立法・行政・司法を貫く公共組織の制度OS。八編・第272条までの枝条を含む条文で、公共団体—公共機関—公共組織の三層構造により組織法制を一体的に整備し、AI時代の意思決定と説明責任の仕組みを規定する。国家行政組織法・地方自治法・裁判所法・財政法などを一括統合する構想。
条文全文を読む300か条 → 逐条解説を読む225項目 →制度の柱
- 公共組織の三層区分(国家・地方・指定)と別表掲載
- AI意思決定影響評価と意思決定記録の真正性(時刻認証・改ざん検知)
- 構造化法令データ・公開API・規制実証(サンドボックス)
- 科学的採決 — 順位投票・スミス集合・Ranked Pairs・承認投票
- 建設的不信任・気候/自然資本影響表など議会制度の刷新
- データ信託・指定公共組織と現行組織法制の一括統合
構成(目次)
- 第一編 総則三層区分・内部組織・監督・罰則(全8章)
- 第二編 国民及び住民請願・情報アクセス・直接請求・住民監査(全3章)
- 第三編 立法機関国会・地方議会/科学的採決・建設的不信任(全2章)
- 第四編 行政機関内閣・国家/地方行政・行政委員会・審議会(全5章)
- 第五編 司法機関裁判所組織・手続保障・司法補助・違憲審査(全7章)
- 第六編 法人指定公共機関から民間事業者まで九類型(全9章)
- 第七編 財政財政民主主義・公債・料金・補助金・三層監査(全5章)
- 第八編 附則施行・経過措置・読替・廃止改正・検討条項(五節構成)
八編二七二か条の統合組織法典という構想
本法案(私案)は、国・地方公共団体を包括する公共組織の設置・編制・運営の基本原則を一体的に整備しようとする構想である。全体は八編(総則/国民及び住民/立法機関/行政機関/司法機関/法人/財政/附則)・第二百七十二条までの枝条を含む条文で構成され、公共団体(国・地方)—公共機関(立法・司法・行政・指定)—公共組織(基本単位)という三層構造で組織法制を整理する。公共組織は国家・地方・指定の三つに区分し、名称・定員・所掌事務は別表に掲げる設計とする。
特徴的なのは、現行法との関係を正面から設計している点である。附則では国家行政組織法・地方自治法・裁判所法・検察庁法・独立行政法人通則法・特殊法人設置法群・財政法・地方財政法・特別会計法を一括して廃止し、既存の組織・法人・財政手続は「みなし存続」で滑らかに移行させる構成をとる。巻末の別表「公共組織法と現行法の対応一覧」では、内閣府設置法以下の各省設置法を本法へ一元化する対応方針を示す一方、条文上は国家行政機関の設置・所掌を個別の設置法に委ねる規定も置いており、統合の方針と現実の接続が併記されている。施行は公布から二年以内、施行後五年での全体見直しまで条文化した、更新を前提とする法典である。
AI・デジタル時代の意思決定統制
本法案の柱の一つが、自動化された意思決定への統制である。高い影響を及ぼす自動化意思決定(AI)を導入・更新する場合には、目的・用いるデータ・偏りの管理・説明可能性・苦情救済及び停止手続を含む影響評価書の作成・公表を義務付け、導入前後の定期評価まで求める。あわせて意思決定記録には時刻認証と改ざん検知措置を施し、検証方法を公表するものとし、行政判断の「その場かぎりの不可逆記録」を制度化する。
情報の側では、公共機関の情報公開・保存に国際的に承認された技術標準(ISO/IEC)適合の形式を求め、保有データは機械判読形式と公開APIで提供することを原則とする。さらに法律の公布時には条・項・号や参照関係を付した構造化データ版を同時に作成し無償公表する「構造化法令」の仕組みを置き、政令にも同様の扱いを及ぼす。加えて、期間・区域・対象を限定した規制実証(サンドボックス)を法令の目的を損なわない範囲で認め、結果の評価・公表を条件とする。透明性と再利用性を法体系そのものに組み込む設計といえる。
科学的採決と建設的不信任 — 議会制度の刷新案
立法機関の編では、国会審議の採決手続に社会的選択理論を持ち込む規定群が置かれている。委員会は複数案について順位投票を実施して一対比較行列を作成し、スミス集合の抽出とRanked Pairsによる序列確定で「委員会第一候補」を決める。本会議前には全議員の承認投票を行い、全体承認率(OAR)五十五%以上・交差承認下限(CBA)四十%以上という基準への適合を審査したうえで、本会議は二者多数決・逐次二者択一・優先順位付投票(IRV)のいずれかで択一採決を行う。行列や集計は機械判読可能な形式で公開し、施行後三年は試行期間として運用評価を行うものとされる。
また、内閣不信任については、決議の可否の決定に先立ち後任の内閣総理大臣候補を当該議院の議員の中から指名することを原則とする「建設的不信任」を規定し、倒閣と後継の空白を防ぐ。このほか、予算・予算関連法案への温室効果ガス排出及び生態系への影響評価表(気候・自然資本影響表)の添付、審議時間配分指標の策定・公表、住民公聴会や議案の電子公開など、審議過程の透明化装置が幅広く盛り込まれている。
データ信託・指定公共組織と将来世代への配慮
公共団体の連携については、区域の連続性によらず法令又は協定により連合体を組織できることとし、その基盤として「データ信託」を新設する。公共団体は協定によりデータ信託の仕組みを設け、データの目的外利用禁止・監査・撤回権及び越境移転時の保護措置を確保するものとされ、個人・法人・地域のデータを適正な条件下で管理・利活用する法的な受け皿を用意する構想である。
官民連携の器としては「指定公共組織」を置く。国・地方公共団体・民間法人・外国の公共機関・国際機関等が対等な協働関係で、特定の事務・事業を期間及び範囲を限定して実施するための組織であり、二以上の主体による構成を必須とし、公権力の行使は法令に明示された範囲に限る。指定には目的・権限・財政負担・責任分担等を定めた協定書と認可を要し、毎年度の評価・公表、期間満了による失効まで規定する。
さらに総則には「将来世代への配慮」を明文で置き、政策・法令案の立案・執行に際して長期費用・自然資本・世代間衡平への影響を評価・公表することを義務付ける。財政の編でも「将来世代に過度の負担を残してはならない」とする財政の健全性規定を置いており、時間軸を組み込んだ組織法という性格が一貫している。