要件が重複し、又は過度に多様化することにより、農業経営体及び消費者に混乱又は過大な負担を生じさせることのないよう留意し、既存の制度の整理及び統合その他の見直しを行うとともに、その表示の意味及び信頼性について国民に対する分かりやすい情報提供を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農畜産食品等の品質及び安全性に関する事故又はおそれのある事案が発生した場合においては、食品衛生法その他の関係法令に基づく回収、原因究明及び再発防止に係る措置が、第三編に規定する農地制度に関する施策、第七十四条に規定する農薬及び肥料の適正使用に関する施策並びに第八十七条に規定する食品表示及びトレーサビリティに関する施策と一体として講じられるよう配慮しなければならない。

 前各項に規定する施策は、第五編及び第六編に規定する施策と一体として講じられるべきものであり、品質及び安全性の管理のみを目的とする新たな計画又は認定制度をみだりに創設することによって農業経営体に重複した事務負担を課することのないよう解すべきものとする。この場合において、品質及び安全性に関する指標及び統計は、可能な限り客観的かつ比較可能な形で整備され、第九編に規定する調査及び統計に関する施策との整合を図りつつ、公表されなければならない。

(生産技術に係る人材育成)

第八十条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで、第六条、第七十三条、第七十四条、第七十八条及び第九十八条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、農業経営体(第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作を含む。)が、生産技術、品質及び安全性の管理並びに環境及び資源の保全に関し、科学的知見に基づく適切な能力を継続して習得し、及び向上させることができるよう、農業に係る教育及び人材育成に関する施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の施策に関連して、農業大学校、農業高等学校、大学その他の教育機関、農業改良普及機関、試験研究機関及び民間の研修機関等との連携の下に、地域の実情及び農業経営体の規模、営む作目並びに従事者の年齢及び経験に応じ、生産技術、経営管理、情報の利活用(第六十八条及び第六十九条に規定する施策を含む。)、安全な作業方法及び労働安全衛生(第三十五条参照)その他必要な事項に関する研修、講習及び実習の機会を整備し、及び提供するよう努めなければならない。

 国は、前二項に規定する教育及び人材育成に関する施策を講ずるに当たり、共通試験法に基づく評価及び資格制度その他の教育・評価に関する制度との連携を図り、生産技術に係る学修成果及び実務経験が、農業に関する資格、職業能力の証明及び公共職員(公共職員法に規定する職員をいう。)の専門性の評価その他の場において適切に通算され、及び活用されるよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業に従事し、又は従事しようとする者が、性別、年齢、国籍及び障害の有無その他の事情にかかわらず、生産技術に係る教育及び研修の機会に容易にアクセスすることができるよう配慮するとともに、特に、女性、若者、新規参入者及び外国人材(第三十一条参照)について、生産技術及び安全な作業方法に関する基礎的な教育及び研修が確保されるよう必要な措置を講じなければならない。

 地方公共団体は、第三十条に規定する地域小規模耕作に従事する者に対する生産技術及び安全な農薬並びに肥料の使用方法に関する基礎的な研修及び講習の機会が、前条及び第七十九条に規定する品質及び安全性の管理に関する施策と一体として提供されるよう努めるとともに、災害その他の非常時において当該者が農業経営体と連携して農作業の補助その他の協力を行うことができるよう、その能力の向上を図らなければならない。

 前各項に規定する教育及び人材育成に関する施策は、第五編及び第八編に規定する施策と一体として講じられるべきものであり、生産技術に係る人材育成のみを目的とする新たな計画又は認定制度をみだりに創設することによって農業経営体に重複した事務負担を課することのないよう解すべきものとする。この場合において、生産技術に係る研修の受講状況及び学修成果に関する指標及び統計は、第九編に規定する調査及び統計に関する施策との整合を図りつつ整備されなければならない。

(食料供給連鎖政策の基本方針)

第八十一条 国は、第二十条第一項に規定する農業法の目的並びに第三条から第七条まで及び第六条、第七十三条、第七十四条、第七十八条、第七十九条及び第九十条に規定する基本理念及び基本方針に基づき、農産物の生産、集荷、保管、輸送、加工、流通、販売、消費並びに食品廃棄物の発生抑制及び再生利用に至る一連の過程(以下この編において「食料供給連鎖」という。)が、食料の安全及び安定供給の確保、農業経営の安定、環境及び資源の保全並びに国民の健康で豊かな食生活の実現に資するよう、その政策の基本方針を定め、及びこれに基づき必要な施策を総合的かつ一体的に推進しなければならない。

 前項に規定する食料供給連鎖に関する施策は、次に掲げる事項の調和を図りつつ講じられなければならない。

一 農産物及びこれを原材料とする食品の安全性及び品質の確保並びに消費者の信頼の保持

二 需給及び価格の適切なモニタリング(第八十三条参照)並びに農業経営の安定(第四編参照)

三 生産、加工、流通及び販売の各段階における効率化及び付加価値の向上並びに輸出の促進(第八十五条参照)

四 フードロスの削減及び食品リサイクルの推進(第八十八条参照)並びに環境負荷及び温室効果ガス排出の低減(第七十八条、第九十八条参照)

五 地産地消及び地域流通拠点の整備(第八十九条参照)その他地域の実情に即した食料供給連鎖の確立

六 災害その他の非常時における物流の確保及び代替経路の確保を通じたレジリエンスの向上(第九十条参照)

七 デジタル技術を活用したトレーサビリティ及び情報連携(第六十八条、第六十九条、第八十七条参照)

 国及び地方公共団体は、食料供給連鎖に関する施策を講ずるに当たり、農業経営体、農業協同組合等、集出荷団体、食品製造業者、卸売業者、小売業者、飲食業者、物流事業者その他の事業者並びに消費者、消費者団体、学校、医療機関その他の関係者との連携を図り、当該関係者がそれぞれの責任及び役割を自覚しつつ協働することにより、食料供給連鎖全体としての最適化が図られるよう配慮しなければならない。

 前各項に規定する食料供給連鎖に関する施策は、第十四条に規定する農業基本計画、第十五条に規定する都道府県農業計画及び第十六条に規定する市町村農業計画において、当該地域における生産振興、流通、加工、需給及び環境に関する施策と一体として位置付けられ、及び具体化されるものとし、これらと重複する新たな計画又は認定制度をみだりに創設することによって農業経営体その他の関係者に過重な事務負担を課することのないよう解すべきものとする。

 食料供給連鎖に関する施策は、食品衛生法、食品表示法その他食品の安全性及び表示に関する法令並びに独占禁止法その他の公正な競争を確保するための法令との整合を図りつつ実施されなければならず、これらの法令により定められた基準及び規律を弱め、又はこれと抵触することを目的として解してはならない。

(流通及び加工の高度化)

第八十二条 国は、第八十一条第一項に規定する食料供給連鎖政策の基本方針並びに第四編及び第五編に規定する農業経営の安定及び生産振興に関する施策との有機的な連携の下に、農産物の集荷、予冷、選別、包装、保管、輸送、一次加工及び二次加工その他これらに準ずる行為(以下この条において「流通・加工」という。)の合理化及び高度化を図り、もって農業経営体の所得及び労働条件の改善並びに国民に対する安定的かつ多様な食料供給連鎖の実現に資するよう、必要な施策を講じなければならない。

 前項に規定する流通・加工に関する施策は、次に掲げる事項に重点を置いて講じられなければならない。

一 産地における共同利用型の集出荷施設、予冷施設、低温保管施設、選別・包装施設その他の流通・加工拠点の整備及び更新並びにこれらと連携する共同輸送体制の構築

二 農業経営体による加工、販売その他の事業への参画を容易にするための、小ロット、多品目、短時間での処理に対応した設備及びオペレーションの導入の促進

三 デジタル技術を活用した在庫、需給及び価格に関する情報の収集、分析及び共有並びにこれらと連動した生産、加工及び出荷計画の高度化

四 環境負荷の低減及びフードロス削減に資する包装資材、リサイクル技術その他の導入の促進

五 災害その他の非常時においても機能する代替拠点及び代替ルートの確保を含む、流通・加工体制の冗長性及びレジリエンスの強化

 国及び地方公共団体は、流通・加工の高度化に関する施策を講ずるに当たり、農業経営体、農業協同組合等、集出荷団体、食品製造業者、卸売業者、小売業者、飲食業者、物流事業者その他の関係事業者の規模及び業態に応じた支援が行われるよう配慮するとともに、特に中小規模の事業者及び中山間地域その他の条件不利地域における事業者が、共同利用施設、共同物流及びデジタルプラットフォームを通じて効率的かつ安定的に事業を行うことができるよう、必要な環境整備に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する施策を講ずるに当たり、農業経営体が流通・加工の各段階において適正な対価配分を受けることができるよう、契約条件の明確化、取引慣行の見直し及び情報の対称性の確保に資する措置を講ずるとともに、独占禁止法その他の公正な競争を確保するための法令に基づく規律の実効性が確保されるよう、関係行政機関との連携を図らなければならない。

 流通・加工の高度化に関する施策は、第十四条に規定する農業基本計画、第十五条に規定する都道府県農業計画及び第十六条に規定する市町村農業計画において、当該地域の産地構造、物流網及び加工産業の実情に即して位置付けられ、及び具体化されるものとし、これらと重複する新たな計画又は認定制度をみだりに創設することにより、農業経営体その他の関係者に過重な事務負担を課することのないよう解すべきものとする。

(需給及び価格のモニタリング)

第八十三条 国は、第四条に規定する食料安全保障の確保及び第五十一条に規定する農業経営の安定の実現に資するため、統計法その他の関係法令の定めるところにより、主要な農産物及びその加工品並びに種子、肥料、飼料その他農業生産に不可欠な資材(以下この条において「農産物等」という。)について、国内外の生産、在庫、流通、輸出入及び消費の動向並びにこれらに係る価格の推移を継続的かつ体系的に把握するための需給及び価格のモニタリングを行わなければならない。

 前項に規定するモニタリングは、次に掲げる事項に重点を置き、デジタル技術の活用その他の方法により、その精度及び迅速性の向上が図られるものとする。

一 主食用穀物、飼料穀物、油糧種子、畜産物、野菜、果実その他国民の食生活及び農業経営に与える影響が大きいと認められる農産物等についての品目別の需給及び価格の動向

二 平年作又はこれに相当する状態との比較により把握される作況、在庫水準及び価格水準の偏差並びにその継続期間

三 国際相場及び主要な輸出入相手国の需給・価格動向と我が国の需給・価格動向との関係

四 災害、感染症、国際情勢の変化その他の事由により、需給及び価格に急激な変動又はそのおそれが生じている場合における早期の検知及び影響の評価

五 前各号に掲げるもののほか、第四編及び第六編に規定する施策の適切な運用に資することが明らかである需給及び価格に関する指標

 国は、前二項に規定するモニタリングの結果に基づき、農業基本計画において、主要な農産物等ごとに、需給及び価格の動向に係る指標、当該指標の目安となる範囲及び当該範囲を大きく逸脱した場合に検討すべき措置の種類の概要を定めるものとし、都道府県及び市町村が策定する農業計画においては、当該地域の産地構造及び消費構造に応じ、必要な範囲でこれを反映させるものとする。

 国及び地方公共団体は、第一項及び第二項に規定するモニタリングの実施に当たり、農業経営体、農業協同組合等、農地管理機関、農業経営支援機関、卸売市場、食品製造業者、小売業者、物流事業者その他の関係者から必要な情報の提供を受けるとともに、それぞれの事務及び事業の遂行に過重な負担を課することのないよう配慮しなければならない。

 国は、第一項及び第二項に規定するモニタリングの結果のうち、個々の者の権利義務又は正当な利益を害するおそれがない範囲の情報については、農業経営体及び消費者その他の国民が農産物等の需給及び価格の状況を的確に把握し得るよう、統計情報としての公表その他適切な方法により提供するものとし、当該情報が第四編及び第六編に規定する施策の利用及び選択に資するよう努めなければならない。

 第一項から前項までに規定する需給及び価格のモニタリングに関する施策は、既に他の法律に基づき実施されている統計調査、情報収集及び公表に係る制度を統合し又はこれらと整合的に運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度をみだりに創設することにより、農業経営体その他の関係者に過重な事務負担を課することのないよう解すべきものとする。

(需要拡大及び国産農産物の利用促進)

第八十四条 国は、第四条に規定する食料安全保障の確保及び第五十一条に規定する農業経営の安定並びに国民の健全な食生活の維持向上に資するため、前条に規定する需給及び価格のモニタリングの結果を踏まえつつ、我が国において生産される農産物及びこれを主たる原材料とする加工品(以下この条及び次条において「国産農産物等」という。)の需要の拡大並びに当該国産農産物等の適切な利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画及び第十五条並びに第十六条に規定する農業計画に即し、その区域の実情に応じ、学校給食その他の公的給食、地方公共団体が行う公の施設における飲食の提供その他の公的な調達において、栄養バランス及び経済性に配意しつつ、国産農産物等の利用が促進されるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、消費者が国産農産物等の品質及び特性を理解し、その選択に当たり適切な判断を行うことができるようにするため、食育の推進、表示に関する情報提供、地域の農業経営体との交流の場の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

 国は、外食産業、食品製造業者、小売業者、観光関連事業者その他の事業者が、国産農産物等の安定的な供給能力及び需給の状況を踏まえつつ、メニュー開発、商品設計、販促活動その他の事業活動を通じて国産農産物等の利用拡大に取り組むことができるよう、前条に規定する需給及び価格に関する情報の提供、人材育成、標準的な契約条件の整備その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する施策を講ずるに当たり、輸出の促進、第八十五条に規定するブランド戦略及び第八十九条に規定する地産地消及び地域流通拠点の整備に関する施策との整合を図るとともに、国際約束との調和及び公正な競争条件の確保に配慮し、特定の農産物等に対する過度な需要の誘導により、他の農産物等の生産又は供給に不当な影響を及ぼすこととならないよう留意しなければならない。

 第一項から前項までに規定する需要の拡大及び国産農産物等の利用の促進に関する施策は、すでに他の法律に基づき実施されている国産農産物等の販路拡大、食育、表示及び公的調達に係る制度を統合し、又はこれらと整合的に運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度をみだりに創設することにより、農業経営体その他の関係者に過重な事務負担を課することのないよう解すべきものとする。

(輸出促進及びブランド戦略)

第八十五条 国は、第四条に規定する食料安全保障の確保及び第五十一条に規定する農業経営の安定並びに第六十六条に規定する生産振興の基本方針に即しつつ、我が国において生産される農産物及びこれを主たる原材料とする加工品(以下この条において「国産農産物等」という。)について、その品質、特性及び生産に係る地域の歴史、文化その他の価値が適正に評価されるようにし、もって当該国産農産物等の輸出の促進及び国際市場における我が国農業の競争力の強化に資するため、輸出促進及びブランド戦略に関する施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 前項の施策は、第八十四条に規定する需要拡大及び国産農産物の利用促進に関する施策と整合を図りつつ、国内における安定供給及び価格の安定が損なわれることのないよう配慮して実施されるものとし、特定の国又は地域への過度の依存を避けつつ、市場の多角化及び長期的な取引関係の構築が促進されるように行われなければならない。

 国は、農林水産物・食品の輸出促進に関する法律(平成三十年法律第八十九号)その他現に我が国の農林水産物及び食品の輸出促進に関する法律に基づき講じられている施策を、この法律に基づく輸出促進及びブランド戦略に関する施策の一環として位置付け直し、これらの施策の重複及び空隙を生じさせることのないよう整理し、又は統合するとともに、輸出に係る相談、商談支援、衛生植物検疫(検疫を含む。)及び通関手続に係る情報提供その他必要な支援を行わなければならない。

 国は、国産農産物等に係る地理的表示、原産地表示その他の表示制度、品質及び生産方法に関する認証制度並びに商標、意匠その他の知的財産権の保護に関する制度が、当該国産農産物等のブランド価値の向上及び不正表示の防止に資するよう、関係行政機関相互の連携を図りつつ、その運用の一体性及び透明性の確保に努めるとともに、国際的な枠組みとの整合に配意しなければならない。

 国及び地方公共団体は、産地、農業協同組合等、輸出事業者、食品製造業者、外食産業、流通業者及び観光関連事業者その他の関係者が、それぞれの役割分担に応じ、国産農産物等の輸出及びブランド形成に取り組むことができるよう、輸出向け仕様の標準化、品質管理体制の整備、輸出用共同施設及び低温物流施設の整備、デジタル技術を活用した需要及び価格に関する情報の提供その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する施策を講ずるに当たり、世界貿易機関協定その他の国際約束との調和及び国際的な公正競争条件の確保に配慮するとともに、輸出補助その他の措置が国際的な紛争の原因とならないよう留意しなければならない。

 第一項から前項までに規定する輸出促進及びブランド戦略に関する施策は、既に他の法律に基づき設けられている輸出促進、表示、認証及び知的財産権保護に係る制度を統合し、又はこれらと整合的に運用されるべきものであり、これらと重複する新たな計画、認定又は認証の制度をみだりに創設することにより、農業経営体その他の関係者に過重な事務負担を課することのないよう解すべきものとする。

(輸入及び貿易政策との整合)

第八十六条 国は、第四条に規定する食料安全保障の確保及び第五十一条に規定する農業経営の安定並びに第六十六条に規定する生産振興の基本方針に即し、農産物及びこれを主たる原材料とする加工品(第八十五条第一項に規定する国産農産物等を含む。以下この条において「農産物等」という。)の輸入及びこれに係る貿易政策が、国内における生産、流通及び消費と相まって、我が国全体としての需給及び価格の安定並びに多元的かつ安定的な調達構造の形成に資するよう、関税その他の貿易措置及びこれに関連する施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 前項に規定する施策は、第八十三条に規定する需給及び価格のモニタリング並びに第九十条に規定する非常時における流通及び供給確保に関する施策と密接に連携しつつ、農産物等の輸入が国内生産を不当に阻害し、又は特定の国若しくは地域からの輸入に過度に依存することにより供給途絶その他のリスクが高まることのないよう配慮して行われるものとし、平時においては国内生産を補完する役割を持ちつつ、災害、国際情勢の変化その他の事態に際しては、備蓄その他の施策とあいまって供給の緩衝機能を果たすように運用されなければならない。

 国は、農産物等の輸入に係る関税その他の税制上の措置、数量制限、関税割当て、緊急輸入制限(セーフガードを含む。)、国家貿易その他の貿易措置について、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定その他の世界貿易機関協定、経済連携協定及び自由貿易協定並びにその他の国際約束との整合を図りつつ、国内の食料自給力及び農業生産基盤の維持向上並びに農業経営の予見可能性の確保に資するよう、関税暫定措置法、関税定率法その他の関係法令の運用を含め、必要な措置を講じなければならない。

 国は、農産物等の輸入に関し、外国為替及び外国貿易法、重要物資の安定供給の確保に関する法律その他経済安全保障に関する法令との整合に配意しつつ、特定の農産物等について輸出規制その他の措置が行われた場合における代替調達先の確保、国際的な協調に基づく情報交換及び共同備蓄その他の措置を講じ、我が国における農産物等の供給が著しく阻害されることのないよう努めなければならない。

 国は、農産物等の輸入に係る検疫、検査及び認証並びに残留農薬、動物用医薬品その他の安全性に関する基準及び手続について、食品衛生法、家畜伝染病予防法、植物防疫法その他の関係法令に基づき必要な措置を講ずるとともに、第七十九条に規定する品質及び安全性の管理並びに第八十七条に規定する食品表示及びトレーサビリティに関する施策と一体として運用し、輸入農産物等と国産農産物等との間における安全性及び表示の水準の均衡が適切に確保されるよう努めなければならない。

 国は、前各項に規定する輸入及び貿易政策に関する施策を講ずるに当たり、関税暫定措置法、関税定率法、外国為替及び外国貿易法、重要物資の安定供給の確保に関する法律その他農産物等の輸出入に関する現行の法令に基づき講じられている施策を、この法律に基づく農業及び食料政策の一環として位置付け直し、これらの施策の重複及び空隙を生じさせることのないよう整理し、又は統合するとともに、農業経営体その他の関係者に不要の事務負担を課することのないよう留意しなければならない。

 第一項から前項までに規定する輸入及び貿易政策に関する施策は、国内の生産、流通及び消費に係る施策と一体として運用されるべきものであり、特定の農産物等の輸入に依存して国内の農業生産基盤を弱体化させることを目的とするものと解してはならない。

(食品表示及びトレーサビリティ)

第八十七条 国は、第四条に規定する食料安全保障の確保及び第五十一条に規定する農業経営の安定並びに第七十九条に規定する品質及び安全性の管理の趣旨に即し、農産物及びこれを主たる原材料とする加工品の表示(以下この条において「食品表示」という。)並びに当該農産物及び加工品の生産、加工、流通及び販売の各段階に係る履歴の把握(以下この条において「トレーサビリティ」という。)に関する制度が、消費者による適切な選択を可能とし、安全性に関する措置及び需給・価格の安定に資するよう、食品表示法、日本農林規格等に関する法律(JAS法)、食品衛生法その他の関係法令に基づき、必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 食品関連事業者は、前項に規定する関係法令の定めるところにより、農産物及び農産物を主たる原材料とする加工品について、その原材料、原産地、栽培方法、加工方法、賞味期限又は消費期限、栄養成分その他政令で定める事項に関し、真実かつ誤認を生じさせない表示を行い、並びに当該表示が第六十九条に規定するデータ基盤及び情報連携並びに第七十九条に規定する品質及び安全性の管理と一体として機能するよう努めなければならない。

 国は、農産物及びこれを主たる原材料とする加工品について、農業経営体、集出荷団体、加工業者、卸売業者、小売業者その他の食品関連事業者が、栽培、収穫、集荷、加工、保管、輸送及び販売の各段階における取引先、数量、日付その他必要な事項を継続的に記録し、必要に応じて遡及的又は追跡的に把握することができるようにするため、食品表示法、JAS法、食品衛生法その他の関係法令の枠組みを通じ、トレーサビリティの確保に関する指針の策定、標準様式の整備、情報通信技術の活用に係る支援その他必要な措置を講じなければならない。

 食品関連事業者は、前項の趣旨に沿い、当該事業の規模及び形態に応じ、帳簿、伝票、バーコード、電子情報その他の方法により、トレーサビリティの確保に必要な記録の作成及び保存を行い、並びに食品衛生上の危害の発生若しくは拡大の防止又は第八十三条に規定する需給及び価格のモニタリングに資するため、国及び地方公共団体からの求めに応じ、当該記録の提出その他必要な協力を行うよう努めなければならない。

 地方公共団体は、第十六条に規定する市町村農業計画、第八十四条に規定する需要拡大及び国産農産物の利用促進に関する施策並びに第八十八条に規定するフードロス削減及びリサイクルに関する施策との整合を図りつつ、直売所、道の駅、市民農園その他地域に密着した販売及び提供の形態においても、消費者が安全性及び原産地その他の基本的情報を知ることができるよう、表示方法の簡素な標準化、説明の場の確保その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、食品表示及びトレーサビリティに関し、購入履歴その他個人に係る情報を取得し、又は利用する場合においては、個人情報の保護に関する法律その他の関係法令の定めるところにより、利用目的の特定、目的外利用の防止、適切な安全管理措置及び匿名加工情報等の活用に配慮し、もって当該情報が不当な差別的取扱いその他の不利益をもたらすことのないよう留意しなければならない。

 国は、食品表示及びトレーサビリティに関する制度を見直し、又は新たな認証若しくは登録の制度を設けるに当たっては、既に食品表示法、JAS法その他の法令に基づき実施されている表示、認証及び登録に係る制度との重複及び齟齬を生じさせることのないようこれらを整理し、又は統合するとともに、農業経営体及び食品関連事業者に過度の事務負担を課することのないよう留意しなければならない。

(フードロス削減及び食品リサイクル)

第八十八条 国は、第四条に規定する食料安全保障の確保、第六条に規定する環境との調和及び持続可能性並びに第七十三条に規定する有機農業及び環境保全型農業の推進の趣旨に即し、まだ食用に供し得るにもかかわらず廃棄される食品(以下この条において「フードロス」という。)の削減並びに食品の有効な再生利用(以下この条において「食品リサイクル」という。)を促進するため、食品ロスの削減の推進に関する法律、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(以下この条において「食品リサイクル法」という。)その他の関係法令に基づき、食料の安定供給の確保及び循環型社会の形成に資する施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 この条において「食品関連事業者」とは、第八十七条第二項に規定する食品関連事業者をいう。

 国は、前二項の趣旨を達成するため、農業経営体及び食品関連事業者が行う生産、加工、流通及び販売の各段階におけるフードロスの発生状況を把握し、当該発生抑制のための数値目標及び指針を設定するとともに、第八十三条に規定する需給及び価格のモニタリング並びに第六十九条に規定するデータ基盤及び情報連携の仕組みを通じて、フードロス削減及び食品リサイクルに関する情報の収集、分析及び公表を行わなければならない。

 農業経営体及び食品関連事業者は、前項の指針に即し、当該事業の規模及び業態に応じ、仕入れ及び生産の適正化、保存及び在庫管理の改善、販売方法の工夫(期限の迫った食品の値引販売その他の方法を含む。)、規格外品の有効活用、食品の寄附(フードバンクその他の食支援団体への提供を含む。)その他の方法によりフードロスの発生抑制に努めるとともに、やむを得ず発生した食品循環資源については、食品リサイクル法その他の関係法令の定めるところにより、家畜の飼料、肥料又はエネルギー源としての利用その他の再生利用を優先し、単純焼却又は埋立処分にできる限り依存しないよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項に規定するフードロス削減及び食品リサイクルに係る取組が、第七十九条に規定する品質及び安全性の管理並びに食品衛生法、農薬取締法、肥料取締法、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律その他の関係法令に適合して行われるよう、衛生管理に関する技術的助言、人材育成、設備投資に対する支援その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 地方公共団体は、第十五条及び第十六条に規定する農業計画、第八十四条に規定する需要拡大及び国産農産物の利用促進に関する施策、第八十九条に規定する地産地消及び地域流通拠点の整備に関する施策並びに廃棄物の処理及び清掃に関する法律その他の環境関連法令に基づく計画との整合を図りつつ、直売所、道の駅、学校給食その他地域に密着した販売及び提供の場を活用したフードロス削減及び食品リサイクルの推進、地域の福祉関係機関との連携による食品の寄附の仲介、物流費の一部支援その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 国は、フードロス削減及び食品リサイクルに関する制度を見直し、又は新たな認証若しくは登録の制度を設けるに当たっては、食品ロスの削減の推進に関する法律、食品リサイクル法その他の法令に基づき既に策定されている基本方針、行動計画その他の計画及びこれらに基づく認定制度との重複及び齟齬を生じさせることのないようこれらを整理し、又は統合するとともに、農業経営体及び食品関連事業者に過度の事務負担を課することのないよう留意しなければならない。

(地産地消及び地域流通拠点の整備)

第八十九条 国及び地方公共団体は、第五条に規定する農業の多面的機能並びに第七条に規定する農村社会及び地域振興の趣旨に即し、地域内で生産された農産物その他これに関連する食品が、当該地域内において優先的かつ安定的に利用されること(以下この条において「地産地消」という。)を促進するとともに、農産物の集出荷、加工、販売及び消費を地域内で円滑に結び付けるための拠点となる施設又は仕組(直売所、集出荷施設、農産物等の展示販売機能を有する道路施設(いわゆる「道の駅」)、公共施設法に基づく統合公共施設その他の地域拠点施設を含む。以下この条において「地域流通拠点」という。)の整備及び機能強化に関し、必要な施策を講じなければならない。

 国は、前項の施策を講ずるに当たり、六次産業化・地産地消の推進に関する法律その他の関係法令に基づく基本方針、行動計画及び認定制度を整理し、又は統合することにより、第十五条及び第十六条に規定する農業計画並びに第八十四条に規定する需要拡大及び国産農産物の利用促進に関する施策と一体として運用される枠組みを構築しなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域公共交通、都市計画及び公共施設の整備に関する計画との整合を図りつつ、地域の実情に応じ、地域流通拠点の配置、機能及び運営主体に関する方針を定め、当該地域流通拠点が次に掲げる役割を果たすことができるよう必要な措置を講ずるものとする。

一 小規模農業経営体及び第三十条に規定する地域小規模耕作により生産される農産物を含め、地域内で生産された多様な農産物の安定的な販売機会の確保

二 学校給食、医療・福祉施設、統合公共施設その他の公共的な給食・提供の場に対する地域産農産物の優先的な供給の促進

三 観光、交流及び地域内外の来訪者に対する地域産農産物の情報発信及びブランド化の推進

四 第八十八条に規定するフードロス削減及び食品リサイクルに資する販売方法、寄附その他の仕組の整備

 農業経営体、農業協同組合等、食品関連事業者及び地域流通拠点を運営する者は、前項各号に掲げる役割が効果的に発揮されるよう相互に連携しつつ、物流の効率化、温室効果ガス排出の抑制及び地域内における所得の循環に配慮した取組を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、地産地消及び地域流通拠点に関する制度を見直し、又は新たに認定若しくは登録その他これに類する制度を設けるに当たっては、第八十四条、第八十八条及び前条に規定する制度並びに六次産業化・地産地消の推進に関する法律その他の関係法令に基づき既に定められている計画及び制度との重複及び齟齬を生じさせることのないようこれらを整理し、又は統合するとともに、農業経営体及び食品関連事業者に対して過度の事務負担を課することのないよう留意しなければならない。

 国及び地方公共団体は、災害その他の非常時における食料供給連鎖の確保の観点から、第九十条に規定する非常時における流通及び供給確保に関する施策と調和を図りつつ、地域流通拠点が当該地域における農産物の集積及び供給の中核として機能し得るよう、備蓄、非常用の物流動線の確保その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(非常時における流通及び供給確保)

第九十条 国及び地方公共団体は、第四条に規定する食料安全保障の趣旨並びに第八十一条に規定する食料供給連鎖政策の基本方針に即し、地震、風水害その他の自然災害、感染症のまん延、国際的な需給の逼迫、武力攻撃事態その他これらに準ずる事態(以下この条において「非常時」という。)においても、農産物及びこれを原料とする食品(以下この条において「農産物等」という。)の流通及び供給が、国民の生命及び健康の保護並びに社会経済活動の維持の観点から必要な水準において確保されるよう、災害対策基本法、国民保護法その他の関係法令の定めるところにより、必要な施策を講じなければならない。

 国は、非常時における農産物等の流通及び供給を確保するため、通常時から、次に掲げる事項に関し、統計その他のデータに基づく分析及びシミュレーションを行い、その結果を第十四条に規定する農業基本計画その他の関係計画に反映させなければならない。

一 主要な農産物等の生産、在庫、輸出入及び消費の状況並びにその変動が国民生活及び農業経営に及ぼし得る影響

二 輸送手段、物流拠点及び第八十九条に規定する地域流通拠点を含む供給網の脆弱性及び代替ルート

三 病害虫のまん延、家畜疾病その他農業生産に直接影響を及ぼす事象による供給制約の可能性

四 前各号に掲げるもののほか、非常時における農産物等の供給確保に関し必要な事項

 国は、非常時において、前項に掲げる分析及びシミュレーションの結果並びに当該時点における実情を踏まえ、関係行政機関相互の連携の下に、次に掲げる措置その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

一 農産物等の生産、集荷、加工、保管及び輸送に係る事業者に対する優先的なエネルギー、資材及び人員の確保に関する調整

二 道路、港湾、空港その他のインフラの被害状況に応じた物流ルートの切替え及び第八十九条に規定する地域流通拠点を活用した供給網の再構築

三 公的備蓄その他の在庫の放出又は活用に関する方針の決定及びその実施

四 学校給食、医療・福祉施設その他の優先的に農産物等の供給を確保すべき施設に対する供給調整

五 国民への冷静な購買行動及びフードロス削減を促す広報

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域防災計画その他の関係計画において、当該地域の地理的条件、農業構造及び人口分布に応じ、次に掲げる事項を明らかにし、第三項に規定する国の施策と調和を図りつつ、非常時における農産物等の供給確保に努めなければならない。

一 地域内の主要な農産物等の生産拠点、集出荷施設及び地域流通拠点の位置付け

二 離島その他物流の遅延が生じやすい地域における第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作を含む自給体制の活用方針

三 地域内の医療・福祉施設、避難所その他の優先供給先への配送ルート及び非常時の代替ルート

四 前各号に掲げるもののほか、当該地域における非常時の農産物等の供給確保に関し必要な事項

 農業経営体、農業協同組合等、加工・流通事業者及び小売事業者は、非常時においても、可能な限り通常の取引関係及び契約の枠組みを尊重しつつ、第三項及び前項に規定する施策に協力し、農産物等の供給の急激な途絶又は特定の者への過度な負担が生じることのないよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、非常時における農産物等の供給確保に関し、新たに計画又は認定制度を創設し、若しくは既存の計画及び認定制度を重複して運用することにより、農業経営体及び食品関連事業者に過度の事務負担を課することのないよう留意するとともに、この条に基づく措置が、第十四条から第十六条まで、第八十四条、第八十九条及び第九十六条に規定する施策と一体として機能するよう、関係法令及び制度の整理並びに必要な見直しを行うよう努めなければならない。

(農業と環境との調和の基本方針)

第九十一条 国及び地方公共団体は、第四条に規定する食料安全保障、第六条に規定する環境との調和及び持続可能性並びに第五条に規定する農業の多面的機能の発揮の趣旨に即し、環境基本法、生物多様性基本法、気候変動適応法その他の関係法令の定めるところを踏まえつつ、農業に係る施策を策定し、及び実施するときは、農業生産の安定的な発展と環境の保全及び再生とが相互に矛盾することなく両立し得るよう、長期的かつ総合的な視点から行わなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の趣旨に従い、この法律に基づく施策を講ずるに当たり、次に掲げる事項を総合的に勘案しなければならない。

一 土壌及び水資源の保全並びに農薬及び肥料の適正な使用その他農業生産に伴う環境負荷の低減

二 森林、里地里山、湿地その他の生態系と農地との有機的連関を踏まえた生物多様性の保全及び回復

三 温室効果ガスの排出削減及び吸収源としての農地、草地及び森林の機能の維持並びに気候変動への適応

四 再生可能エネルギー及びバイオマスの適切な活用その他循環型社会の形成への寄与

五 農村における生活環境、景観及び文化的資源の保全並びにこれらと調和した農業生産の在り方

六 前各号に掲げるもののほか、農業と環境との調和に資することが明らかである事項

 この法律に基づく施策は、前二項の趣旨に即し、農業経営体に対し一方的に環境負荷の低減のための義務又は負担のみを課するものとするのではなく、農業の多面的機能の発揮、生態系サービスの提供その他環境保全に資する行為に応じた適切な評価及び支援が行われるよう設計されなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業と環境との調和に関する施策を講ずるに当たり、農業経営の規模、作目、地域の自然的・社会的条件その他の事情に応じ、第二十二条に規定する農業経営体並びに第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作の役割の相違に配慮しつつ、環境負荷の低減及び環境保全に資する取組が段階的かつ実行可能な形で普及するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、環境基本計画その他環境に関する計画との整合を図りつつ、環境に係る新たな計画又は認定制度を創設する場合には、この法律に基づく農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに第九十八条に規定する環境負荷の評価及び指標に関する施策との重複により農業経営体に過度の事務負担を課することのないよう留意しなければならない。

 この条に規定する農業と環境との調和に関する基本方針は、第二条に規定する定義並びに次条から第百条までに規定する個別の環境、資源及び農業インフラに関する施策の解釈及び運用の基礎となるものとする。

(土壌及び水資源の保全)

第九十二条 国及び地方公共団体は、農地の土壌及び農業に利用される水資源(地下水を含む。以下この条及び第九十三条において「農業水資源」という。)が、食料の安定供給の基礎であるとともに、生態系の保全及び国土の保全に資する公共性の高い資源であることにかんがみ、環境基本法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、地下水の保全に関する法制その他の関係法令の定めるところを踏まえつつ、農業に係る施策を講ずるに当たり、土壌の保全及び農業水資源の適正な利用並びにその質及び量の維持向上が図られるよう必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の趣旨に従い、この法律に基づく施策を講ずるに当たり、次に掲げる事項につき総合的かつ計画的に取り組むものとする。

一 侵食、流亡、圧密その他の要因による農地の土壌劣化の防止及び改善並びに有機物の施用その他土壌の物理的・化学的性状の維持向上に資する農業生産方式の普及

二 窒素、りんその他の栄養塩類並びに農薬、家畜ふん尿その他の要因による農業起因の水質汚濁の防止及び改善

三 用排水路、ため池その他の農業水利施設の適切な維持管理と一体とした、農業水資源の取水、貯留及び還元の適正化

四 地下水位の過度の低下又は塩水化その他地下水環境に対する影響に配慮した取水の在り方

五 流域単位での水循環の健全化に資する農地及び農業用施設の管理

六 前各号に掲げるもののほか、土壌及び農業水資源の保全に資することが明らかである事項

 第二十二条に規定する農業経営体及び第三十条に規定する小規模農業経営体並びに地域小規模耕作に従事する者は、前二項の趣旨に留意し、その営む農業において、農薬及び肥料の適正な使用、家畜ふん尿その他の副産物の適正な処理及び再利用並びに土壌及び農業水資源の保全に資する耕作方法その他の農業生産方式の導入に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の取組が実効的に行われるようにするため、土壌及び農業水資源の保全に資する農業生産方式に係る技術指針の策定、研修の実施、経営安定対策との連動、環境保全型農業に対する支援その他必要な措置を講ずるよう努めるものとし、その際、農業経営体の規模、作目及び地域の自然的条件の相違に配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、土壌及び農業水資源の保全に関し、第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備、第九十三条に規定する農業水利施設の維持管理及び更新、第九十六条に規定する防災・減災に関する施策並びに第九十八条に規定する環境負荷の評価及び指標に関する施策との整合が図られるよう配慮するとともに、流域を単位とする関係自治体相互間及び河川管理者その他の関係機関との連携の下に施策を実施しなければならない。

 国及び地方公共団体は、土壌及び農業水資源の保全に関する新たな計画又は認定制度を創設する場合には、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画その他既存の計画との重複により農業経営体に過度の事務負担を課することのないよう留意するとともに、当該計画又は制度が土壌及び農業水資源に関する情報の収集、評価及び公表(第四十六条及び第九十八条に規定するものを含む。)の仕組みと一体として機能するようにしなければならない。

(農業水利施設の維持管理及び更新)

第九十三条 国及び地方公共団体は、農地に対する用水の供給及び排水並びに農業に係る水循環の適正な維持に資する用排水路、頭首工、揚水機場、ため池その他の農業用施設(以下この条において「農業水利施設」という。)が、食料の安定供給、農業経営の継続及び水害その他の災害の防止又は軽減の基礎となる公共性の高いインフラであることにかんがみ、環境基本法、河川法、水循環基本法その他の関係法令の定めるところを踏まえつつ、農業水利施設の適切な維持管理及び計画的な更新が図られるよう、必要な施策を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項に規定する農業水利施設の維持管理及び更新を行うに当たり、次に掲げる事項につき総合的かつ計画的に取り組むものとする。

一 農業水利施設の構造、規模及び機能並びに当該施設が受け持つ区域(受益地)を把握する台帳及び図面その他の基礎情報の整備及び更新

二 施設ごとの老朽度、耐震性及び洪水時の安全性その他のリスク評価に基づく、優先度を考慮した維持管理及び更新の長期計画の作成

三 日常の点検、軽微な補修及び操作に係る体制の整備並びにこれに従事する者の確保及び育成

四 更新又は大規模改修に当たり、農地の区画整理、農道の整備その他第四十五条に規定する土地改良及び基盤整備に関する施策との一体的実施

五 前各号に掲げるもののほか、農業水資源の保全(第九十二条)及び農村における防災・減災(第九十六条)に資することが明らかである措置

 農業水利施設の維持管理及び更新に要する費用の負担は、当該施設が有する公共性及び受益の範囲並びにその性質に応じて、国、地方公共団体及び第二十二条に規定する農業経営体その他の受益者との間で適正に配分されなければならない。この場合において、基礎的安全性の確保及び災害の防止又は軽減に係る費用については、公共性に応じ、国及び地方公共団体の負担割合が適切に確保されるよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業水利施設の維持管理及び更新に関し、その施行者として土地改良区その他の関係団体が果たしてきた役割に留意しつつ、公共組織法の定めるところにより、当該団体を指定公共組織又はこれに準ずる公共的主体として位置付けることができるものとし、その場合においては、当該団体のガバナンス及び財務の健全性の確保並びに地域の農業経営体との協働が図られるよう必要な措置を講じなければならない。

 農業水利施設の維持管理及び更新に係る事業について、契約の締結、入札その他の手続を行うに当たっては、第四十三条に規定する災害復旧に係る特例を含む災害対策基本法その他の関係法令の定めるところにより、平時からの包括的契約、単価契約その他の仕組みを活用することにより、災害その他緊急の事態の発生時においても、当該事業が遅滞なく実施されるよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業水利施設の維持管理及び更新に関する施策を講ずるに当たり、第四十条に規定する農業振興地域等のゾーニング、第四十二条に規定する農業用施設の位置付け、第九十二条に規定する土壌及び農業水資源の保全並びに第九十八条に規定する環境負荷の評価及び指標に関する施策との整合が図られるようにするとともに、流域を単位とする河川管理者その他の関係機関との連携の下にこれを実施しなければならない。

 農業水利施設の維持管理及び更新に関し、新たな計画又は認定制度を設ける場合においては、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに河川に関する基本方針その他の水資源に係る計画との重複により、施行者及び農業経営体に過度の事務負担を課することのないよう留意するとともに、当該計画又は制度が、第二項各号に掲げる台帳及び長期計画の整備並びにこれらに基づく優先度の明確化の仕組みと一体として機能するようにしなければならない。

(再生可能エネルギー及びバイオマスの活用)

第九十四条 国及び地方公共団体は、農地、農業水利施設及び農村地域において、太陽光、風力、水力、地熱その他の再生可能エネルギー並びに農産物及びその加工の過程で生ずる副産物、家畜排せつ物、稲わら、もみ殻その他の農業残さ、林地残材、食品廃棄物等のバイオマス(以下この条において「農業・農村バイオマス等」という。)を有効に活用することが、気候変動の緩和、エネルギーの安定供給及び農村経済の循環的な発展に資するとともに、適切に行われる限りにおいて農地の有する多面的機能及び農業経営の持続性の向上にも寄与するものであることにかんがみ、エネルギー政策その他の関係施策との整合を図りつつ、その活用を促進するために必要な施策を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の施策を講ずるに当たり、農業生産、農地の保全及び水資源の適正な利用並びに生物多様性の保全との調和が確保されるよう留意しなければならない。この場合において、農地の転用を前提として再生可能エネルギー発電設備その他の施設を設置することにより、農業生産の継続又は農地の有する多面的機能が不当に損なわれることのないよう、第三十六条から第四十一条まで及び第九十二条並びに第九十五条に規定するところを十分に踏まえつつ、必要な制限その他の措置が講じられなければならない。

 農地、農業用施設又は農村地域において再生可能エネルギーの利用に供する施設を設置し、又は農業・農村バイオマス等のエネルギー利用(熱利用を含む。)を行う者は、当該事業が当該地域の農業経営体の営む農業活動と両立し、又はこれを補完する形で行われるよう努めるとともに、次に掲げる事項に配慮しなければならない。

一 農業経営体による自家消費又は地域内消費を通じたエネルギーコストの低減その他農業経営の安定に資すること

二 農業水利施設における小水力発電その他水循環と調和したエネルギー利用が、水利秩序を害せず、かつ第九十三条に規定する施設の安全な維持管理に支障を及ぼさないこと

三 農業・農村バイオマス等の収集、貯留及び処理が、悪臭、水質汚濁その他の生活環境への悪影響を生じさせないこと

四 地域の景観及び生物多様性に与える影響が、第九十五条に規定する施策に照らし許容し得る範囲に抑えられること

 国及び地方公共団体は、前項に規定する再生可能エネルギーの利用及び農業・農村バイオマス等の活用が、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域防災計画及びエネルギーに関する計画その他の関係計画の枠組みの中で位置付けられるよう、関係行政機関及び電気事業者その他の関係事業者と連携して、その導入区域、設備の規模及び系統接続のあり方に関する調整を行わなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業・農村バイオマス等の活用に関し、その発生源となる農業経営体、食品関連事業者及び地方公共団体が共同して行うバイオガスプラントその他の施設の整備並びに消化液及び残さの農地への還元その他のカスケード利用が、土壌及び水質の保全(第九十二条)並びに温室効果ガス排出削減に資するよう、技術指針の策定、人材育成、財政上の措置その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 この条に基づく施策は、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法、バイオマス活用推進基本法その他の関係法令に基づく制度と調和を保ちつつ実施されるべきものであり、これらと重複する新たな許認可、計画又は認定制度を創設することを目的とするものと解してはならない。ただし、農業及び農村の特性を踏まえ、農地及び農業用施設の保全と両立した再生可能エネルギー及び農業・農村バイオマス等の活用を図るため特に必要がある場合には、第三十条、第三十七条、第四十三条及び第四十五条に規定する施策との一体的な運用の下に、農業法として必要最小限度の特例を設けることを妨げるものではない。

(景観及び生物多様性の保全)

第九十五条 国及び地方公共団体は、農地、農業用施設及び農村地域の景観並びにこれらに存する動植物その他の生物及びそれらの生育又は生息の場(以下この条において「農業・農村生態系」という。)が、食料の安定供給の基盤であるとともに、多面的機能の発揮、観光その他の地域産業の振興及び将来世代への環境資産の継承に資するものであることにかんがみ、環境基本法、生物多様性基本法及び景観法その他の関係法令の趣旨を踏まえつつ、農業及び農村における景観及び生物多様性の保全並びにその持続可能な利用に関し必要な施策を講じなければならない。

 国は、前項の施策を講ずるに当たり、農業基本計画において、農業及び農村における景観及び生物多様性の保全に関する基本的な方向を定めるとともに、農業・農村生態系が森林、河川、湿地その他の生態系と連続性を有することに鑑み、環境、国土利用、文化財保護その他の関係分野に係る計画との整合が図られるよう、関係行政機関の所掌事務の分担及び連携の在り方に関し必要な調整を行わなければならない。

 地方公共団体は、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに景観計画、地域環境計画その他の関係計画において、農業・農村生態系の保全に関し、農地及び農業用施設の配置、農業水利の運用、農道その他の農業インフラの整備、集落の立地及び更新その他の事項を総合的に位置付けるとともに、必要があると認めるときは、景観法に基づく景観計画区域、生物多様性の保全に資する区域その他の区域の指定及び当該区域において遵守すべき行為の基準を定め、農業経営体、地域住民その他の関係者による取組を支援するよう努めなければならない。

 農業経営体は、その行う耕起、作付け、放牧、草刈り、樹木の管理その他の営農活動に際し、第三条、第六条及び第九十二条に規定する基本理念に留意し、農道、用排水路、畦畔及び屋敷林その他農業・農村生態系の構成要素が、多様な生物の生育又は生息の場として維持されるよう努めるとともに、農薬及び肥料の使用、耕起の時期及び方法、水田における湛水期間の設定その他の営農慣行について、生物多様性への影響が不当に大きくならないよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項の取組その他農業及び農村における景観及び生物多様性の保全に資する活動を行う農業経営体、地域住民の組織、農業協同組合等及び指定公共組織に対し、第三条及び第七条に規定する多面的機能の発揮に資する施策並びに第七十三条に規定する有機農業及び環境保全型農業に関する施策と一体として、必要な技術的助言、人材育成、情報提供及び財政上の措置その他の支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村景観の保全及び生物多様性の保全に関し、各地域において先行して講じられている条例その他の取組の状況を把握し、これらの成果及び課題を検証した上で、農業法その他の関係法令及び政令に基づく施策の内容の見直しに適切に反映するよう努めなければならない。

 この条に基づく施策は、第七条、第六章に規定する流通、加工及び食料供給連鎖に関する施策、第九十二条に規定する土壌及び水資源の保全並びに第九十四条に規定する再生可能エネルギー及びバイオマスの活用に関する施策と相まって実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的とするものと解してはならない。ただし、農業及び農村の特性に即し、農業・農村生態系の保全のため特に必要がある場合には、農業法として必要最小限度の特例を設け、当該特例を公共組織法、公共施設法その他の関係法制との整合の下に運用することを妨げるものではない。

(農地及び農村における防災及び減災)

第九十六条 国及び地方公共団体は、地震、津波、風水害、豪雪、火山噴火その他の自然災害又はこれらに起因する事故若しくは障害が、農地、農業用施設及び農村地域の居住環境に対し重大な被害を及ぼし、又は及ぼすおそれがあることにかんがみ、災害対策基本法、国土強靱化基本法その他の関係法令の趣旨を踏まえつつ、食料の安定供給の確保、農業経営の継続及び農村社会における生活の安全並びに第六条及び第九十五条に規定する環境及び生物多様性の保全に資するよう、農地及び農村における防災及び減災に関し必要な施策を総合的かつ計画的に講じなければならない。

 国は、前項の施策を講ずるに当たり、農業基本計画において、農地及び農村における防災及び減災に関する基本的な方向、優先すべき施策の分野及び農地等に係るリスクの評価の方法を定めるとともに、災害対策基本法に基づく防災基本計画、国土強靱化基本計画その他の関係計画との整合を図り、当該施策が第九条に規定する農業行政の組織及び第四十条、第四十三条及び第九十三条に規定する施策と一体として実施されるよう、関係行政機関の所掌事務の分担及び連携に関し必要な調整を行わなければならない。

 地方公共団体は、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域防災計画、地域国土強靱化計画その他の関係計画において、農地及び農村における防災及び減災に関し、当該地域の地形、気象、土地利用の状況及び農業構造を踏まえ、次に掲げる事項を総合的に位置付けなければならない。

一 洪水、土砂災害、津波その他の災害リスクが高い区域に所在する農地及び農業用施設の把握並びにその利用及び配置の見直しに関する基本的な方針

二 農業用用排水施設、農道、農業用ため池その他の農業インフラについての耐震化、老朽化対策及び機能維持に係る中長期的な計画

三 避難経路、避難場所及び農業物資の集積場所としての農業用施設又は公共施設の活用に関する方針

四 災害時における農産物の収穫、保管及び緊急流通に関する体制の整備

五 前各号に掲げるもののほか、当該地域における農業及び農村の実情に応じた防災及び減災に関する事項

 国及び地方公共団体は、前項の施策を実施するに当たり、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、農業委員会、土地改良区その他の関係主体と連携し、次に掲げる措置を重視して講ずるよう努めなければならない。

一 農地、農業用施設及び農村集落に係るハザードマップその他の災害リスク情報の整備及び公表

二 農業経営体及び地域住民に対する防災訓練、避難訓練、情報伝達訓練その他の教育及び啓発

三 農業版事業継続計画(BCP)の策定及び第三十五条並びに第五十八条に規定する労働条件及び経営継続に関する施策と連動した災害対応体制の整備

四 被災の反復が見込まれる区域に所在する農地及び農業用施設についての、移転、用途転換その他の恒久的な対策に係る検討及び実施

 農業経営体は、その行う営農活動に際し、第三条、第六条、第九十二条及び前条に規定する基本理念に留意し、用排水管理、圃場整備、作付け体系その他の営農上の工夫を通じて、水害、土砂災害、干ばつその他の災害リスクの軽減に資するよう努めるとともに、前項第三号に規定する農業版事業継続計画の策定及び更新に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第一項から前項までに規定する施策を講ずるに当たり、特に、離島、中山間地域その他地理的条件等により災害時における救援及び物資輸送が遅延し得る地域において、第三十条に規定する小規模農業経営体及び地域小規模耕作並びに第九十条に規定する非常時における流通及び供給確保に関する施策と一体として、当該地域における食料の自給体制が災害時にも一定程度維持されるよう配慮しなければならない。

 この条に基づく施策は、第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧に関する施策と相まって実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的とするものと解してはならない。ただし、農業及び農村の特性に即し、防災及び減災の観点から特に必要がある場合には、農業法として必要最小限度の特例を設け、当該特例を公共組織法、公共施設法その他の関係法制との整合の下に運用することを妨げるものではない。

(農業インフラと統合公共施設との連携)

第九十七条 国及び地方公共団体は、農地、農業用用排水施設、農道、集出荷施設、貯蔵・加工施設その他の農業インフラが、公共施設法に基づき整備される統合公共施設その他の公共施設と相まって、当該地域における食料の安定供給、農業経営の安定及び農村社会の生活の利便性並びに第九十六条に規定する防災及び減災に資するよう、これらの配置及び機能について必要な連携を図らなければならない。

 国は、前項の趣旨に沿い、農業基本計画において、農業インフラと統合公共施設その他の公共施設との連携に関する基本的な方向、重点的に整備すべき地域及び施設の類型並びに当該連携を通じて達成すべき目標の概要を定めるものとし、当該定めをするに当たっては、公共施設法に基づく国の計画、国土強靱化基本計画、第四十条、第四十三条、第九十三条及び第九十六条に規定する施策との整合が図られるよう配意しなければならない。

 地方公共団体は、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに公共施設法に基づき定める公共施設に関する計画その他の関係計画において、地域の農業インフラと統合公共施設その他の公共施設との連携に関し、次に掲げる事項を総合的に位置付けなければならない。

一 農産物の集出荷、貯蔵及び簡易加工のための施設と、統合公共施設その他の公共施設との一体的な配置又は近接配置に関する方針

二 農道その他の農業用道路のうち、通学、通勤、避難その他一般交通の利用が相当程度見込まれるものについて、道路法に基づく道路との機能分担及び連携に関する方針

三 災害その他の非常時において、統合公共施設が避難所又は物資集積拠点として機能する場合における、周辺農地及び農業用施設との役割分担並びに農産物の緊急供給体制に関する方針

四 前各号に掲げるもののほか、当該地域の農業及び農村の実情に即した農業インフラと公共施設との連携に関する事項

 国及び地方公共団体は、農地、農業用用排水施設、農道その他の農業インフラの新設又は更新を行うに当たり、前項各号に掲げる方針に照らし、当該施設が統合公共施設その他の公共施設と共通して利用し得る機能又は相互に補完し得る機能を有するよう設計し、又は改良することにより、当該地域における公共投資の効率性及び住民の利便性の向上に資するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第一項から前項までに規定する施策を実施するに当たり、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、農業委員会、土地改良区その他農業インフラの整備及び管理に関係する主体並びに公共施設法に基づき統合公共施設その他の公共施設を管理する主体との間で、情報の共有及び協議の場の設置その他必要な連携の枠組みを整備するよう努めなければならない。

 この条に基づく施策は、第四十三条に規定する農地及び農業用施設の災害復旧、第八十九条に規定する地域流通拠点の整備、第九十条に規定する非常時における流通及び供給確保並びに第九十六条に規定する農地及び農村における防災及び減災に関する施策と一体として実施されるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(環境負荷の評価及び指標)

第九十八条 国及び地方公共団体は、農業が土壌、水、大気、生態系その他の環境に及ぼす影響(以下この条において「農業環境負荷」という。)を適切に把握し、かつ、これを継続的に低減することに資するよう、環境基本法その他の環境に関する法令並びに国際的な枠組みに照らしつつ、農業環境負荷に係る評価の方法及び指標(以下この条において「環境負荷指標」という。)の整備及び改善に努めなければならない。

 国は、前項の趣旨に沿い、農業基本計画において、環境負荷指標の体系及びその活用の基本的な方向を定めるものとし、この場合においては、次に掲げる事項について必要な配慮をしなければならない。

一 温室効果ガスの排出及び吸収、窒素その他の栄養塩類の流出、用水の使用、土壌中の有機物の量、生物多様性の状況その他農業環境負荷の主たる要素を、統計法その他の関係法令に基づく統計及び調査により定量的に把握し得るようにすること。

二 農業経営体の規模、作目、生産方式及び地域の条件の差異を考慮しつつ、単位面積当たり、単位生産量当たり又は単位販売額当たりその他客観的に比較し得る単位による指標を採用し、時間の経過及び地域間の比較が可能となるようにすること。

三 ライフサイクルアセスメントその他の方法を活用し、可能な限り生産から流通、加工及び消費に至る段階を通じた環境負荷の評価に資するよう配慮すること。

四 環境負荷指標の設定及び見直しに当たっては、農業生産の安定、食料の安定供給、農業経営の持続性及び農村社会の維持との均衡が図られるようにすること。

 国及び地方公共団体は、農業経営体その他農業に関係する事業者が、前項第二号に規定する単位その他客観的な指標に基づき、自らの営む農業活動に伴う農業環境負荷の状況を把握し、その改善に向けた取組を自発的かつ段階的に行うことができるよう、環境負荷指標の内容及び算定方法に関する情報の提供、人材育成、技術的助言その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 農業環境負荷の評価の結果は、第五十一条から第六十三条までに規定する農業経営の安定及び農業安定対策に関する施策、第七十三条及び第七十四条に規定する有機農業及び環境保全型農業並びに農薬及び肥料の適正使用に関する施策、第九十六条に規定する農地及び農村における防災及び減災に関する施策その他この法律に基づく施策の企画、実施及び評価に際して、客観的な判断の資料として活用されるものとし、その運用に当たっては、小規模農業経営体及び地域小規模耕作を含む多様な農業形態が不当に不利益な取扱いを受けることのないよう配慮しなければならない。

 国及び地方公共団体は、環境負荷指標に基づく施策の実施状況及びその効果について、第百六条から第百九条までに規定する調査、統計、情報及び行政評価の仕組みを通じて定期的に検証し、その結果を踏まえ、環境負荷指標の見直しその他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 この条に基づく環境負荷指標の整備及び運用並びに農業環境負荷の評価に関する施策は、有機農産物等の認証その他既存の認証制度を補完するための技術的基盤として位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(環境施策における住民参加)

第九十九条 国及び地方公共団体は、農業と環境との調和に関する施策(第九十一条から前条までに規定する施策をいう。以下この条において同じ。)を策定し、又は実施するに当たり、当該施策の対象となる地域の住民、農業経営体、地域小規模耕作に従事する者、環境保全活動を行う団体その他の関係者(以下この条において「地域住民等」という。)が、その内容を理解し、かつ、その意見を表明し得る機会が確保されるよう、説明会の開催、意見公募手続その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域防災計画、環境基本計画その他の関係計画において、農地、農業用水、里地里山その他の農業及び農村に係る環境資源の保全に関する目標及び取組の方向を明らかにするとともに、統合公共施設その他の公共施設を活用し、地域住民等が当該目標及び取組の内容について学習し、意見を交換し、及び提案を行う場を継続的に提供するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、地域住民等が行う農地及びその周辺の清掃、景観形成、里地里山の保全、生物多様性の保全、農業用水路の維持その他農業及び農村に係る環境保全に関する自発的な活動が、第九十二条、第九十五条及び第九十六条に規定する施策と相まって効果的に機能するよう、農業協同組合等、農地管理機関、農業経営支援機関及び農業委員会その他の関係機関と連携しつつ、情報の提供、技術的助言その他必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業及び農村に係る環境負荷の低減に関する規制又は支援に関し、地域住民等の負担に重大な影響を及ぼし得る措置を講ずるに当たっては、第九十八条に規定する環境負荷指標その他の客観的な資料を用いてその必要性及び合理性を明らかにするとともに、当該地域の農業構造及び生活実態に照らし、地域住民等の意見が十分に反映されるよう配慮しなければならない。

 この条に基づく住民参加に関する措置は、環境基本法その他の環境に関する法令に基づき講じられる住民参加の仕組みを補完する技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな審議会、協議会その他の計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(国際的な環境協調及び約束の履行)

第百条 国は、農業に係る温室効果ガスの排出の抑制及び吸収源としての機能の強化並びに生物多様性の保全その他の環境の保全に関し、気候変動に関する国際連合枠組条約その他の環境に関する国際条約及びこれに基づく合意(以下この条において「環境関連国際約束」という。)の内容を踏まえ、食料の安定供給の確保及び世界的な食料安全保障への寄与の観点から、農業分野における施策を講ずるに当たり、当該環境関連国際約束の適切な履行に資するよう配慮しなければならない。

 国は、環境基本法、生物多様性基本法及び気候変動適応法その他の環境に関する法令に基づき定められる環境の保全に関する基本的な計画並びに第十四条に規定する農業基本計画との整合を図りつつ、農業分野における温室効果ガスの排出削減及び吸収の強化、生物多様性の保全及び回復並びに気候変動への適応に関する中長期的な目標及び実施の方針を明らかにし、その達成のために必要な施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 国は、環境関連国際約束に基づき行われる温室効果ガスインベントリの作成、生物多様性に係る指標の整備その他の報告及び検証に関し、第九十八条及び第百六条に規定する環境負荷の指標並びに調査及び統計に関する仕組みを活用し、農業分野に係る情報が正確かつ継続的に把握され、並びに内外に対し分かりやすい形で提供されるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、環境関連国際約束の趣旨に沿い、持続可能な農業の普及、気候変動への適応及び生物多様性の保全に資する技術、知見及び制度に関し、開発途上国その他の外国との間で技術協力、人材育成及び共同研究その他の国際協力を推進するとともに、当該国際協力が世界的な食料安全保障及び地域における農村の持続可能な発展に資するよう配慮しなければならない。

 この条に基づく施策は、環境に関する法令及び外交に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業分野に係る役割及び分担を明らかにする技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農村社会の持続可能性の基本方針)

第百一条 農村社会は、食料の安定供給の基盤であるとともに、国土及び環境の保全、文化及び生活様式の継承並びに防災・減災その他の多面的な機能を有し、これが長期にわたり安定して維持され、世代を超えて継承されることが、我が国全体の持続可能な発展にとって不可欠である。このため、農村社会の持続可能性は、農業及びこれに関連する産業の健全な発展と並行して確保されなければならない。

 国は、前項の趣旨に基づき、公共組織法、公共施設法及び財政会計法その他の関係法令に従い、農村における雇用及び所得の機会の確保、生活環境の整備、地域に根差した文化及びコミュニティ活動の維持並びに次世代への継承に資する施策を、農業基本計画その他の関係計画に即して、総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画に即して定める都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域再生その他の地域振興に関する計画との整合を図りつつ、当該地域の農業の実情及び人口・産業構造を踏まえ、農村における教育、医療、福祉、交通その他の生活基盤の整備及び地域コミュニティの維持に関する施策を総合的に講じ、その持続可能性が確保されるよう努めなければならない。

 農村社会の持続可能性に関する施策は、農村への移住及び定住その他人の移動に関する施策を、当該地域における産業及び雇用の確保並びに生活環境の整備に係る施策と一体として位置付けることを基本とし、単に人口の数値目標の達成のみを目的とするものとしてはならない。この場合において、国及び地方公共団体は、既に農村に居住し又は農業に従事している者の生活の安定及び将来の展望の確保を優先して考慮しなければならない。

 この法律に基づく農村社会の持続可能性に関する施策は、過疎地域の持続的発展の支援に関する法律その他の地域振興及び人口対策に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村に係る役割及び分担を明らかにする技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農村における生活環境の整備)

第百二条 農村に居住し、又は農業その他当該地域に根差した事業に従事する者は、その居住地が都市部から地理的に離隔していることその他の事情を考慮してもなお、医療、保健、介護、子育て支援、教育、文化、情報通信、金融、商業及び地域公共交通その他の日常生活に不可欠なサービスについて、不合理な格差を受けることなく、当該地域の実情に即した適切な水準の提供を受けることができるようにされなければならない。

 国は、前項の趣旨に基づき、公共組織法、公共施設法及び財政会計法その他の関係法令の定めるところにより、医療提供体制、教育体制、福祉・子育て支援体制及び地域公共交通その他の生活基盤に係る全国的な基準又は指針を整備するとともに、統合公共施設その他の地域拠点を活用した複合的なサービス提供、情報通信技術を活用した遠隔医療・遠隔教育等の仕組みの導入を通じて、農村における生活環境の整備及びその持続可能な維持に必要な施策を総合的かつ計画的に推進しなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画に即して定める都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに医療計画、介護保険事業計画、子ども・子育て支援事業計画、地域公共交通に関する計画その他の関係計画との整合を図りつつ、当該地域の人口規模、地理的条件及び交通条件等を踏まえ、統合公共施設を含む公共施設の配置及び機能分担、地域公共交通の系統及び運行形態並びに情報通信基盤の整備その他の施策を総合的に講じ、農村における生活環境の確保及び改善に努めなければならない。

 地方公共団体は、前項に規定する施策を実施するに当たり、既に農村に居住する者及び農業経営体の生活及び事業の継続性に与える影響に十分配慮するとともに、将来当該地域に居住し、又は当該地域において農業その他の事業に参画しようとする者が、安心して生活基盤を形成し得るよう、医療、教育、福祉及び交通その他の生活サービスに係る中長期的な見通しを明らかにするよう努めなければならない。

 この法律に基づく農村における生活環境の整備に関する施策は、医療法、介護保険法、子ども・子育て支援に関する法律、学校教育法、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律その他の生活基盤に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村の観点から当該施策間の連携及び分担を明らかにする技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(人材育成及び教育・共通試験法との連携)

第百三条 農業及び農村は、長期にわたり持続的にこれを維持し、かつ発展させるため、高度な専門的知識及び技能のみならず、経営管理、情報の利活用、環境及び安全に関する知見並びに地域社会との協働に関する能力を備えた多様な人材を必要とする。このため、農業経営体及び農村社会に関わる者は、その世代を問わず、その置かれた事情に応じて、生涯にわたり体系的かつ段階的な学習及び能力開発の機会を保障されるようにされなければならない。

 国は、前項の趣旨に基づき、学校教育、職業教育訓練、農業改良普及事業その他の社会教育及び職業能力開発に関する施策と農業及び農村に関する施策との連携を図りつつ、高等学校、中等教育学校又は専修学校その他の農業教育を行う機関、農業大学校、大学及び大学院並びに農業者研修施設、農業改良普及組織等における教育及び研修の内容及び水準の充実を図り、もって農業及び農村を担う人材の育成及び確保に必要な措置を講じなければならない。

 国は、共通試験法に基づく評価及び資格付与の枠組みにおいて、農業及び農村に関する学習及び実務経験が、他の分野の学習及び経験と比較して不利な取扱いを受けることがないよう配慮するとともに、農業経営体における実地研修、農村地域における地域活動、農業改良普及事業における指導その他の学習及び教育に資する活動が、当該法に基づく教育通貨その他の評価単位として適切に位置付けられるよう、必要な措置を講じなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに教育及び職業能力開発に関する計画との整合を図りつつ、統合公共施設、学校、農業大学校、農業者研修施設その他の学習拠点を活用し、地域の農業経営体、農業協同組合等、農業委員会、農業改良普及組織、大学その他の高等教育機関及び民間事業者との連携の下に、農業及び農村を担う人材の育成のための講座、研修、実習その他の取組を計画的に実施するよう努めなければならない。

 地方公共団体は、前項に規定する取組を実施するに当たり、農業経営体に属する者が、その就業形態及び生活状況に応じ、過度の負担を負うことなく当該取組に参加することができるよう配慮するとともに、農業経営体自らが、共通試験法に基づく教育の提供主体として、実習の受入れ、講師の派遣その他の形で教育活動に参画することができるよう、必要な支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、第三十一条に規定する農業に従事する外国人その他の外国人材に対する日本語教育、農業に関する基礎的な知識及び安全衛生に関する教育その他必要な教育及び研修が適切に行われ、その成果が共通試験法その他の関係法令に基づく資格及び在留資格の取得又は更新において正当に評価されるよう、関係行政機関相互の連携を図りつつ必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 この法律に基づく人材育成及び教育に関する施策は、共通試験法その他教育及び職業能力開発に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村の観点から当該施策間の連携及び分担を明らかにする技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農村コミュニティビジネス及び多様な働き方)

第百四条 農村地域においては、農業を基幹としつつ、観光、加工、福祉、教育、文化、情報通信その他の多様な分野の事業を相互に結び付け、地域住民が共同して行う事業(以下この条において「農村コミュニティビジネス」という。)を通じて、雇用及び所得の機会を創出し、日常生活に必要なサービスを維持し、並びに農村社会における新たな需要及び価値を形成することが、農村社会の持続可能性の確保に資するものであることにかんがみ、当該農村コミュニティビジネスが適切に育成され、かつ、その成果が地域に還元されるようにすることが重要である。

 国は、前項の趣旨に基づき、農山漁村振興に関する施策、地域再生に関する施策、雇用及び中小企業の振興に関する施策並びに観光、福祉、教育及び文化に関する施策との有機的な連携を図りつつ、農村コミュニティビジネスの立ち上げ、事業化及び継続的な運営に必要な人材、資金、情報その他の資源が確保されるよう、必要な助言その他の支援を行わなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域の総合計画その他の関係計画との整合を図りつつ、統合公共施設その他の地域拠点を活用し、農業経営体、農業協同組合等、農業委員会、商工業者、福祉及び教育に係る団体その他の関係者の参画を得て、農村コミュニティビジネスに関する構想の策定、協議の場の設置、共同利用施設の整備その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村コミュニティビジネスの発展が、農業経営体による本来の農業生産活動を不当に阻害することのないよう配慮するとともに、当該事業に従事する者の就業実態が、第三十五条及び関係労働法令に照らし適正な労働条件の下に置かれることを損なうことがないよう、雇用契約、請負その他の契約形態のいかんを問わず、必要な情報提供及び助言その他の支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村における多様な働き方として、複数の事業所又は職種に従事する多元的就業、都市と農村とを往来する二地域居住と就業の組合せ、情報通信技術を活用した遠隔就労その他の形態が、農業経営体及び農村コミュニティビジネスにおける就業機会と両立し得るよう、関係する産業及び雇用に関する施策と連携しつつ、その導入及び環境整備に関する施策を講ずるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村コミュニティビジネス及びこれと関連する多様な働き方の推進に当たり、家族内の無償又は著しく低い対価による労働の提供が当然視され、又は特定の者に過度に集中することにより、当該者の健康、生活又は将来の就業の機会が不当に制約されることのないよう配慮するとともに、第三十一条及び第三十五条に規定する外国人その他の人材の適正な受入れ及び処遇が損なわれることのないよう留意しなければならない。

 この法律に基づく農村コミュニティビジネス及び多様な働き方に関する施策は、地域再生に関する法律その他の地域振興及び雇用に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村の観点から当該施策間の連携及び分担を明らかにする技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農村の福祉、子育て及び多様性への配慮)

第百五条 農村地域においては、農業に従事する者及びその家族並びにその他の住民が、年齢、性別、心身の状態、国籍その他の属性にかかわらず、健康で文化的な生活を営み、かつ、その尊厳が保持されるようにすることが、農業及び農村の持続可能な発展の基礎となるものであることにかんがみ、福祉、保健医療、介護、子育て及び教育に係る施策が、農業及び農村政策と有機的に連携して推進されなければならない。

 国は、前項の趣旨に基づき、社会福祉法、介護保険法、子ども・子育て支援に関する法律、男女共同参画社会基本法その他の関係法令に基づく施策と、この法律に基づく農業及び農村に関する施策との連携を図りつつ、農村地域における福祉、保健医療、介護及び子育て支援の体制が、都市部と比較して過度の不利益を生じることのないよう配慮し、必要な財政上及び技術上の措置を講じなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域福祉計画、地域医療構想、子ども・子育て支援事業計画その他の関係計画との整合を図りつつ、統合公共施設その他の地域拠点を活用し、農業経営体、小規模農業経営体及び地域小規模耕作に従事する者を含む地域住民が、身近な場所において必要な福祉、医療、介護、保育及び教育等のサービスを受けることができるよう、当該サービスの提供体制の整備に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村地域における子育ての支援に当たり、農繁期と農閑期の季節的な就労形態及び複数の就業を組み合わせる多様な働き方の実情に配慮し、保育所、認定こども園、学童保育その他の子育て支援の事業について、その開所時間及び利用形態の柔軟化その他の工夫を促すとともに、父母その他の保護者が、性別にかかわらず子育てに参画しつつ農業その他の就業を継続し得るよう、必要な情報提供及び助言その他の支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農業及び農村に関する施策を講ずるに当たり、家族であること又は親族であることを理由として、無償又は著しく低い対価による長時間の労働の提供が当然視され、又は特定の者に過度に集中することにより、当該者の健康、学習若しくは生活又は将来の就業の機会が不当に制約されることのないよう配慮するとともに、第三十一条及び第三十五条の規定と相まって、外国人その他の多様な属性を有する者が農業に従事する場合における適正な労働条件及び人権の尊重が確保されるよう留意しなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村地域において農業に従事し、又は従事しようとする外国人及びその家族が、地域社会の一員として円滑に生活し、教育、医療及び福祉その他の日常生活に必要なサービスにアクセスすることができるよう、日本語教育その他の生活支援、相談体制の整備並びに地域住民との相互理解の増進に資する施策を講ずるよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、農村地域における男女のいずれかに不当に偏った役割分担、性別その他の属性を理由とする差別、家庭内暴力、性暴力、セクシュアル・ハラスメント及びパワー・ハラスメントその他の人権侵害が、農業及び農村に関する施策の実施に伴い助長されることのないよう配慮するとともに、これらの行為の防止及び被害者の保護に関し、関係法令に基づく施策と連携して必要な啓発及び支援を行うよう努めなければならない。

 この法律に基づく農村の福祉、子育て及び多様性への配慮に関する施策は、社会福祉、保健医療、介護、子育て支援、男女共同参画及び人権の保障に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村の観点から当該施策間の連携及び分担を明らかにする技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな権利の創設又は計画若しくは認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(農業に関する調査及び統計)

第百六条 国は、食料の安定供給の確保、農業経営の健全な発展及び農村社会の持続的な維持に関する施策を適切に企画し、実施し、及び評価するために必要な農業、農地、農村及び食料に関する調査及び統計(以下この条において「農業統計等」という。)を、統計法(平成十九年法律第五十三号)その他の関係法令の定めるところにより、計画的かつ継続的に実施しなければならない。

 農業統計等は、この法律において定める農業経営体、小規模農業経営体、地域小規模耕作、農地その他の基本的概念及び単位と整合するよう設計されなければならず、統計上の単位、区分及び定義は、長期にわたる比較可能性が確保されるよう、安易に変更してはならない。やむを得ず変更をする場合においては、新旧の区分及び定義の対応関係並びにこれに伴う数値の変化が明らかになるような経過的な統計を整備しなければならない。

 農業統計等は、基幹統計として全国を対象として定期的に実施される調査(農林業センサスその他の全国調査を含む。)と、特定の地域、作物又は課題に係る詳細な実態把握を目的とする調査(標本調査及び行政記録情報の活用に係るものを含む。)とを適切に組み合わせて実施されなければならない。この場合において、調査対象者の負担の軽減に配慮し、既存の行政情報の活用その他の工夫を行うものとする。

 農林水産省は、農業統計等に関する基本計画及び手法の統一に係る事務を総括し、農業に関する基幹統計及び一般統計の整備を図るとともに、地方公共団体その他の関係行政機関が行う農業に関する調査及び統計が、この法律及び統計法の趣旨に即して一体的かつ効率的に実施されるよう、必要な調整及び助言を行わなければならない。

 地方公共団体は、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びに地域における農業及び農村に関する施策の企画及び実施に資するため、農業統計等の実施に協力するとともに、地域の実情に応じた補完的な調査及び統計を行うよう努めなければならない。この場合において、当該調査及び統計は、国が実施する農業統計等との整合性に配慮して設計されるものとする。

 農業統計等は、前各項に規定する目的に限り、公平かつ中立な立場から、科学的に妥当な方法により実施されなければならない。農業統計等の作成に用いられる個人又は法人に関する情報は、統計法の定めるところにより、統計目的以外に利用してはならず、当該情報に係る者の権利利益の保護に十分配慮して取り扱われなければならない。

 農業経営体、小規模農業経営体及び地域小規模耕作に従事する者その他農業統計等の対象となる者は、統計法その他の関係法令の定めるところにより、農業統計等の実施に関し、必要な報告、資料の提出その他の協力を行うよう努めなければならない。この場合において、国及び地方公共団体は、調査の趣旨、利用目的及び結果の公表方法について分かりやすい説明を行い、当該対象者の理解の増進に努めなければならない。

 農業統計等の結果は、第十四条に規定する農業基本計画、第二十一条に規定する農業構造改革に関する施策、第五十一条に規定する農業経営安定の基本方針その他この法律に基づく主要な施策の策定及び見直し並びに第六十三条及び第百九条に規定する評価及び第三者評価の実施に当たり、客観的な根拠として活用されなければならない。

 この条に規定する農業統計等に関する施策は、統計法その他の統計に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村に関する統計の体系及び用語の統一を図るための技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな統計制度又は計画若しくは認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(情報公開及びデータの利用)

第百七条 国は、この法律に基づく施策の企画、実施及び評価に関する状況その他農業、農地、農村及び食料に関する重要な情報について、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)、公文書等の管理に関する法律(平成二十一年法律第六十六号)その他の関係法令の定めるところにより、国民の理解の増進及び主体的な参加に資するよう、計画的かつ分かりやすい方法で公表しなければならない。

 地方公共団体は、前項に規定する情報のうち当該地方公共団体が保有するものについて、同項に掲げる法令及び当該地方公共団体の条例の定めるところにより、公表及び閲覧に係る体制の整備に努めるとともに、農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画並びにこれらに基づく施策の実施状況について、地域の実情に即した形で住民に分かりやすく提供するよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前二項に規定する情報及び第百六条に規定する農業統計等(個人情報、営業上の秘密その他公表することにより正当な利益を害するおそれがある情報を除く。)について、官民データ活用推進基本法(平成二十八年法律第百三号)その他の関係法令の定めるところにより、機械判読に適した形式及び標準的な分類体系その他の共通仕様を用いて整備し、二次利用が容易となるよう、その公開及び提供の促進に努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前項に規定する情報及びデータの公開及び提供に当たり、農業経営体、小規模農業経営体及び地域小規模耕作に従事する者並びに実需者、流通事業者、金融機関、研究機関その他の関係者が、当該情報及びデータを利用して農業経営の改善、新たな事業の創出、技術開発その他この法律の目的の達成に資する取組を行うことができるよう、利用条件、提供方法及び利用上の留意事項を明確にし、必要な助言その他の支援を行うよう努めなければならない。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する情報及びデータの提供に当たり、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)その他の個人情報の保護に関する法令並びに不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)その他の営業上の秘密の保護に関する法令の趣旨に十分配慮しなければならない。この場合において、当該情報及びデータに含まれる個人情報又は営業上の秘密に係る部分については、統計的手法その他適切な方法により匿名加工情報又は集計情報として取り扱う等、権利利益の保護に必要な措置を講じなければならない。

 国及び地方公共団体は、前各項に規定する情報及びデータについて、公共施設法に基づき統合公共施設として設置されるものその他の公共施設における閲覧の機会の確保、刊行物その他のアナログ媒体による提供並びにインターネットを利用した提供を適切に組み合わせることにより、高齢者、障害のある者その他情報通信技術の利用になじまない者を含む国民が、必要に応じて当該情報及びデータにアクセスすることができるよう配慮しなければならない。

 農林水産省は、第三項に規定する情報及びデータの標準的な分類体系その他の共通仕様並びに公表及び提供の方法について、この法律及び統計法その他の統計に関する法令の趣旨を踏まえつつ、関係行政機関及び地方公共団体との協議を経て定めるとともに、その見直しに係る手続を含め、その内容を公表しなければならない。

 この条に規定する情報公開及びデータの利用に関する施策は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、官民データ活用推進基本法その他の情報の公開及びデータの利活用に関する法令に基づき講じられる施策を補完し、農業及び農村に関する情報及びデータの体系及び用語の統一並びに利用環境の整備を図るための技術的な枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(審議会及び協議会の設置)

第百八条 国は、この法律に基づく施策を総合的かつ計画的に推進するため、農林水産省に、農業及び農村に関する施策の企画、実施及び評価に関する重要事項を調査審議する機関として、農業政策審議会(仮称)(以下この条において「審議会」という。)を置く。

 審議会は、次に掲げる事項について調査審議し、その結果を国に建議し、又は国の諮問に答申する。

一 農業基本計画の策定、変更及び見直しに関する事項

二 都道府県農業計画及び市町村農業計画の策定状況並びに国と地方公共団体との間の施策の整合に関する事項

三 第二編から第八編までに定める主要施策の体系及び運用の基本方針に関する事項

四 農地制度、農業経営の安定、需給及び価格の安定、災害復旧その他の重要事項であって、施策の総合調整を要するもの

五 前各号に掲げるもののほか、この法律の目的の達成に関し必要な重要事項

 審議会は、前項各号に掲げる事項を調査審議するに当たり、学識経験者、農業に従事する者、農業協同組合等の協同組織、実需者及び流通事業者、消費者、金融機関、地方公共団体の職員その他の関係者の意見が適切に反映されるよう、その組織及び運営において必要な措置を講じなければならない。

 国は、審議会の調査審議が、特定の利害関係者に偏することなく、かつ、専門的知見及び実務上の知見の双方に基づき行われるよう、委員の任命、議事運営、利益相反の管理その他必要な事項について、政令で定める基準に従い適正に措置しなければならない。

 都道府県及び市町村は、それぞれ、その区域の実情に応じ、都道府県農業計画及び市町村農業計画の策定及び実施並びに第二十六条に規定する地域農業戦略の推進に関し必要な事項を協議するため、条例で定めるところにより、審議会に準ずる協議会その他の合議制の機関(以下この条において「地方協議会」という。)を置くことができる。

 地方協議会は、農業委員会、農地管理機関、農業経営支援機関、農業協同組合等、地方公共団体の関係部局その他の関係機関の連携が確保されるよう、その構成員及び協議事項を定め、必要に応じて分科会その他の部会を置くことができる。

 国及び地方公共団体は、審議会及び地方協議会の議事の要旨、提出資料その他の運営に関する情報について、第百七条の趣旨に沿い、適切に公表するよう努めなければならない。ただし、公表することにより個人情報の保護又は営業上の秘密の保護その他の正当な利益を害するおそれがある場合は、この限りでない。

 この条に基づく審議会及び地方協議会は、審議会等設置法その他の一般法に基づき設置される審議会等と整合を図りつつ、この法律に基づく施策の総合調整及び実務上の運用の統一に資するための枠組みとして位置付けられるべきものであり、これらと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(行政評価及び第三者評価)

第百九条 国は、この法律に基づく施策が、食料の安定供給の確保、農業経営の健全な発展及び農村社会の持続可能性の確保その他この法律の目的の達成に資するよう、当該施策の実施状況及びその効果について、適時に把握し、評価し、及びその結果を踏まえて見直しを行わなければならない。

 前項の評価及び見直しは、行政評価法その他の関係法令の定めるところにより、可能な限り客観的な指標に基づき、かつ、計画(農業基本計画、都道府県農業計画及び市町村農業計画をいう。以下この条において同じ。)の体系に即して行われなければならない。

 国は、前二項の評価のうち、特に重要な施策分野(農地の利用調整、経営安定対策、需給及び価格のモニタリング、災害復旧その他政令で定めるものをいう。)については、第三者評価を実施しなければならない。

 第三者評価は、審議会その他政令で定める独立性を有する機関又はこれに準ずる者により行われるものとし、評価に当たっては、学識経験者の知見に加え、現場実務に関する知見が適切に反映されるよう配意しなければならない。

 国は、第三者評価の実施に当たり、評価の公平性及び透明性を確保するため、評価主体の選定、評価手続、評価基準、利益相反の管理その他必要な事項を政令で定めなければならない。

 国は、第一項から第三項までの評価の結果及びこれを踏まえて講ずる措置の概要を公表しなければならない。ただし、公表することにより、国家の安全その他公共の利益を害するおそれがある場合又は個人情報の保護若しくは営業上の秘密の保護その他の正当な利益を害するおそれがある場合は、この限りでない。

 都道府県及び市町村は、計画に基づく施策の実施状況及びその効果について、国の評価体系と整合を図りつつ、評価し、及びその結果を踏まえて必要な見直しを行うよう努めなければならない。

 この条に基づく評価及び第三者評価は、施策の実施に必要な予算措置又は個別制度の存廃を、政令その他の命令に委ねて新たに創設することを目的として解してはならない。

(命令への委任及び経過措置)

第百十条 この法律の施行に関し必要な事項は、この法律に特別の定めがあるものを除き、政令で定める。

 この法律の規定に基づき主務大臣が定めるべき基準、様式、手続その他の細目は、農業経営体、地方公共団体、農業協同組合等その他の関係者の実務における解釈及び運用に誤解又は過度の負担が生じないよう、明確かつ簡素なものとしなければならない。

 この法律の施行に伴い、現に存する農業に関する計画、認定、指定その他の行政行為(法令又はこれに基づく命令若しくは告示に基づくものに限る。)であって、この法律に基づく計画、認定、指定その他の制度と趣旨及び機能が同一又は類似するものについては、重複を避ける観点から、附則に定めるところにより、整理し、統合し、又はこの法律に基づくものとみなすものとする。

 この法律の施行に伴い改廃される法令に基づき生じた権利義務、処分、手続その他の法律関係の承継及びその経過措置は、附則に定めるところによる。

 この法律の施行に当たり必要な経過措置は、附則で定める。

第十編 農業財政及び特別会計(第111条〜第123条)

(趣旨)

第百十一条 この編は、財政会計法その他の財政に関する一般法令の定めるところを前提として、農業分野における財政運営及び特別会計の基本枠を明らかにし、もってこの法律の目的の実現に資することを目的とする。

(農業財政運営の基本方針)

第百十二条 国は、この法律に基づく施策を安定的かつ継続的に実施するため、農業分野の財政運営について、次に掲げる事項を基本として行わなければならない。

一 農業基本計画その他この法律に基づく計画との整合を確保すること。

二 農業経営の安定、農業構造の転換及び農村社会の持続に資するよう、経常的経費と投資的経費の区分を踏まえ、資源配分の透明性を確保すること。

三 将来世代への負担に配意し、債務その他将来負担の管理を適切に行うこと。

四 事業の目的、手段及び成果が把握できるよう、予算の執行及び決算の体系を整理すること。

 国は、前項の基本に基づき、必要に応じ、農業分野の中期的な財政運営の枠組を定め、これを公表しなければならない。

(他の財政関係法令との関係)

第百十三条 この編の規定は、財政会計法、特別会計に関する法令その他の財政に関する一般法令の適用を妨げるものではない。

 この編の規定は、農業分野に関し、前項の一般法令に基づく制度運用をこの法律の目的に即して整理するための特則として適用されるものとする。

(農業特別会計の位置付け)

第百十四条 国は、この法律に基づく施策のうち、農業分野として一体的に経理することが適当なものについて、財政会計法及び特別会計に関する法令の定めるところにより設けられる農業関係の特別会計(以下この編において「農業特別会計」という。)により経理するものとする。

 農業特別会計は、この法律に基づく施策を財政面から支える中核として位置付けられるものとする。

(一般会計との関係)

第百十五条 国は、農業分野の歳出のうち、政策横断的な施策として一般会計により経理することが適当なものと、農業特別会計により経理することが適当なものとの区分について、施策の目的及び執行の実態に即して明らかにしなければならない。

 一般会計から農業特別会計への繰入れ、貸付け、出資その他の財政上の措置は、財政会計法その他の関係法令の定めるところにより行うものとする。

(勘定の区分)

第百十六条 農業特別会計には、次に掲げる勘定を置く。

一 農業経営安定勘定(第四編その他この法律に基づく経営安定に関する施策に要する経費)

二 構造改革・事業整理勘定(第六十四条及び第六十五条に規定する施策その他農業構造の転換及び退出・再編に関する施策に要する経費)

三 インフラ・環境勘定(第七編その他この法律に基づく農業生産基盤、農業水利、環境及び気候変動対応に関する施策に要する経費)

四 農村社会・人材勘定(第八編その他この法律に基づく農村社会及び人材に関する施策に要する経費)

五 研究開発・スマート農業勘定(第五編その他この法律に基づく研究開発、技術普及及びスマート農業に関する施策に要する経費)

 前項に掲げる勘定の新設又は廃止その他勘定区分の変更は、法律で定めるところによる。

(財源)

第百十七条 農業特別会計の財源は、次に掲げるものとする。

一 一般会計からの受入金

二 国債その他の借入金

三 保険料、負担金、拠出金その他の収入

四 貸付金の償還金、利子その他の事業収入

五 出資金、寄附金その他の収入

 国は、前項各号の財源の構成について、勘定の性質に応じた負担の公平及び制度の持続可能性に配意しなければならない。

(歳出の原則)

第百十八条 農業特別会計の歳出は、次に掲げる原則に従って行わなければならない。

一 この法律に基づく計画との整合を確保すること。

二 勘定ごとの目的外使用をしてはならないこと。

三 経常的経費と投資的経費の区分を踏まえ、費用対効果及び将来負担に配意すること。

四 構造改革・事業整理勘定に属する支出は、第六十四条及び第六十五条の趣旨及び要件に適合する範囲で行うこと。

(中期的な財政運営)

第百十九条 国は、農業特別会計について、農業基本計画の計画期間その他この法律に基づく計画の周期に整合する中期的な財政運営の見通しを定めるよう努めなければならない。

 国は、前項の見通しにおいて、次に掲げる事項を明らかにするよう努めなければならない。

一 勘定ごとの収支の見通し

二 債務その他将来負担の状況及び管理方針

三 主要施策の投資的経費と経常的経費の見通し

 国は、中期的な財政運営の見通しと当該年度の予算との関係が把握できるよう、必要な説明を行わなければならない。

(プロジェクト単位の予算管理)

第二百二十条 国は、この法律に基づく主要施策について、目的、実施手段、実施期間及び成果指標を単位として整理したプロジェクト(以下この条において「農業プロジェクト」という。)により、予算の編成、執行、決算及び評価を一体として管理するものとする。

 国は、農業プロジェクトごとに、識別のためのコードを付し、勘定との対応関係が明確となるよう整理しなければならない。

 前二項に定める農業プロジェクトの整理の方法その他必要な事項は、施策の実体を変更することなく、執行の透明性及び比較可能性を高めるために必要な技術的事項に限り、命令で定める。

(指定公共組織等への委託及び補助)

第二百二十一条 国は、この法律に基づく施策の実施のため必要があると認めるときは、公共組織法に基づく指定公共組織、地方公共団体、農業協同組合等その他の関係団体に対し、事務又は事業の委託をし、又は補助その他の財政上の措置を講ずることができる。

 前項の措置は、施策の目的及び要件を明確にし、対象、使途及び成果の把握が可能となるように行わなければならない。

 前項の適正な執行及び不正防止のために必要な手続、条件、返還その他の取扱いは、財政会計法その他の関係法令の定めるところにより行うものとする。

(農業特別会計に係る評価及び見直し)

第二百二十二条 国は、農業特別会計について、勘定別及び農業プロジェクト別に、費用対効果、成果及び将来負担への影響を把握し、評価を行わなければならない。

 国は、前項の評価の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、勘定の構成、財源の構成、農業プロジェクトの整理その他この編に基づく運用を見直し、必要な措置を講じなければならない。

 前二項の評価及び見直しは、第百九条に規定する評価その他この法律に基づく評価の仕組と整合的に行われるものとする。

(決算、情報公開及び国会への報告)

第二百二十三条 国は、農業特別会計について、財政会計法その他の関係法令の定めるところにより決算を作成し、これを公表しなければならない。

 前項の公表は、勘定別及び農業プロジェクト別に、歳入歳出及び主要な支出の内訳が把握できるように行わなければならない。

 国は、農業特別会計の運営状況及び前条の評価の結果について、毎年度、国会に報告しなければならない。

 前三項に定めるもののほか、農業特別会計に係る情報公開及びデータの提供は、第百七条の趣旨に即して行われるものとする。

第十一編 監督、是正措置及び罰則(第124条〜第135条)

(監督の基本原則)

第百二十四条 国及び地方公共団体は、この法律に基づく施策が適正かつ効果的に実施されるよう必要な監督を行うものとし、その実施に当たっては、次に掲げる原則に従わなければならない。

一 目的達成に必要な最小限度の範囲で行うこと。

二 違反の程度及び影響に応じ、相当性を有する手段により行うこと。

三 手続の公正及び透明性を確保し、関係者の予見可能性に配意すること。

四 この法律に基づく計画、認定その他の制度の趣旨に反して、監督を名目として新たな計画又は認定制度を創設し、若しくはこれを強制することを目的としてはならない。

(報告徴収及び立入検査)

第百二十五条 国又は地方公共団体は、この法律に基づく施策の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、次に掲げる者に対し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該者の事務所、事業所、施設その他必要な場所に立ち入り、帳簿書類(電磁的記録を含む。)その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

一 農業従事者、農業経営体その他この法律により義務を課され、又は給付その他の利益を受ける者

二 指定公共組織、農業協同組合等その他この法律に基づく施策の実施に関与する団体

三 国又は地方公共団体から委託を受け、又は補助その他の財政上の措置を受けて事務若しくは事業を行う者

 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。

 第一項の規定による立入検査は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 国及び地方公共団体は、報告徴収及び立入検査の実施に当たり、必要に応じ、対象となる情報の範囲、提出方法及び保存期間の標準を明らかにし、実務上の解釈の相違が生じないよう配慮しなければならない。

(是正措置及び命令)

第百二十六条 国又は地方公共団体は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反する事実があると認めるときは、当該違反の態様及び影響に応じ、次に掲げる措置を段階的に講ずることができる。

一 勧告

二 改善指導

三 命令

 前項第三号の命令は、勧告又は改善指導によっては当該違反の是正が見込まれない場合その他必要がある場合に限り、期限を定めて行うものとする。

 国又は地方公共団体は、第一項の措置を講ずるに当たり、当該措置の理由及び内容を、当該措置を受ける者に対し、明確に示さなければならない。

(補助金等の交付の取消し及び返還命令)

第百二十七条 国又は地方公共団体は、この法律に基づく補助金、交付金その他これらに準ずる給付(以下この条において「補助金等」という。)について、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、交付決定の全部又は一部を取り消し、既に交付した補助金等の全部又は一部の返還を命ずることができる。

一 虚偽の申請その他不正の手段により補助金等の交付を受けたとき。

二 補助金等をその目的以外に使用したとき。

三 交付の条件に違反したとき。

四 事業の実績が著しく不適切であり、又は成果が要件を満たさないことが明らかであるとき。

 前項の規定による取消し及び返還命令並びに加算金その他の取扱いは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法令その他の関係法令の定めるところによる。

(認定、許可等の取消し及び停止)

第百二十八条 国又は地方公共団体は、この法律に基づく認定、許可、登録、指定その他の行政上の地位(以下この条において「認定等」という。)を受けた者が、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該認定等を取り消し、又はその効力を停止することができる。

一 虚偽の申請により認定等を受けたとき。

二 法令又は認定等に付された条件に重大な違反があるとき。

三 改善命令に従わないとき。

四 前各号に掲げるもののほか、認定等を維持することが著しく不適当であると認められるとき。

 前項の取消し又は停止は、違反の程度及び影響に応じ、必要な範囲及び期間に限り行うものとする。

(農業事業整理における監督及び不正防止)

第百二十九条 国は、第六十四条及び第六十五条に規定する農業事業整理に係る施策の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、当該施策の対象となる者又は関係する金融機関、指定公共組織その他の関係者に対し、報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に立入検査をさせることができる。

 国は、農業事業整理に係る施策に関し、不正な資産隠匿、仮装譲渡、偏頗弁済その他公正な整理を害する行為を防止するため、必要な指針を定め、関係者間での情報共有その他必要な措置を講ずるものとする。

 前二項の規定は、破産その他の倒産手続に関する一般法令の適用を妨げるものではない。

(罰則の基本構造)

第百三十条 この法律の罰則は、次条から第百三十五条までに定めるもののほか、故意又は過失、未遂の処罰、両罰規定の適用その他刑罰法規の一般原則に従って適用されるものとする。

 この法律に基づく行政上の措置(取消し、返還命令その他)と罰則との関係は、目的及び性質の相違に照らし整理されるものとし、行政上の措置を講じたことのみをもって、当然に刑事罰を科すものと解してはならない。

(虚偽申請等に対する罰則)

第百三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

一 第百二十五条第一項の規定による報告又は資料の提出について虚偽の報告をし、又は虚偽の資料を提出した者

二 この法律に基づく補助金等、保険金、給付金その他これらに準ずる給付について、虚偽の申請その他不正の手段により交付を受け、又は受けようとした者

三 この法律に基づく認定等を受け、又は維持するため、虚偽の申請をした者

 前項第二号の未遂は、罰する。

(立入検査等の拒否・妨害に対する罰則)

第百三十二条 第百二十五条第一項の規定による立入り、検査又は質問を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

 第百二十五条第一項の規定による質問に対し虚偽の答弁をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

(秘密保持義務及び罰則)

第百三十三条 この法律に基づく施策に関与する国又は地方公共団体の職員、指定公共組織の役員若しくは職員又は委託を受けた者は、正当な理由がある場合を除き、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

 前項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

(両罰規定)

第百三十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百三十一条又は第百三十二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。

(時効、他の罰則との関係及び刑事訴追との調整)

第百三十五条 この法律の罰則の適用に当たっては、他の法令の罰則との関係に配意し、同一の行為が複数の法令に触れる場合における適用関係が実務上明確となるよう整理されなければならない。

 この法律に基づく調査及び行政上の措置と、刑事訴追との関係については、それぞれの目的及び機能に応じ、適切に調整されるものとする。

第十二編 雑則(第136条〜第140条)

(指定公共組織等の指定及び位置付け)

第百三十六条 国は、この法律に基づく施策を計画的かつ安定的に実施するため必要があると認めるときは、公共組織法の定めるところにより、農業分野に係る指定公共組織を指定することができる。

 前項の指定公共組織は、次に掲げる類型に応じ、この法律に定める施策の実施を担うものとする。

一 農地の権利移動及び利用調整、農地の保全その他農地制度に関する施策の実施を担うもの

二 農業経営の安定、金融、保険又は共済その他の農業安定対策に関する施策の実施を担うもの

三 技術の普及、試験研究、人材育成、情報の整備及び提供その他の知的基盤に関する施策の実施を担うもの

四 農業事業整理その他の構造再編に関する施策の実施を担うもの

 前項各号に掲げる類型ごとの指定の基準、指定の手続、指定後の義務その他必要な事項は、この法律及び公共組織法の趣旨に照らし、政令で定める。

 指定公共組織の指定及び運用は、第二編から第十一編までの規定に基づく施策の実施主体を整理するための手段として位置付けられるものであり、これと重複する新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(他の法令の準用及び適用関係)

第百三十七条 この法律に基づく処分、手続及び権利救済については、この法律に特別の定めがある場合を除き、行政手続法、行政不服審査法及び行政事件訴訟法の定めるところによる。

 この法律に基づく補助金等(第百二十七条に規定するものをいう。)、委託その他の財政上の措置の執行については、この法律に定めるもののほか、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律その他の関係法令の定めるところによる。

 この法律に基づき国又は地方公共団体が収集し、又は作成する情報の取扱いについては、この法律に定めるもののほか、情報公開に関する法令、個人情報の保護に関する法令及び統計に関する法令の定めるところによる。

 この法律の規定と他の法令の規定が農業分野に関し競合する場合における適用関係は、当該規定の趣旨及び目的に照らし、農業分野に関する特別法としてのこの法律の性格を踏まえて整理されるものとする。

(標準様式、指針及びマニュアル)

第百三十八条 農林水産大臣は、この法律に基づく申請、届出、報告、認定、協議その他の手続及び事務が、国及び地方公共団体並びに関係機関において統一的かつ円滑に実施されるよう、標準様式、指針及びマニュアル(以下この条において「標準様式等」という。)を定め、これを公表しなければならない。

 標準様式等は、政令又は農林水産省令により定めるべき事項と、これらに基づき運用上必要な範囲で定める事項とを明確に区分し、通知その他の手段により、実質的に国民又は関係者の権利義務を新たに制限し、又は新たな義務を課することとならないよう配意して定めなければならない。

 国及び地方公共団体は、標準様式等を踏まえ、必要な事務処理体制及び情報システムの整備に努めるものとする。

 農林水産大臣は、地方公共団体が条例その他の規範により行う運用の状況、実務上生じた解釈の相違その他の事情を把握し、必要があると認めるときは、標準様式等並びにこの法律に基づく政令及び省令の見直しを行うものとする。

 標準様式等は、計画又は認定の乱立を招かないよう、この法律の規定により必要とされる範囲に限り整備されるものとし、標準様式等の整備を理由として新たな計画又は認定制度を創設し、若しくはこれを実質的に強制することを目的として解してはならない。

(電子的手続及び情報システムの利用)

第百三十九条 この法律に基づく申請、届出、報告、提出、交付その他の手続は、電磁的方法により行うことができるものとし、国及び地方公共団体は、関係者の利便及び事務の効率化の観点から、当該手続の電子化の推進に努めなければならない。

 国は、この法律に基づく施策の実施に必要な情報(農地、農業経営体、施策の実施状況その他の情報を含む。)について、公共組織法に基づく情報基盤との整合及び相互運用性を確保しつつ、標準化及び連携を図るものとする。

 国及び地方公共団体は、前二項の情報の整備及び利用に当たり、個人情報及び営業上又は技術上の秘密の保護、サイバーセキュリティの確保並びに災害時その他の非常時における継続利用に配意し、必要な措置を講じなければならない。

 電子的手続の利用が困難な者に対しては、手続の公正及び利用機会の確保の観点から、紙その他の代替手段を確保するよう配意しなければならない。

(国際協力及び国際的連携)

第百四十条 国は、食料安全保障の確保、農業の持続可能な発展及び環境との調和に資するため、国際機関、外国政府その他の関係主体と連携し、農業に関する国際協力を推進するものとする。

 国は、農業分野における技術協力、人材交流、試験研究の連携及び制度整備の支援を行うに当たり、我が国の制度及び施策の知見を活用するとともに、国際的な約束及び国際標準との整合に配意するものとする。

 国は、農産物及び食品の国際取引に関し、相手国の制度及び国際的な枠組みを踏まえつつ、国内制度の運用が実務上誤解されないよう、用語、定義及び統計の整合性の確保に努めなければならない。

附則

(施行期日)

附則第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 前項の規定にかかわらず、次に掲げる規定は、公布の日から施行する。

一 第百三十八条(標準様式等)

二 第百三十九条(電子的手続)

三 第百四十条(国際協力)

 第一項の規定にかかわらず、第十編(農業財政及び特別会計)及び第十一編(監督、是正措置及び罰則)に係る規定の施行期日は、予算編成及び会計年度運用との整合に配意し、政令で定める。

(段階施行及び移行期間の取扱い)

附則第二条 政府は、この法律の施行に当たり、国及び地方公共団体の事務体制、情報システム、契約実務及び関係機関の運用の実情に配意し、必要な範囲で段階的に施行するものとする。

 段階施行の区分、移行期間及び移行期間中の取扱いは、次に掲げる事項を明示して政令で定める。

一 施行される編及び条項の範囲

二 計画・認定・指定・登録その他の行政行為の読み替え及びみなしの範囲

三 監督・是正及び罰則の適用開始時期

四 国及び地方公共団体の事務・権限配分の暫定的取扱い

(経過措置 計画及び認定制度)

附則第三条 この法律の施行の際現に、農業分野に関し法律又はこれに基づく命令の規定により策定され、又は認定されている計画(基本計画、都道府県計画、市町村計画その他これらに類するものを含む。)は、この法律の相当規定により策定され、又は認定されたものとみなす。

 前項の「相当規定」の対応関係は、別表第一に定める。

 前二項の規定によりみなされた計画又は認定は、その有効期間、改定時期及び評価・見直しの周期について、みなされた日から直ちにこの法律の規定に整合させる。ただし、施行直後の事務混乱を回避するため必要があるときは、政令で定める期間に限り、従前の例によることができる。

 前項ただし書の運用は、計画又は認定の乱立を招かないことを旨として行い、移行期間を理由として新たな独自計画又は独自認定を創設することを目的として解してはならない。

(経過措置 補助金等及び農業特別会計)

附則第四条 この法律の施行の際現に、国又は地方公共団体が農業分野に関し交付している補助金、交付金、給付金その他これらに類する財政上の措置(以下この条において「補助金等」という。)は、第十編の規定に基づく勘定区分及びプロジェクト単位の管理に順次移行する。

 前項の移行に当たり、当該補助金等の交付決定、契約、債務負担行為、繰越明許費その他会計年度をまたぐ財政運用は、財政会計法その他の関係法令の枠内で、同一事業の連続性が失われないよう整理しなければならない。

 この法律の施行前に行われた補助金等の交付に係る不正受給、目的外使用その他の違反行為に対する返還、加算金、違約金、交付決定の取消しその他の措置は、施行後においても、原則として従前の例による。ただし、手続保障及び監督の基本原則については、第十一編の趣旨に照らし整合を図る。

 農業特別会計の設置、統合及び勘定再編に伴う資産及び負債の帰属、引当、国庫納付、繰入れその他必要な経過措置は、別表第二に定める。

(経過措置 指定公共組織等)

附則第五条 この法律の施行の際現に、農業分野に関し法律又はこれに基づく命令により、実施主体、指定主体、登録主体その他の地位を有する法人又は団体は、第百三十六条の規定により指定された指定公共組織又はこれに準ずる実施主体として、政令で定める期間、従前の例によりその業務を継続することができる。

 前項の期間及び対象となる法人又は団体の範囲は、業務の公共性、財政関与の程度、監督の必要性及び地域実務への影響を明示して政令で定める。

 前二項の規定は、業務の実態に即し、指定公共組織への移行又は統合によって制度名の乱立が解消されることを目的として運用されなければならない。

(農地中間管理機構に関する経過措置)

附則第六条 この法律の施行の際現に、農地中間管理事業の推進に関する法律第二条に規定する農地中間管理機構として指定を受けている法人(以下この条において「既存農地中間管理機構」という。)は、この法律第二十七条第八項の規定により農地管理機関指定公共組織とみなされる。

 既存農地中間管理機構が有する権利及び義務その他一切の財産関係は、第二十七条に規定する農地管理機関の枠組の下で、当該既存農地中間管理機構に承継されるものとし、契約、許認可、訴訟及び行政不服申立てに関する地位は、当該承継の範囲で継続する。

 国及び都道府県は、既存農地中間管理機構の業務が、農林水産省、都道府県及び市町村に設置される農地管理事業部と一体として運用されるよう、情報連携、事務分掌及びガバナンスの移行計画を定め、必要な措置を講じなければならない。

 前項の移行計画は、第二十七条第七項の趣旨に照らし、移行の名の下に新たな計画又は認定制度を創設することを目的として解してはならない。

(関係法律の改廃)

附則第七条 政府は、この法律の施行に伴い、農業分野に関する関係法律について、所要の改正又は廃止の措置を講ずる。

 前項の対象となる法律並びに改正又は廃止の区分は、別表第三に定める。

 前二項により改正又は廃止される法律に基づき施行日前にされた処分その他の行為の効力及びその後の取扱いは、別表第三に定める区分に応じ、必要な範囲で読み替える。

(検討及び見直し)

附則第八条 政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずるものとする。

 前項の検討に当たっては、地方公共団体における条例の制定及び運用状況、現場実務における解釈の相違、災害対応の迅速性、財政運営の透明性並びに国際的な整合性に特に配意しなければならない。

 第一項の検討は、個別論点ごとの検討条項を乱立させることなく、農業法全体としての総点検として行うものとする。